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act7★キミが可愛すぎたせいだよね

大変お待たせいたしましたm(_ _)m


今夜は3話(act7、8、9)連続で投稿いたします。

羞恥地獄を潜り抜け、謎の声援に見送られ。


池田くんの腕に抱えられたまま、辿り着いた先は保健室……じゃあなかった。


「……あの」

「なに?梨々香」

「ここ、って……」


三階から一階まで降りて、南側の突き当たりまで行くと保健室がある。

だから、三階から二階へ降りてそのまま廊下を南側へと進んだ池田くんに、別ルートから保健室まで降りて行くのだろうと思っていたのに、連れて来られたのは全然違う場所で。


ーーーふ、不安になってきた。


「ちょっと寄り道」

「いやなんで寄り道!?

大体、保健室だって行く必要な…」

「 そんなに真っ赤になって興奮しないで、ちょっと落ち着こうか」


なんて、まるで小さな子供をあやすような声で、ずずいっと顔を覗き込まないで。

距離感おかしいから!


「まっ、真っ赤なのは全部、池田くんのせいじゃない!」

「オレの?」

「そうよ!だって、ほら……、五段活用するし、鼓膜溶けちゃうし、それに」

「五段活用……?」

「あっ、え、っと……とにかく!落ち着ける訳ないでしょ?こんなのっ」

「こんなのって?」


この棟の二階には生徒会室があって。

その手前の奥まった場所には小さな倉庫がある。


そして今、倉庫の扉を背にして、こんな人気のない場所で池田くんと二人きりなんて状況で。 しかも抱っこされたままだし。落ち着けと言うのは到底無理な話なのだ。


「だからっ、なんでここに…、いやその前になんで保健室、じゃなくて!

王子がお姫さま抱っこしてるのかっていう由々しき問題が」

「王子が姫を抱き上げてもなんの問題もないと思うけど?」

「……へ?……あっ、その王子じゃなくてこっちの」

「こっちって?」

「だから目の前の漆黒の王子がっ……あっ、や、だから。

降ろしてくれれば自分で歩いて行くし」


松葉杖がなくても、なんとかなる(多分)。

壁伝いに階段まで行って手摺りに掴まればどうにかこうにか。


「それは無理」

「なんで!?」

「別に問題なんてないから落ち着いて」

「大ありだってば!」


ああもうなにをどう言えば……!!


「ほんと、可愛いな」

「………は?」

「ほら、その顔」


顔……?


「コロコロ表情が変わって面白い」

「べっ、別に、面白くないし。寧ろ表情が乏しいってよく言われ」

「ないだろ?」

「……ま、まぁ、そうだけど。

でもコロコロ変わったりもしないから、そんなマジマジと見ないで」


さっきの教室でのことといい、非凡な美しさを備えた人に平々凡々な己の顔を凝視されるなんてどんな羞恥プレイだ。


「そう言ってる間にも変わってるし。見飽きないな」


満面の笑みを浮かべた池田くんの顔こそ、いつになく表情豊かで実に愉快そうだ。

きっと誰もが驚くに違いない貴重な王子の麗しい笑顔にうっかり見惚れそうになったけれど……今の私はそれどころじゃあない。


「いい加減見飽きてくれるとありがたいんですけど。

あのね!今はそんなことが言いたいんじゃなくって」

「うん」

「どうして私、池田くんに抱っこされて」

「うん」

「保健室じゃなくてこんな所で」

「うん」

「………池田くん」

「うん…?」

「ちゃんと聞いてる?」

「うん」


って。

さっきから適当に相槌を打ってるだけじゃないの?


それに。


「いつまで笑ってるの?

私の顔、見世物じゃないんだけど」


さっきからずっと貴重な笑顔を惜しみなく向けてくる池田くんだけど、綺麗な黒曜石の瞳に滲む愉悦の色が次第に深みを増してキラキラ輝いて見えるのは、きっと気のせいじゃない。


「ごめん。けどやっぱり小動物みたいで……」


笑みを湛えたその顔が、額同士が触れる程に近付く。


「……しょ、小動物!?って、ちょっ、離れ……っ」


精一杯腕を伸ばして池田くんの肩を突っぱねながら顔を背けたら。


「ひゃっ!?」


み……み、みっ!?


耳元でちゅって音が……!


「なっ、な、なにするのっ」


咄嗟に右耳を手で覆いながら池田くんを睨み上げたのに。


「やっぱり耳、敏感なんだ」

「はぁ?なんのこ…、やっ、んんっ」


今度は左っ、左耳がーーーーーー!


「梨々香、耳まで真っ赤」

「だからっ、池田くんのっ、せいだって、んっ」

「ならもっと……オレを意識して」

「なに言っ、やっ!も、やめ……」


繰り返し耳元で啄むような音がして。

さっきからなにをされているのかハッキリ……分かりたくないけど分かってしまった。


食べられてる。

私の耳たぶ、食べられてる。


池田くんに耳たぶを何度も甘噛みされたりぱくりと含まれたりする度にゾクゾクと背筋が震え、池田くんの肩を押し返していた両手からも次第に力が抜けて、不本意ながらぐったりと池田くんの肩に凭れてしまった。


「やだっ、やめて……、池田く、やっ、ぁ…」

「……これって無意識?それとも煽ってる?」

「みっ、耳元で喋らない…でっ、んっ」


なんとか阻止しようと思っても、こんな体勢で、しかもヘロヘロに脱力した私にできることなんてそう多くはない。


「変なっ、ことやめてよっ、バカバカバカ……!」


せいぜい、こうやって池田くんの顔を私の頭でグリグリと押しやることくらいしかできないのが悔しい。


「……プッ」


笑ったーーーーーー?


チラリと見上げたら、やっぱり池田くんがクスクス笑ってた。


さっきから笑顔全開のこの人が……本当にあの冷凍光線を放つクールな池田くんと同一人物??


「池田くんのバカ。なにがおかしいのよ」


必殺グリグリ攻撃に恐れをなしたかと思いきや。

益々愉快そうなその顔はなんなのだ。


「……梨々香」

「呼び捨てはやめて。それに勝手に私の耳を食べないで!」

「じゃあ許してくれたら食べてもいいってこと?」

「許さないし食べちゃダメ!」

「手厳しいね」

「誰のせいだと……」


まだ耳たぶがジンジンして熱いし、背筋がゾクゾクする妙な感覚が残ってるし、体に上手く力が入らないし、どうしてくれるの。


「キミが可愛すぎたせいだよね」

「……っ、よく……そんな小っ恥ずかしいセリフが…」

「オレは事実を言ってるだけだよ。ねぇ、梨々香」

「もう!気安く呼ばないでって…」

「オレだけのものになって」

「だから、………………え?」


今、なんてーーーーーー?

お読みくださいまして、ありがとうございました(*^^*)

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