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プロローグ
深呼吸をする。先ほどより冷たく鋭い風が体の中を回る。どうやら無事に着いたようだ。
彼女が目を開くと、雪を被った小さな教会が目の前に現れた。かすかに見える青い屋根、少し錆びた黄金の鐘。
彼女の虹色がかった瞳が夢のように輝く。
「わが愛しの少年!今から探してやるから待っているがよい」
「ひ、姫様・・・・・・。急ぎすぎですよ」
雪と木の枝でぐしゃぐしゃになった髪の毛を直し、メイド服の少女は姫と呼ばれる少女を睨みつける。同じく木の上に落ちてしまったスーツ姿の青年がため息をつくと白いもやが広がった。そんな二人の様子を見て、姫は虹色の瞳をつり上がらせた。
「ほら、さっさと付いて来い。わらわの一番の使用人共」
虹色の瞳の少女と忠実な二人組はハスバス湖の方角を目指し、東へ歩き出した。
天界のプリンセスである神様とその使用人である二人の天使の瞳には、驚きのあまりじゃがいもを落としてしまった少女の姿などまったく映っていないのであった。