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あんたたち

 今日もう何回目だろう。マジマジとチハルを見つめてしまう。

 弟と恋バナ…。仲の良くなかった弟との。こんな日が来るとは…

「…なんか恥ずかしいよ、そんな事聞かれるの。…あんたは?好きな子いるの?」

自分の事を聞かれたくなくて逆に質問する。「あんた中学離れたけど、小学から一緒の子たちが誕生日に贈り物持ってきたり、無理に連絡先聞きに来てたりしてたじゃん」

「わかってくれてると思うけど、高校でオレの事姉ちゃんに聞きに来るヤツがいても黙っててよ?そういうのすげえめんどくせえから」

「めんどくさいって…うん、わかってる。…でも誰も私の弟だって気付かないと思うよ。似てないもんね」

「まあな」


 なんかすごい…

 普通の会話が成り立ってる。嬉しくてちょっと笑ってしまう…

「ねえ、ああいう連絡先とか渡して来る子に連絡した事ないの?」

「ねえよ」

「そういうのって嬉しくないの?モテまくり~~みたいな」

「良く知らない相手からもらってもなんもうれしくねえよ。逆に怖い」

「怖い?」

「知らねえヤツからそんなんもらったら怖ぇし、鬱陶しいじゃん。そいつだってオレの事、ちゃんとは知らねえくせに」

「そっか…」

「姉ちゃんはそういうのねえの?」

「そういうのはない」きっぱりと答える。

「知ってるヤツにラインとか聞かれたりとかは?あの、ヒロセってヤツ以外に」

「クラスのグループ以外は委員会が一緒になった子とかしか…」



 「あんたたち」

フッと背後から声をかけられてビクゥゥッッとする。

 パッと振り返ると母だ。

「びっくりした!」本当にビックリしたので言う。「もう!お母さん~~!何で音もなく入って来るの?すんごいびっくりした!」

「そっと入ったらどんなかな~~と思って」と笑わない真顔の母。

「そんなのびっくりするに決まってるじゃんもう!ねえチハル?」

「…」返事をしないチハル。

「ねえ?チハル?ビックリしたよね?」

私と同じように床に座り込んでいたチハルが無言でソファに掛け直した。顔もムッとしているように見える。


 なんか…またいつもの良くない雰囲気に戻ってるような気がするんだけど。

 父も入って来た。

「二人のご飯持って帰ってきたぞ~~」という父。

「ありがと」と私は答える。「食べようよチハル。お腹空いたね?」

「ねえねえ」と母。「何話してたの?今二人きりで」

 …軽めの恋バナしてましたけど。

「オレ帰るわ」と言い出すチハル。

「なんでよ?チハルも今からご飯一緒に食べるんじゃないの!?」慌てて言う私。

「いや、オレはもう帰る」

「もうチハル!一緒に食べようよ!」

が、本当にすぐにチハルは帰ってしまった。




 月曜日、1、2時間目が対面式だ。

 チハルが何組なのか聞くのを忘れていた。

 夕べあの後、母にまた入学式の夜のように、チハルとの事を根掘り葉掘り聞かれるかと思ったがそんな事もなく、逆に全くふれられる事の無さから来る気持ち悪さで、危うく自分からチハルとした恋バナを話してしまいそうになったが我慢した。私が二人の会話を母に教える事で、母がチハルをからかいでもしたら、せっかく良い感じになってきているチハルとの仲がまた元に戻ってしまう。

 ヒロセから「帰り、連絡来んの遅かったから心配したぞ。また一緒に勉強しよ。勉強っつか今度は映画とか行ってみねえ?」というラインが入っていて、明日ヒロセと顔を合わせたら、必要以上に意識してしまいそうだと思いながら「うん、ありがと、おやすみ」と返信したのだ。



 朝ヒロセに「はよ」と言われる。「おはよ」と私も返した時は普通でいられたが、ヒロセが「なんかキモトの『おやすみ』ってライン見てたらニヤニヤしてきてちょっと眠れなくなってヤバかったわ」と言い出したので、私は急激にドギマギしてきて「あ、へ?うん。ありがとう」とわけのわからない返事をしてしまう始末だ。ヤバいヤバいヤバい。

 でもそれを聞いたヒロセがハハハ、とバカ笑いしてきて、それに対して「もう!笑わないでよ~~」と言う事で平静に戻れた私。さすがヒロセ。




 ホームルームの後、在校生が先に体育館に入って1年生の入場を待つ。

 体育館の後ろの方3分の2に3年生と2年生が待機し、壇上に近い方へ1年生を入場させる。真ん中を空けて列を作り、その真ん中を1年生が通れるように立っている。

 私たちは2年4組。6組まであるから私たち4組は1年生が通るすぐ脇に並んでいる。

「お~~」と斜め前にいるヒロセ。「なんかデジャブ感」

私と自分を指差して言うのでうなずく。そうだよね、私たち入学式でもう見たもんね1年生。


 入って来る子たちをずっと見ていたら、終わりの方でやっとチハルの姿が見えた。1年5組か。しかもクラスの一番後ろだ。背が高いから。

 とたんにザワザワし始める体育館。

 「あの子見て」とあちこちの女子に言われてるのはチハルだと思う。たぶん。一番目立っているから。


 「5組なんだな、お前の弟」

ヒロセが少し振り返って言った。

 私はヒロセの弟が通ったのがわからなかったけれど、それは黙っておく。チハルを探してたらその事に気がいって、他の子の顔をよく見ていなかったのだ。だから「うん」とだけ答える私。ヒロセの弟何組だったんだろう。



 あれ?チハルがこっち見た。

 一瞬手を振ってみようかと思ったのを慌てて止めた。

 やっとまた姉ちゃんて言ってくれるようになったからっていっても、皆の前でそんな事したら気持ち悪がられるね。周りの子に見られて「なんだこいつ」と思われてもいけないし。それにちょっと機嫌悪そうな顔してたから。挨拶読むのが嫌なのかな…

「なんかお前の弟」とヒロセがこそっと言う。「こっちの方睨んで来たような気がすんだけど?」

「そんな事ないよ!」慌てて否定してまう。

いや、そんな事あるけどね。私にはしょっちゅうそんな子だったけどね。でもチハルがそういう子だと他人に思われるのは嫌なのだ。




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