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さて、1年も居れば私を取り巻く環境がなんとなくわかってきた。


きっかけはあまりにも広い部屋に慣れなくて、邸の人が居なくて狭いところを探していたときた。


そういうところは使用人たちが使う区画で、自然と噂話なんかも耳にする。



一番驚いたのが異母兄様がいたこと。

先日初めて会ったけど、とてもお父様に似ていた。


普段は王城に文官として勤めていて、宿舎で暮らしており、中々に激務のため挨拶が遅れたのだとか。


異母兄様のお母様とお父様は政略結婚。

前ヘンシャル伯爵夫妻はお金を使うことしか能のない人物で、ヘンシャル領はそこそこ豊かなのだが、重税のため領地は活気がなく、領民は常に飢えている状態。


領地の収入と前ヘンシャル伯爵夫妻が使うお金の量が釣り合っておらず、ヘンシャル伯爵家は財政難になっていく。


なのに、前ヘンシャル伯爵夫妻は贅沢をやめない。


そんなときに、異母兄様のお母様とお父様の縁談が持ち上がったのだ。


彼女は莫大な資産を誇る侯爵令嬢。

破格の持参金を提示され、前ヘンシャル伯爵夫妻は飛び付いた。


お父様は17歳、あと3ヶ月で王立学園の一般部を卒業するというときだった。

彼女は27歳の行き遅れ。


侯爵令嬢ということもあって表立って噂されることはなかったものの、少し調べれば彼女の悪評はすぐにわかった。

贅沢が大好きで、下の者を見下す。

そんな性格の彼女を妻にだなんて、とてもではないが無理だと訴えるも聞き入れて貰えず。


侯爵は彼女を可愛がってるわけではなく、お金を与えて放置しており、今回の縁談も侯爵家の恥にならぬようにさっさと厄介払いしたいだけ。


そのため、破格の持参金だけでなく、一般部を卒業後、文官部に進学するお父様が学生の間はヘンシャル伯爵家を援助するという。

ただし、一般部卒業後すぐに結婚すること、卒業後は侯爵家とは一切関わりを持たないことが条件であった。


前ヘンシャル伯爵は少し考えたものの、提示された持参金は数年遊んで暮らせる金額であり、しかも学生の間は更に援助してもらえるということで、嬉々として承諾した。


お父様がどんなに抵抗しようとも抗える力はなく、学生の身でありながら結婚という、あまり無いことが自分の意識とは関係なしに進んで行く。


初めての顔合わせは結婚式であり、伯爵嫡男と侯爵令嬢の結婚式とは思えないほど、ひっそりと執り行われた。

参加者は当人たちとその両親。


通常ならば生涯の輪という魔道具のアクセサリーを交換するのだが、準備期間が短かったこともあり用意されず、普通のアクセサリーを交換し、殆ど目を合わせることもなく結婚式を終える。


学園に通っているため普段は寮暮らしをしているが、年に2回の長期休暇は邸宅に帰らねばならなず、次期伯爵としての義務、世継ぎを作らねばならない。


結婚当初はお父様も歩み寄ろうとしたらしい。

しかし、彼女はあからさまにお父様を見下していた。

使用人たちへのあたりも強く、気に入らなければすぐにクビ。


仲良くなれるわけもなく、最低限の関わりの中で誕生したのが長男。


長男が産まれたから義務は果たしたと彼女はお父様と関わることを嫌がり、また、お父様も彼女に関わりたくなどなく、同じ邸に居ても顔を合わせることは殆どなくなった。


絶対参加しなければならない夜会にはパートナーとして出席するが、会場に着けばすぐに別行動をとる。


そんな夫婦関係の中、お父様はトップクラスの成績で学園を卒業。

王城勤務となり、1年程経過したころに、どういう手を使ったのか当主の座を譲り受けた。


表向きには前ヘンシャル伯爵が隠居したいと当主の座を譲り、領地にある別荘で暮らすことにしたとなっているが、色々と噂があり、一番有力なのがとても表には出せない弱味を握って脅したというものだ。


