序章①
―仕事が嫌いだった。逃げたかった。ただそれだけだ―
―どっくん。
Emergency!
目を開くと目の前にはドラゴンがいた。
「!!」
―ここは…どこだ?!
いずれにしても全神経が危険を感知している。
不快感。
背を這う嫌な汗。
そして異常なまでの鳥肌を感じる。
なぜ目の前に紅色の怪物がいるかはわからないが、逃げなくては。
で、どこへ?
思考が停止する。
心臓の音がうるさい。
金色のツバサをはばたかせ、紅竜は俺に襲いかかる。
目の前が暗い。ざらつく。
息切れする。
現状が理解できず、混乱している。
―守る、身を守らなくては!
手を目の前にかざすと緑色のシールドが出てきた。
―??!!!
「な、なんじゃこりゃー???!!!!」
思わず声を出した。
目の前に炎。
ドラゴンの口から放たれた紅の火球。
俺に当たらず消滅した。
ジュッという不快な音。
焦げたようなにおいが広がる。
よくわからないが炎は回避できたのか。
風を切る音。
シールドにドラゴンがぶつかる。
当然真正面に現れ、少し後ろへ移動。
どうやら侵入できないようだ。
「はぁ、はぁ」
いまいち状況がつかめない。
きっとこれは夢だ、夢に違いない。
確か俺はさっき晩御飯を食べてから寝たはずだ。
そうだ、これは夢だ夢だ夢だ…。
ということで、日ごろのストレス解消も兼ねてこのドラゴンをせん滅!!
俺は掌に光を集め、矢を放つかのような動作を行い魔力をぶつけた。
―よし!!
そこで記憶を失った。