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やっぱり嫌なんだな?

 「ダメよ」母がきっぱりと言った。「チナちゃんはどっか行っちゃったらダメ!」

結構強めに言われてビックリする。そしてすごく嬉しい。

「チナちゃん、女の子だし。そんな一人暮らしとか高校生のうちから絶対許すわけないし、私もお父さんも。大学もね、うちじゃセキュリティのしっかりしたとこ借りれないと思うから、出来たらうちから通える所か寮に入って欲しい。…もし借りれたとしても…やっぱダメだな。女の子の一人暮らしはダメ。危ないから。チナちゃん可愛いから、すぐ痴漢にあったりストーカーに会ったりしてその挙句に強姦されちゃうかもしれない」

 母に畳みかけられて言葉を失う。そしてもちろん同時にとてもうれしい。


 母は私を見つめ言った。「ニュースでそんなの毎日のように出てくるでしょ?」

 うん。だから私も怖いなと思ってる。私のような貧乳でも女体ならそれでいいと襲ってくる人だっているのだとも思う。

「それになにより」お母さんが綺麗な笑顔で言ってくれた。「チナちゃんが出て行くのは私が寂しくて嫌だから」



 なんか…ちょっともう…泣きそうになってきたどうしよう。嬉し過ぎて。

「チナちゃん、お母さんを甘く見ないでよ?お母さんはチナちゃんとチハルのお母さんだからね!私はちゃんと二人を同じように大事にして、同じように手を抜いて育てて来たつもりなんだけど、そう感じられなかった?」

慌てて言った。「お母さん、ほんとごめんなさい」

じっと見つめられる。

「ほんとに」ともう一度言う私。「ごめんなさいお母さん」

「本当の子どもとか、本当の子どもじゃないとか、そういう事今さら言って欲しくないんだけど」

「うん」と私はうなずく。「ありがとう、お母さん」

「うるさいっ!」

「え…」

 

 母がいきなりキレて、私は母と暮らし始めてから一番今がビックリしている。ビックリしてビビっている。

母が結構キツめの声で言った。「ありがとう、とか言うとこが私の事本当のお母さんだと思ってない証拠だよね」

 そうだよね、その通りだよね…

 驚きながらも納得しつつある私に母が続けた。「チハルがどうしてもチナちゃんと一緒に暮らすのがダメだって言うなら、チハルが出て行くのが当たり前なんだから」



 …あれ?

 …あれ?…今すごく引っかかった。

 すごく嬉しい言葉をもらえたのに…。

 やっぱりチハルは私が嫌いで家を出たんだな?私の事が嫌なんだな?

 …やっぱりね。

 わかってたし私。



 あ~~~~…

 でもいざはっきりと言われたら結構ショック。

 弟に毛嫌いされる姉。姉が嫌いなばっかりに中学から家を出て学校の寮に入り、そして今度は祖母のうちに離れて暮らす弟。



 ていうか、何で私そこまで嫌われたかな…

 家族になって1年くらいはうまくいってたはずなのに。私の事、ねえちゃんてちゃんと呼んでくれて…ねえちゃんてチハルに呼ばれる事、もしかしたらもう一生ないのかも。

 どうしてだろう。ずっとどこかに本当の弟じゃないって気持ちがあったから、それが態度に出てたのかな。

 タナカさんにしても本当のお母さんではないから、本当のお母さんと思って接しようと思っても、そう思ってる時点でやっぱり気を使ってるって事だし。それを今怒られたわけだし。でもそれは再婚家庭ならしょうがないんじゃないの?それでも私はお母さんになってくれているタナカさんが好きだ。私を生んだ本当のお母さんと同じくらい好き。チハルの事は、今は向こうが私を避けているから、私だって好きだとは思えないけど、それでも大事な家族だとは思っていたのに。チハルが私の事を嫌ってちっともそう思ってくれていないのはやっぱりすごく寂しいし悔しい。



 それならなおさらだ。もう一度一緒に暮らしてなんとかやりなおせないだろうか。チハルにも何とかかんばって我慢してもらって一緒に住むわけにはいかないんだろうか。

 母に言ってみる。「やっぱりどうにか言ってチハルも一緒に暮らせないかな?一緒に住んだほうが、経済的にもチハルの健康的にもいい事だと思うのに。私、チハルとはあんまり絡まないように、これ以上チハルに嫌がられないようにやってみるから」

「んん~~」と母。

母は私を見て曖昧な笑顔をふっと見せた。



 実際、母とその話をしてからすぐ後で、「うちに帰ってうちから通えばいいのに」とチハルにラインで送ったら、「いや、いい」とそれだけの返事が翌日になって返って来た。

 もともとチハルとは連絡もほとんど取り合っていなかった。ラインを送るのも迷ったのだ。こんな風に返事が遅いくせに素っ気なかったり、送っても無視される事がよくあったから。

 我慢してさらに、「1回帰っておいでよ。ちゃんと話をしよう」と送ったら無視された。

 ムカつく!嫌われているのは寂しいと思ったが、それよりだんだんムカつく気持ちの方が大きくなってきた。

 弟のくせに。

 所詮、弟のくせに。

 そう思ったので、入学式には絶対に参加する事にした。



 2、3年生で入学式に出席するのは、前年に生徒会の委員をやっていた人と吹奏楽部、後は任意でクラスに2、3名ずつ。たいていはクラス委員が出るのだけど、兄弟姉妹のいる人は出てもよいというお達しが出て私は出席することにしたのだ。1学年違いのキョーダイが同じ学校に入学する人なんてそうそういないと思う。もしかしたら私だけかもしれない。





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