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姉ちゃん

 「あの子も弟が1年に入ったからね、だから…」説明する私。

「だから?」

そんな余計な事すんなって嫌がって怒るかなまた、と思いながら答える。

「教え合ってた。お互いの弟」

「アイツと仲良いの?」チハルの言い方がキツい。

「中学も一緒だったけど、そこまで喋った事なかった。でも今年同じクラスだから…。あ、あの子もチハルの事褒めてたよ」

ちっ、と舌打ちするチハル。

「ちょっと、褒めてるのになんで舌打ちとか…」

「名前は?」

 なんかすごく偉そうな聞き方。「なんであんたがそんな事聞くの?」



 「もしかして今日オレらより帰んの遅かったのって、帰りもそいつと一緒だった?もしかして今もそいつから連絡来てんの?」

「え、と、ちょっと寄り道してただけ」

「付き合ってんの?」

まあ確かに今日のはデートみたいだったけど…「付き合ってないよ」

ちょっと顔がニヤけてしまいそうになるのを抑えようと思って首をぶんぶん振りながら答えた。

「名前は?」

「ヒロセっていう…」

「何してた?」

「…」

「寄り道って何してたか聞いてる」

チハルの喋り方キツいな。

「なんでそんなキツい喋り方で質問ばっかすんの?…ちょっとアイス食べてただけだよ」

弟に問い詰められてこんな事答えるのも恥ずかしい。

「どこで?」

ほんとメッチャ聞いてくるな!親か。

「…駅ビルんとこの」

「そいつと二人でって事?」

 いつも私の質問は無視するくせに!



 「今何の連絡来た?」なおも聞くチハル。

「…なんであんたにそんな事教えなきゃ…」

今さらちょっと、スマホを手で隠すようすると、急に至近距離に詰め寄ったチハルに肩をぐっと掴まれスマホを取られてしまった。

「きゃっ…、ちょっ…、何!?」

あ、見られた。

 …見られた!

 ヒロセから『オレも。今日キモトと一緒で良かった楽しかった』って送られた来たやつ!

 掴まれた肩をさらにぐいっと後ろに押されて、危うく私は倒れそうになってベッドに後手に手をついた。




 「もう!」私はムッとして下からチハルを睨みつけた。「何すんの、返して!」

ヒロセからのラインを見られて恥ずかしいので殊更大きい声で言う私。

 ちっ、とまた舌打ちしたチハルが私のスマホを、ベッドの私の腰かけている横に叩きつけるようにして投げた。

「ちょっと!!壊れるじゃん!」

「…」

無言で少し私から目をそらすチハル。

「…何?どうしたの?疲れてんの?疲れたんなら休みなさいよ。…っとにもう!」

その答えにはまた無言。しかも私は肩を掴まれたまま。



 「ちょっと」と体制を整えてさすがにその手を払いのける私。

 が、そのまま私を近くからじっと見降ろしているチハルに私がキレてしまう。勝手にスマホも見やがって。しかも投げやがって。

 「あんたさあ!私の事がいくら嫌でもやっぱこの家で暮らせばいいじゃん!」

 

 入学式もスマホもヒロセの事も、全く関係ないと思っても続けて言ってしまう。

「私、あと2年したらどっか家から出られる大学に行くようにするから!それまでは我慢しなよ?あんたが一緒に暮らした方がお母さんだって嬉しいに決まってるのに!」

「うるせえよ。お前が言うな。ばあちゃんも最近めっきり足腰弱くなってオレが一緒に住んだ方がいいんだよ」

そうなの?「…それならおばあちゃんもこの家で一緒に暮らせばいいじゃん」

「それじゃばあちゃんが気がねすんだろ」

「そんな事ないよ、お父さんも私もおばあちゃんの事好きだよ」

「いらねえ」

「…ごめん…おばあちゃんがそんな感じなの気付かなくて」

今までムッとしていたチハルの顔が一瞬ふわっと優しくなった。


 私たちが家族になった時、それは父の転勤を機にだったのだが、それがちょうど祖母の住んでいる地域だったので、その時にも一緒に住もうかという話が持ち上がったが、元気なうちは近くに住めたらいいと祖母が言うので、結局その話は無しになったのだ。

 祖母は気丈な人だ。そして優しい。私の本当の母に似ている今の母と雰囲気が似ているので、私も最初から接しやすかったし、母と同じように私とチハルを区別しないで大事にしてくれている。

 そんな事、心では思っててもなかなか自然な感じで出来る事じゃないよね?



 が、ピロロン、とラインの着信音が鳴ってまたチハルがムッとした顔に戻った。

 ベッドの上に転がっているスマホを取ろうと体を動かしたが、その前にチハルが先にスマホを取り上げて、それを机の上に置いた。

「ちょっと、」と立ち上がろうとすると、肩を押されてまたベッドに座らせられる。もう!と思ったら、チハルが言ったのだ。

「姉ちゃん」

「…!」


 今、『姉ちゃん』て言った?

「姉ちゃん」

もう一度呼ばれた。

 


 姉ちゃん…

 なんかすごく久しぶりに聞いた気がする!

「なぁ姉ちゃん」

 もう一度、さっきより少し甘えたように聞こえる声でチハルは言いながら、私の横にトスッと腰かけた。そして少し私の肩に寄りかかるように体を寄せる。

 …うっわ~~~…なになになになに…

 何、急に!


 どうしたんだろ…何?何?こんなキャラじゃないじゃん絶対。

 どんな顔して言ってるんだろうと思うけれど顔が見れない。

 どうしよう…キモいよ…。何企んでんだろう、怖い。

 でも…でも『姉ちゃん』て呼ばれた!嬉しいけどキモいし怖い。…ホントどうしたんだろ…

 こんな甘えるような感じ本当に久しぶり。もう忘れてた感触だよね…







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