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4杯目:プース・カフェ

「駆けつけ一杯、お任せでお願い!」

「グリムさん。うちに来るたびにその第一声はやめてください」


 いつものように残業した帰り道、いつものように勢いよく扉を開けて、互いに飽きているのにやめられないやり取りを行ってから、あいつは器用に笑ったままあたしに、呆れとかすかな非難の眼差しを向ける。


「他のお客様のご迷惑ですし」

 言われて、気付く。

 カウンターに座る、老紳士に。

 柔らかく笑って会釈するその人に、つられてあたしも軽く頭を下げた。







 頭を下げつつ思ったことは、「こいつ、本当に客?」だったわ。


 この店の性質上、ここの客はあたしと同業か、もしくはお酒目当てではなくその後のどちらの「扉」に進むかを選ぶために来た人達の二通り。

 前者なら、顔見知りじゃなくても見ればわかる。だから、この人は後者に間違いない……はずなんだけど、この店の客らしくないわね。


 後者の客も、大体二通りに分けられる。ここがどこなのか、どういう店なのかを初めから理解してきた場合と、気が付いたらここにいて何も理解してない場合。

 後者なら行き成り気が付いたらバーなんかにいるんだから、戸惑ってその辺キョロキョロ見渡したりしてるのが普通で、前者ならわかっているからこそ思い悩んだ暗い顔をしているのがほとんど。


 なのに、この老紳士は笑っている。

 穏やかに、楽しそうに、笑っている。

 それは、この店をバーテンであるあいつの次に詳しいと自称するあたしからしたら、あまりにも不自然な、違和感の塊。


 しかしそんなことを口に出せるわけもなく、あたしはその違和感に居心地の悪い思いをしながら、カウンターに着く。


「こんにちは、お嬢さん。こちらの店には、よくいらっしゃるのですか?」

 正直、何となくだけどあんまり関わりたくないわねと思っていたのに、紳士から話しかけてきた。お嬢さんと呼ばれるのは嬉しいけど、あたし、確実にあなたより年上なんだけどねー。

 でも、こんな事を尋ねて来るってことは、この人は自覚ありじゃなくて無自覚なのかしら? 余裕っぽいのは、年の功?


「えぇ、まぁ。時々、飲みたくて仕方がない夜に」

「グリムさんの『時々』の頻度は、私の『しょっちゅう』か『毎日のように』に匹敵するんですが?」

「あんたは黙ってて」


 営業用笑顔で応えるあたしに、カクテル作りながら茶々を入れないで。

 っていうか、こいつ、何のカクテルを作ってるの?

 コリンズ・グラス……別名、トール・グラス、チムニー・グラスとか呼ばれる背の高い円柱形のグラスに、あいつはバー・スプーンを使って次々にリキュールやらシロップやらを注ぎ込んでいる。

 それだけなら、別に珍しい作り方じゃない。カシスオレンジや、ソルティ・ドッグの作り方と同じで最後にはかき混ぜるのだろうで終わる。


 あたしが注目してるのは、作り方じゃなくてこいつがグラスに注ぐ飲み物の種類とその多さ!

 何で七つも酒瓶を出してるの!?

 しかもパッと、見た所リキュールが多くて、ジュースや炭酸水とかがない。

 ……濃厚なリキュール何種類も入れておいて、薄める系が全くないって、飲めるの? って言うか、混ぜて大丈夫なの、それ?


「申し訳ありません、お嬢さん。私が時間のかかる注文をしてしまいまして」

 じっとあいつが作るカクテルを眺めていたら、紳士に謝罪された。

 あたしが自分の酒を造ってもらえないことに拗ねてるとでも思われたのかしら?


