序章③
ここは・・・どこだ・・・
暗い!暗い!暗い!くらいくらいくらいくらいクライ・・・
ねえ!誰かいないの?!ねえ!!
ねえ!!!
僕を、僕を1人にしないで!!!
ああああああああああああああああ!
絶望の中、少年は崩れ落ちた。
ピピピピピピピピピピピ―。
不愉快な音が俺の聴覚を刺激する。
まどろみの中よりゆっくりと感覚が戻る。
「朝か―」
俺は呟いた。
それにしても今日はよく夢を見る。
現実と夢の区別が付きにくい。
始めはドラゴンと戦う夢。なんというファンタジー。
次にパソコンで検索する夢。これは若干リアリティがあったな。まあ、いつもの俺だ。
そして最後の…。1人にしないで。とか。
まれに俺の夢に出てくるアイツ、何の意味があるんだろう。
それにしても、今日の目覚めは良いな。
吐き気も、頭痛もしない。
さあ、起きるか。
ゆっくりと目をあける。
「?!!!!」
ここは―どこだ―。
俺の家ではないぞ…。
あたりを見渡す。
俺はベッドの上にいた。
横では、暖炉がバチバチと音を立てていた。
あたりはうす暗く、電気が通っていない。
…。ろうそく?!
壁も煉瓦でできており、到底現世とは思えない建屋。
俺は夢でも見ているのか?
でも意識はしっかりある。
立ち上がろうとする。
「――ッ!!」
寝ているときは気がつかなかったが、腰のあたりから激痛が脳天を走り抜ける。
怪我?でもいつだ??
俺は、俺は―。
さっきまで自分の部屋にいたはずだよな?
夢を見ているのか…。再度夢である説の検証を行う。
いや、この感覚は現実だろう。
…。と思う。確信ではないが、夢でないことはいずれわかるだろう。
次に濃厚な線だが、よく見たことのない景色…。
これは、小説とかでよくある転生ってやつか?
赤ちゃん、モンスター、美少女…とか。
是非とも美少女には転生してみたいものだが…。
ふと自分の身体のあちこちを見渡す。
この掌に刻まれている曲線、そして蚊にさされた手の甲の傷跡、俺の手だ。
足を見る。このすね毛、俺の脚だ。
顎をさする。この不精ひげ、間違えない、俺の顔だ!…と思う。
少しだけ美少女に転生する夢を見てみたかったが残念だ。
俺は俺のまま、肉体が入れ替わっていることはなさそうだ。
…まあ、鏡を見るまではなんとも言えないけどな。
少なくとも、胸が平らなのと、股間に棒が付いている時点で
女ではないことは口惜しながら十中八九間違えない。
最後の憶測だが…異世界に迷い込んだもしくは過去にタイムスリップした…?
これまた非現実的な予想だが、さて…。
まあ、どんな結論が出たとしても、今までの家畜人生から離れられるのだったら
いいこと、だと思う。
正直言って人生辞めたいと何度も心の中で繰り返し叫んでいたじゃないか。
こういうことはむしろ望んでいただろ?