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コンコンコン


...


コンコンコン


ん?...


コンコンコン


はっ!

寝ちゃってた。


『はぁい』


寝ぼけ眼で返事をすると、昨日のメイドさんが「失礼します」って入ってきた。


「おはようございます。

リリアンお嬢様。

朝のお支度をさせていただきます。」


『えっ!朝!?

ご、ごめんなさい。』


まさか昨日の夕方から爆睡するとは思わなかった。


焦るリリアンを見て、メイドはニコリと笑う。


「いえ。

昨日はお疲れだったのでしょう。


申し訳ありませんが、旦那様との朝食がございますので、入浴は控えていただきます。」


感じ良さそうな人だ。

よかった~


『はい。

すみません。』


「失礼します。」


メイドはブツブツと聞き取れない程の小声で何かを唱える。

するとリリアンの体に何かがフワッと通り過ぎていった。


何が起きたのか不思議顔のリリアンにメイドが説明してくれる。


「クリーン魔法です。

入浴できなければ気持ち悪いかと思いまして掛けさせていただきました。」


ま、魔法だ!!

すごい!すごい!

マジもんの魔法だよ!


やっぱ、日本人としては憧れるよね~


興奮して頬を染めたまま『ありがとうっ』と言うリリアンにメイドはまたもニコリと笑って応えてくれる。


更に今までは到底着れなかったフリルとレースのたっぷりついた可愛いドレスを着せられ、テンションが上がる。


『とっても可愛いわ。

お姫様になった気分!』


リリアンはその場でクルリと回る。

それを見ていたメイドからクスッと笑い声が漏れた。

恥ずかしくて顔が熱くなる。

少し落ち着きを取り戻せた。


『あっ、ごめんなさい。

あなたのお名前を聞いてなかった。

私のことは知ってると思うけど、リリアンよ。』


「私はアンナと申します。

リリアン様の侍女を務めさせていただきます。

よろしくお願いします。」


『アンナさんね。

よろしくお願いします。』


「我々使用人にさん付けは不要です。

アンナとお呼び下さい。」


『わかったわ。

アンナ』


「では、食堂にご案内致します。」


アンナは始終ニコニコと笑っていて、仲良くなれそうだと安心する。


食堂に案内されてすぐ、ヘンシャル伯爵がお母さんと一緒に入ってきた。


『おはようございます。

伯爵様、お母さん。』


「おはよう、リリアン。」


「おはよう。

伯爵様だなんて他人行儀な呼び方しないでおくれ。

私のことはお父様と、そして、お母さんではなくてお母様と呼びなさい。」


『はい、お父様。』


リリアンが素直に返事をするとお父様はニコリと笑ってくれた。


「昨日は疲れていただろ?

もう大丈夫かい?」


『はい!

すっかり元気です。』


「それはよかった。

一先ず食事にしよう。」


お父様の言葉で給仕が朝食を運んでくれる。


わぁお!

今までの貧乏暮らしでは考えられない豪華な食事だ。

カリカリに焼いた分厚いベーコン!

こんな分厚いベーコンは初めて食べる。

ポタージュスープからもいい匂いが漂い、パンも焼きたてなのかツヤツヤ輝いて見える。

昨日の夜ご飯を食べていないこともあって、お腹がグゥと鳴る。


お父様が「では食べようか」と祈りを捧げ、リリアンも慌てて祈りを捧げる。


そして、いざ食べようとして、困った。


さっきは可愛いドレスにはしゃいでしまったが、ドレスは動きにくいし、こんな高価なもの汚したらどうしよう。

絶対弁償できない。


そんな考えが浮かび、美味しいご飯を味わうどころではなくなった。

汚さないように慎重に食べる。


汚すのが怖くていつもの半分も食べられなかった。

美味しそうなのにもったいない。


「あまりお気に召さなかったかい?」


優しく問いかけてくるお父様に

『いえ、可愛いドレスが汚れないように必死なんです。』と返す。


「今は汚すのを気にせずお食べ。

マナーを教えるから、そのうち自然と溢さずに食べれるようになるさ。

お茶会や夜会のドレスはもっと大変だから早く慣れないとね。」


えぇ...

これ以上大変なの?

でも、もっと可愛いドレスが着れるのは楽しみ!


あれ?

そういえばお母さんはドレスに緊張している様子はない。


『おかあさ...ま、は普通ね。

緊張しない?』


危ない危ない。

お母さんって言いそうになっちゃった。


お母さんは困った顔をするだけで、かわりにお父様がこたえる。


「元々男爵の娘だからね。

着なれているさ。」


『え!?

お母さん貴族なの!?』


「私は貴族の血は流れているけれど、貴族ではないわ。」


『男爵の娘なのに貴族じゃないの?』


クエスチョンマークいっぱいの私に、お母さんが眉尻を下げながら教えてくれた。


お母さんは男爵令嬢だったが、王立学園には通っていない。

貴族の世界では王立学園を卒業していなければ貴族として認められないのですって。

元平民の私から見れば全て貴族で、偉い人って思ってたけど、貴族社会ではキチンと順序があるんだって。

不思議。


そして、お母さんはお父様の邸でメイドをしてて、恋仲になって、色々あって市井で暮らすようになった。


あ、そうそう。

メイドと侍女は違うんだって。

侍女は貴族で、貴族の身の回りの世話をする人。

メイドは主に貴族ではない人が邸の掃除をしたり、部屋を整えたりするんだって。

ちなみに更に下の下女というのがあって、こちらは平民。

水回りの仕事などをしたりするらしい。


全部メイドさんだと思ってた!

ということは、アンナは貴族!?

元平民の私が呼び捨てでいいのかしら?


うーん

でも呼び捨てって言われたし、私は貴族のことなんてよくわからないから、アンナに言われた通りにしておこう!



「そんなわけだから、リリアンには学園を卒業してもらいたい。

学園を卒業してるのとしていないのでは、貴族の中で扱いが全然違うんだ。

家庭教師をつけるからよく勉強するんだよ。

3年生から編入だ。

2年通って卒業になる。

いいね?」


お父様の言葉にやる気が漲る。

学園に通わねば攻略対象たちとは出会えないのだ!

絶対に通う。


『わかりました!

よろしくお願いします。

お父様。』




朝食後、部屋に戻ったリリアンは『一人になりたい』と言って、アンナを退室させた。



『ウォーターボール!!』


『あれ?

ウィンドカッター!!』


『あれれ?

じゃあ、初歩中の初歩、ライト!』


異世界転生でヒロインといえばチートでしょ!?

全く何も起こらないんですけど!


えっ、私魔法使えないの!?

そんなぁ~...

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