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気付いたの?

 そして対面式も中盤を過ぎて、やっと新入生代表の挨拶だ。

 チハルが体育館に入場して来たときよりも少し大きなザワザワが体育館にうずまく。実際先生が「静かに」と注意したくらいだ。

 チハルは全く動じずに挨拶文を読み始めた。

 先生が全部書いてくれたんじゃないかと思うくらいの綺麗事を並べたおざなりの挨拶。まあまあ入学式と被ってる内容だ。

 この伝統ある高校に入学が出来…先輩方にお導き頂き、…素晴らしい先輩方のいるこの学校で学ぶ事が光栄…だとかなんかそんな感じ。


 …面白いかも!

 あんなチハルが超真面目ぶってるから。ちょっと笑ってしまう。

 あの生意気なチハルが…

 なんか…大きくなったなぁ…ってお母さんか私は。

 ダメだ笑うの我慢しなきゃ。でもニヤニヤしちゃう。

 女子の皆さんはたぶん、カッコいい!!さわやか!!って思ってザワついているんだろうけど、違うからね。腹黒いし、感じ悪いし、姉ちゃんてまた呼ぶようになったけど、でも偉そうだからね。



 読み終わって静かに挨拶文を置くチハル。

 あ、ちょっとこっち見た。ごめんごめん、ニヤついてしまって。でも見えないよね壇上からじゃ。

 それでもやっぱり挨拶文とのギャップが面白かったから、ちょっと右手をほっぺたに当てる振りをして、ほんの一瞬手を振ってみた。姉ちゃんて呼んでくたし、挨拶文読むのだって教えてくれてたし、恋バナまでしたし、第一気付かないかもしれないし。

 じっとこちらを見るチハル。気付いたかな、気付かなかったかな。


 次の瞬間チハルが微笑んで低く片手を上げて見せた。

 うわっ!振り返した!いつもあんなに無視してたくせに。

 が、とたんに周りのあちこちから「きゃあっ!」と女子の声が上がる。

 え?あれ?私にじゃなかなったのか?みんなにって事?

 アイドルか!気持ち悪…

 



 教室に戻った後、女子の何人かがチハルの話をしていた。

「何あの新入生」

「いや、マジで今すぐ1年のクラス見に行きたいんだけど」

「うちのクラスだったら良かったのに。てかせめて学年同じだったら」

「うちのクラスの男子全員と交換とか出来ないかな」

などなど…。



 聞き耳を立てていたら隣の席のサキちゃんに聞かれた。

「あれさぁ、もしかでチナの弟でしょ?」

 サキちゃんは去年も同じクラスだったれど、中学は別で、去年はそこまで親しく話した事はなかったのに、2年になってすぐ席が隣になったので、まだ4日目だけれど今のところよく話しかけて来てくれる。

「良く分かったね」驚きながら答える私。

「だって苗字一緒じゃん。チナの方見てたし。手を振ったじゃん」

「サキちゃん結構すごいかも。似てないから誰も気付かないかと思った」

「男のキョーダイと女のキョーダイ、そこまで似ないでしょ」

 そっか。なら良かった!

 そうかそうだよね。私の仲良くしてた子のうちは結構似てるとこもあったから、気にし過ぎだったのかもしれない。似てないキョーダイだってたくさんいるはずだ。…そんなところは全部義キョーダイだったりして。



「でも今んとこ気付いてんのサキちゃんだけだよ」

「私だけ?」

「あ、ヒロセも知ってる。入学式一緒だったから」

アイスを帰りに食べたのはちょっと秘密。


「なんか教えてくれた弟の感じとあの子似てたし」とサキちゃん。「もちろんあの子もキモトだったし。それにあの時手を振ったのってチナにだよね?」

「あ~…うん…そうかな…でも黙っててね。私の弟だって。何か本人いろいろバレたくなさそうだから」

「あんな感じで手を振ってきといて?」

なんとなく恥ずかしいので弟に自分から手を振ったなんて事は黙っておくせこい私だ。

「でもあの歳で姉に手を振るってシスコン?カッコいいのにね」

「やっぱアレ私にじゃないや!うちの弟そんな感じじゃ全然ないから」

「は?じゃあ誰に?」

「なんか…知ってる子がいたのかも」

「中学違うとこだったのに?」

「あ~~…」

「ふうん」と意味ありげに私を見るサキちゃん。「チナさあ、マンガ読む?貸そうか?私の持ってるやつ」

「うん!マンガ好き!何ていうやつ貸してくれんの?」

「えっとね、なんか禁断のヤツ」

「キンダン?」

「キョーダイの。恋愛的な?」

「…いや、私はそれいいや」

なに?サキちゃん。うちの事情知ってんの!?知ってるはずないよね?教えてないもん。

「なんか」とサキちゃんが目をキラキラさせて言った。「一挙に想像膨らんだ。さっき弟クンが、かすかに笑ってチナに手を振ってきた時」

「もう…何言ってんのサキちゃん」




 今日と、確認テストのある明後日まで午前授業だ。

早く帰ろうと靴箱のところから校舎を出ようとする時に「キモト!」と後ろから呼ばれた。

 ヒロセだ。

「帰るの早ぇな」とヒロセ。

「うん。帰ってちょっと勉強しないと私かなりヤバいよ。この間ヒロセに教えてもらったとこも一人でやってみたら出来なかった」

「マジで!それはオレの教え方が悪かったんかも」

「そんな事ないよ!全然っわかんなかったとこがちょっとはわかるようになったから」

「ちょっとかよ!…なぁ、じゃあさ、これから一緒に昼メシ食って、そのまま図書館行かね?リベンジしたいわオレ」

 これから?二人で?昼ご飯も?





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