表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/114

私の部屋に

 ヒロセが私の部屋にいる。

 …まあサキちゃんもいるけど。

 それでもヒロセが私の部屋にいる。こんな日が来るとは…これが最後かもしれないけど。

 よく来てくれたよね…チハルがあんなに感じ悪かったのに。よく来てくれたよね…チハルにチュウされたこの部屋に…


 ダメだ!お茶を取りに行こう、


と思ったらドアをノックする音だ。

 もう~~、お母さんちっともわかってくれてないじゃん。きっとヒロセの事をもっと見たいんだな…

 が、ドアを開けたらそこにいたのはお茶とお菓子を乗せたお盆を持ったチハルだった。

  

 「失礼します」と言うチハルからお盆を受け取ろうとするが渡さない。

「ありがとう」とキツめの声で言う。「私が取りに言ったのに」

「弟クンも入ったらいいじゃん」とまた余計な誘いを入れるサキちゃんだ。「私、下でみんなでお茶飲みたかったな」

「オレもですよ」とチハルが口を合わせる。「オレだけ仲間はずれみたいなんすけどサキさん」

「だよね~~」とサキちゃん。「いいから中入りなよ。ロールケーキ一緒に食べよ?」

「サキちゃん…」と止めるが、チハルが中を覗いてヒロセに言った。「オレも一緒にいてもいいですか?ヒロセさん」

  

 「いやだよ」と即答するヒロセ。

ハハハ、とチハルは笑ったが私は全然面白くない。

「チハル、」と私がちゃんと言う事にする。「仮にあんたの友達が来てて、私が一緒にお茶飲んだら嫌でしょ?」

「いや全然。むしろ一緒がいいけどオレ」

「嘘付くな」

「嘘じゃねえよ」

「ウソだよ!モールで会った友達が家に来たいって言った時にも、私がジュース出してあげるって言ったら、いいって言ったじゃん!」

「言ってねえ」

「言った!…もう~~いいから下に降りてなさいよ」

「わかった。隣のオレの部屋で一人でお茶飲むわ」


 そこでサキちゃんが口を挟んだ。「いいね~~。仲良しキョーダイ」

「どこが!?」と私。

サキちゃんが笑って言う。「口げんかっていうかむしろイチャついてるようにも聞こえるけど」

「サキちゃん耳がおかしいんじゃないの!?」

ハハハ、と笑うサキちゃんの後ろからヒロセが言った。機嫌の良くなさそうな声で。

「いいじゃんキモト。弟も入れてやれば。姉ちゃんから離れたくねえんだろ?」

悪びれずにチハルが答える。「そうなんですよヒロセさんすみません」

「いやもうマジで止めてって!下行って!」

「「いいじゃん!!」」ヒロセとサキちゃんが口を合わせて言ったので二人を見つめてしまう。

 なんで?なんでヒロセまで?



 「はいじゃあ失礼します」

ちっとも失礼には思ってなさそうにチハルが言いながら部屋に入って来る。

 もう嫌だ…私だけ下に行きたい。せっかくヒロセが私の部屋にいるのに…。

 私の部屋には小さいテーブルもないので、サキちゃんがベッドに腰掛け足をぷらぷらし、ヒロセは床のカーペットの上に座っている。私はまだ所在なげに立ったままだ。自分の部屋なのに。

 チハルが床にお盆を置き、ヒロセから距離をおいて自分もカーペットの上に座る。私はサキちゃんの隣にしようかどうか迷って自分の机の所の椅子に腰かけた。

 

 「弟クンの部屋も見たいな」サキちゃんがしょっぱなからそんな事を言う。

「オレの部屋ですか?隣ですけど」

今は一緒に住んでないくせに何堂々と言ってんだ。

「じゃあ後で見てもいい?」とサキちゃん。

「いいですよ」

「声聞こえたりすんの?壁越しに話したりとかは?」

「しない!」と私が答える。

するわけない。チハルはここ3年間は住んでもないし。

 ヒロセが言う。「まあ歳の近いキョーダイだと結構下が生意気な態度とるよな」

「へ~~」とサキちゃん。「私ヒロセんとこの弟、見た事ないや。今度紹介してよ」

「今日も一緒に来てたんだけどな。先に帰った。ワタナベはキョーダイは?」

「私いないよ。だから羨ましい。キョーダイ欲しい!」

 …私もそう思ってたな、むかし…まだ一人っ子の時。その時には弟は欲しくなかったけど。

 

 「ねえねえ」とサキちゃん。「ちっちゃい頃って一緒にお風呂も入ったりしたわけでしょ?」

思わずチハルと見つめ合ってしまった。

「あ~~」とチハル。「でもあんま覚えてないですね」

「…うん。ちっちゃい時ね…あんま覚えてないけど」

嘘付きキョーダイだ。

「ふうん」とサキちゃん。「まあキョーダイだもんね…いつまで一緒に入ってた?」

「へ!?」と私。

なにそんな事を掘り下げて聞き出そうとする!

「ほんの小さい時だから」とチハル。「覚えてねえよな、姉ちゃん」

「…うん」

サキちゃんがニッコリ笑って次の質問をする。「じゃあ一緒に寝てたりは?」

「してない!」即座に強く否定してしまった。

「…なんで?」私の強い否定にちょっと驚いているサキちゃんが聞く。「ちっちゃい頃は一緒に寝てるでしょ」

チハルがこっそり私の手をつないで、そしてあげくは私を抱きしめて頬っぺたにチュウまで…いや母が見たのは頬っぺたかもしれないけど、口にだって…実際口にもされたし…



 「なんでそんな事ばっか聞くの?」と私。

「そういうの聞きたいの!」力強く答えるサキちゃん。「私キョーダイいないから」

 キョーダイがいないから、だけじゃないよね?サキちゃん変な妄想してるから、私とチハルのそういう事が気になるんだよね?

「そうだよ」とヒロセが言った。「そんな話聞きたくねえわ」

「おお?」とサキちゃん。「ヒロセ、もしかして弟クンに嫉妬してんの?」

「してる」

あっさり答えるヒロセに驚く。

「仲良過ぎだろキモトキョーダイ」とヒロセ。「ていうか、姉ちゃん好き過ぎだろ、キモト弟」

ニッコリ笑うだけのチハル。

…嫌だ…ヒロセに驚くほど嬉しい事言われたのに、ここに来てこの部屋でチハルにチュウされた時の感触が無暗に蘇って来た!

 急にぶんぶん頭を振った私にビクッとする3人。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