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普通じゃない

 やたら聞いて来たくせに気のない相槌を打つ母だ。「へ~~~…あ、そう…ふうん」

「お母さんはさ」私は敢えて頑張って踏み込んでみる。「私とチハルが仲悪いの、嫌な感じじゃないの?でも、逆に仲良過ぎるのもおかしいと思うよね?高2の姉と高1の弟はそんな、どこの家でもそこまで仲良くないのが普通だよね?」

んん~…と考える母。

「私の友達のとことかもさ…」と言いかける私に被せるようにして母が言った。しかもやけに淡々とした感じでだ。

「普通っていってもその家ごとでそういうのやっぱり違うよね。それにうちはだいたい血が繋がってないんだから。他の普通のキョーダイと比較しようがないよね。まず普通じゃないんだから」



 「…そう…だね」

 母の率直で、急激に突き離されたように思える言い草に言葉を失いかける私。

 そしてそうだね、と言ってしまったが、さっき母は私とチハルが一緒に誕生日プレゼントを渡した時が人生で一番嬉しかったって言ったよね?それは私たちが本当のキョーダイみたいになれたから嬉しい、みたいな事で言ったんじゃないの?

 それでも普通のキョーダイじゃないって事を心しておけよ、って事?


 そして母は一人首を振っている。

 え、どういう事?母の首振りはどういう事?

 チハルがヒロセと仲良くするなって言ったのをヤキモチみたいに取ってるって事?

それだったら『姉ちゃん』なんてわざわざ私の事呼ばないよね?普段呼んでないのに。


 「ダメだな~~~」まだ首を緩く振りながらそう呟く母。

私!?私がダメ!?

 母をじっと見つめてしまう。

「ごめんねチナちゃん」と母が言った。

 ごめんて何?何に対してのごめん?

「ねえ、その子ってさ」と母が聞く。「カッコいいの?」

「…」

「入学式で話してた男の子の事」

「カッコいいって感じじゃなくて、どっちかって言ったら可愛い系…かな。なんでそんな事聞くの?」

「いや、どんな子か気になって」

「すごく良い子だよ。男子でも女子でもすごく親しい子にもそうじゃない子にも普通に良い感じで話せる子」


 「…チナちゃんは今彼氏いないよね?」

何、今度は急に私の彼氏の話?

「…いないけど…」

「じゃあ好きな子は?その子の事は好き?私に言うの嫌だ?」

「ううん。嫌じゃないけど…恥ずかしいかな。今はいないよ。好きな子はいたけど、中学の時は。お母さんにも教えたじゃん。別な高校行っちゃったし。それもあんまり話せた事もない感じで、本当にただ私がいいな、って思ってただけだったから。そいで今日の子はたくさん話したの今日がはじめてで…。お母さん何で急に…」



 が、母は私の答えなんかどうでもいいような感じで次の質問に移った。「チハルに好きな子いると思う?」

「…いやぁどうかな…彼女いないの?お母さん知らないの?」

「彼女はいない」即答する母。

 やけにきっぱり答えるな!でもそうなんだ。そういう事を母とは話してるって事?なんかそれもちょっとキモいな。

 「そうじゃなくて」と母。「チハルが好きだと思う子がいるかどうかチナちゃんに聞いてんの」

ああ、私を通して聞き出してんの?仲悪いのに?

「…いやあ…」無難に答える。「チハルを好きな子なら結構いそうだけど…男子校だったしどうなんだろうね…」

なんか言葉がしりすぼみになっていく。

「まあチハルに好きな子がいたとしても、絶対私には教えないと思うけどね」

「…」

母がじっと私を見つめる。じぃぃぃぃ~~…

 やだな。見つめるの止めて下さいお母さん。


 「なんかほらチハルって」とへらっと笑って見せる私。「お前には関係ねえよブス、とかすぐ言ったりとかさ。絶対そんな事言うじゃん」

「…」

だめだ。まだ見つめられてんだけど…

 母に見つめられると落ち着かない。


 「どうしたの?」私は聞く。「チハルになんかそういう関連の事でマズい事があるの?」

「いや、そうじゃないけど。んんん~~」と唸るお母さん。「まぁね。…なるようにしかならないけどね…」

最後は小さな声になってそう言っている。やっぱりお酒が回ってきてるのかな。

 

 「じゃあチナちゃん、チハルにはどんな子が似合うと思う?」

 今度は私が母をじっと見つめる。

 …これはやっぱりお母さん、私とチハルの事を変に疑った上での質問攻めなのか?

「そうだなぁ…チハルがあんな感じだから…」なるたけ普通になんでもないように、思っている事を答える。「可愛くて優しい小リスちゃんみたいな子とか?あんまり大人っぽい子とかと付き合われたりしたら、私が余計にすごい疎外感感じちゃうかも。お母さんはどんな子だったら嬉しいの?」

「チナちゃんは今はどんな男の子がいいなって思うの?」

「お母さん!質問やけにするけど私の話聞いてないでしょ?」

「聞いてる聞いてる。どんな男の子が好き?」

「私は…」恥ずかしいな。「どうして今日そんな事ばっかり聞くの?」

「聞きたいから!」

「私は…私…もう寝る!おやすみ!」



 母はツワモノだ。母と喋れば喋る程、私とチハルとの仲を本当はどう思っているのかが解らなくなってきた。

 私が急におやすみと言ったら、母は「え~~~~!?」って笑いながらなじってきたけど、最後に「チハルをあんまり甘やかしちゃダメだよ」と言った。「ダメなものはダメ!って態度に出ないと」

「全然甘えてないよ!いつもムカつくことばっかで。今日だけだよ。それにきっと今日のも嫌がらせだし。それか本当に急に学校変わったし、中学一緒だった子いないから寂しかったんだよ。だから…」

お母さんがふん?て顔をする。

 いやもう私、そろそろ本当に部屋戻ろう。

「チナちゃん」改めて母に呼ばれてドキリとする。「とにかく流されちゃダメだから」

流される?

「チナちゃん、おやすみ。チハルが一緒に住まない事を、チナちゃんが気にする事は何もないんだからね」




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