そして、ヘンシャル伯爵家の財政建て直しに取り組んだ。


既に侯爵家からの援助はなくなり、今後一切関わりを持たないと宣言されている。


一番始めに取り組んだことは、豪遊する両親と彼女へお金を渡さないこと。


両親は領地の自然豊かな別荘に移り住んでもらった。

自然豊かな別荘と言えば聞こえはいいが、自然しかないど田舎ということで、周りには何もなく、お金を使えるようなことがない。

使用人は最低限で、贅沢をしなければ十分に暮らしていける程の支援はしているが、それだけ。

要は幽閉。


彼女も一緒に行ってもらう予定だったが、「社交界ではパートナーが必要よ」「こどもの為にも私が近くにいたほうがいい」と拒否し、彼女の言葉にも一理あるため、そのまま王都の邸で置いておくことにした。


しかし、これが間違いとなる。



今まで湯水のようにお金を使っていた3人をおさえることで、かなり余裕がうまれた。

しかし、疲弊した領民たちはすぐには回復しないし、領地も荒れている。


お父様は身を粉にして働いていたおり、邸にはたまにしか帰ってこない。

そんな中で邸に新しいメイドとして入ってきたお母様と出会う。


お父様はお母様に第二夫人になって欲しいとアプローチ。

はじめは断っていたお母様も絆され、承諾。

そして、舞い上がったお父様が手を出してしまったのだ。


それに気付いた彼女はお父様がいない間にお母様を追い出した。

お父様がお母様を探すも中々見つからない。


時間だけが過ぎていく中、とある事件が起こる。

彼女が息子を害そうとしたのだ。


事の顛末はこうだ。

彼女は愛人がいた。

しかも複数人。

そして、その愛人の子を身籠った。


まぁ、それまでなら貴族の中ではないこともない。

そういった場合は、その子は貴族の子としては扱わない。

貴族は5歳の誕生日にお披露目のパーティーを開き、初めてその親の子であると認められる。


なので、そういった子はお披露目パーティーはせず、ひっそりと暮らすのだ。


しかし、彼女はその身籠った子を次期当主にしたいと考えていた。

元々、長男は父親に似ており、嫌っていた。

自分より下の立場である男の子ども。

しかも、今まで贅沢に暮らしていたのに、それを許さないときたものだ。

怒りは息子に向かい、無関心だったものが、食事を抜いたり、叩いたりという虐待にまで発展。


ついには病死させようとしたのだ。


発覚が遅れたのは、お父様が忙しいのだけが理由ではなく、邸の使用人たちにもあった。


古くから仕えてくれて使用人たちは前ヘンシャル伯爵夫妻の自分勝手な行いを諌め、それ故にクビになり、使用人の質が下がった。

更には彼女が嫁いできてからというもの、その苛烈な性格のせいで使用人の入れ替わりが激しく、まとまな使用人がいなくなる。


残っているのは彼女に媚をうるものか、訳あって退職できないような弱い立場の者。

邸の中で彼女は絶対の存在で逆らえる者がいなかったのだ。


お父様は王城の仕事と当主としての仕事に忙しく手が回らなかった。

少し落ち着き、新たな使用人を雇おうとするも、中々見つからない。

誰もまともな扱いを受けないとわかっていて働くわけがない。


そのため、漸くまともな使用人を雇えた頃に彼女の浮気と、息子への虐待、使用人への残忍な行いが発覚したのだ。


激怒したお父様は彼女と離縁。

家を追い出した。

実家に帰った後はその姿を見た者はいない。



ずっとお母様を探し続けていたが見付からず、諦めかけていた頃に教会で「伯爵家程度の魔力が後天的に目覚めた子がいる」という話を聞き、興味を持って詳しく確認したところ、国民カードの情報から母親がお母様であると気付いた。

そして、すぐに迎え入れたというわけだ。


お母様は第二夫人になり、現在ヘンシャル伯爵には正妻がいない。

これは、お母様が王立学園を卒業していないため、社交界では貴族と認められず、パートナーとして出席できないためだ。


未だに、「自分の娘を正妻に」という話が出るそうだが、お母様を愛しており全て却下しているそうだ。


ちなみに息子との関係は良くも悪くもない。




お、おもい。

乙女ゲームでは伯爵家の庶子としか説明がなかったから、異母兄様がいるなんて知らなかったし、こんな複雑な家庭環境とは思いもしなかった。 



まぁ、これを知ったからと言って、特に何もないんだけど。

もう過去の出来事だし、お父様はお母様にメロメロで、娘の前だというのに甘い雰囲気を隠しもしないしね!



もうすぐでゲームスタートになる!

気合いいれなくちゃね!

私の王子様、待っててね!

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