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第1章(4)

 一方その頃、姫の忠実な使用人のリズとアダムはハスバス湖の南側にいた。

 アダムは一本結びにした藍色の長い髪を鷲づかみにした。

 「もうっ!姫様はどこへ行っちゃったのよ。さすがにあたしでもこれ以上は許さないわよ」

 リズはその手を必死に止める。

 「お、落ち着いてくださいアダム。美しい髪が乱れてしまいます。もう少し探せばきっと見つかるはずですっ」

 そうは行ってもねぇ・・・・・・、とアダムがつぶやく。リズもつられてため息をついた。

 二人の持つ特殊能力『天使の勘』によって、姫の大体の位置は特定できていた。しかし、人間界というものは天界とは比べものにならないくらい複雑であり、捜索は難航していた。

 「もう少し能力を磨かないといけないわね。この勘も、人間界では全然あてにならないわ」

 「そうですよねぇ。まあ、いつも姫様に仕事を押し付けられているから、トレーニングの時間もとれないんですけどね・・・・・・」

 二人は顔を見合わせ、大きなため息をついた。

 ――ハスバス湖の北側に姫がいたということは内緒にしておこう。


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