「いえ、別にあたしは気にしてませんよ。ただ、初めて見る作り方だわと思って、ついついじっくり見ていただけですから」

「そうですか。それは良かった」


 あたしの言葉で、申し訳なさそうに笑っていた紳士が再び穏やかな笑顔になる。

 笑顔のまま器用に感情を表すのは、カウンターの向こうでカクテルを作ってるあいつと同じ。笑顔の穏やかさも、似てる。


 でも、あたしにとってやっぱりその笑顔は、この老紳士は、違和感だった。

 違和感そのもの、何故ここにいるのかが不思議な人。

 喉に魚の骨が引っかかるような、くしゃみが出そうで出ないような、そういう微妙な違和感と気持ち悪さにイライラしてきたタイミングで、カクテルは完成した。


「お客様。お待たせしました」

 コースターをまずカウンターの上に置き、それからあいつはコリンズ・グラスを置く。


「ご注文の、プース・カフェです」






 芸術品。そのカクテルを言い表すには、この単語しかない。

 縦長のグラスに、七種類の飲み物が入っていることが一目でわかる。


 そう、一目で。私のように、作っているのを見てなくても、酒瓶の数なんて数えていなくても、子供だって一目でわかる。


 グラスの中で、シロップやリキュールがそれぞれパッキリくっきり分かれて、七層になっているのだから。

 写真とかで見たら、液体ではなくてゼリーに見えそうなぐらい、はっきりとそれぞれ別々に別れて混ざっていない。

 あぁ、そっか。シロップやらリキュールやら、やたらと甘ったるくて味の濃いものばかり使っていたのは、比重で自然に混ざらないようにするためなのね。


 大きく分けたらこれ、エンゼル・チップと同じ作り方だわ。あれは、クリーム・ド・カカオというチョコレートリキュールの上に生クリームを注ぐ二層構造だし、他の同じような作り方をするカクテルも基本的には二層しか作らないから、作ってるのを見ても全然気づかなかった。


「レインボーを見るのは初めてですか?」

 発色のいいリキュールを使っているので、まさしく宝石のようなそのカクテルに見惚れていると、注文主の紳士に尋ねられる。


「レインボー?」

 確かに色が七つで虹みたいだけど、あいつが言ってた名前と違ってない? あいつがカクテルの名前を間違えるわけがないはず。


「七層のプース・カフェの別名ですよ。このカクテルは、使うリキュールやシロップ、お酒の種類によって何層でも作れますから。

 ちなみに、五層だと『五色酒』とも呼ばれます」

 あたしの疑問を、名前を間違えるわけがないと確信している奴が、いつもの笑顔で答える。相変わらず、エスパーみたいな奴ね。


「そうそう。五色酒もいいですけど、私はやはりレインボーが好きですね。面倒をおかけして申し訳がないですけど、このカクテルを見ていると、色々と思い出しますから」

 老紳士の言葉に、また一つ引っかかりが出来た。


 ……『見てる』と?

『飲む』とじゃないの?


 紳士は、グラスに触れこそはするけど、持ちやしない。

 マドラーをもらってかきまぜもしなければ、ストローで飲みもせず、グラスの表面、カクテルの一層一層をなぞって、彼は始めた。

 昔語りを。





 紳士は、顔の皺と同じくらい笑みを深めてグラスの底、赤色の層をなぞりながら語る。


「この層を見ていると、幼少期を思い出します。優しい母に、心から愛された記憶を。

 母は誰よりも何よりも、私を大事にしてくれました。私が泣いていると、すぐさま抱きしめて、私の不安も不満も取り除いてくれました。

 いつだって、何があっても私の味方をしてくれて、私の信頼に応えてくれました」


 カウンターの向こうで、あいつがこのカクテルを作るのに使った酒瓶などを片付けている。

 まず初めに球に戻したのは、酒ではなくシロップ。

 グレナデン・シロップ。ザクロで作られたシロップ。

 たぶん、一番下の層の毒々しいくらいの赤色は、これだ。


「この緑は、父を思い浮かばせます」


 次の老紳士がなぞったのは、すぐ上の緑の層。


「父は仕事に忙しくて、あまり私と交流がありませんでした。

 それが正直、不満に思っていた時期もありましたが、父は私を養うのに必死だったと今では十分に理解しています。学費の心配もせずに好きなことをやらせて、行きたい学校に行かせてもらえましたからね。

 子供の頃は苦い思いをたくさんしましたが、大人になるにつれてむしろ私は甘やかされていたなと知りましたよ」


 二番目に棚に戻された酒瓶は、名前が読み取れなかったけど、透明なガラス瓶の中に詰まった液体が、鮮やかな緑色だから、たぶんミントのリキュールでしょうね。

 何故か、メロンリキュールだとは思わなかったわ。

 老紳士の話から、勝手にそんな印象を持っちゃっただけだと思うけど、あたしは確信していた。


「これは、学生時代を思い出させますね」


 紳士は、透明の層に指を滑らせる。


「恥ずかしながら、この頃は女性と遊ぶのが第一だった頃ですね。同い年はもちろん、年上、年下、色んな女性とお付き合いしましたよ。若気の至りと云う奴ですかね。

 どの方とも長続きしませんでしたし、相手の女性をたくさん悲しませました。もし、時が戻るのならあの時代に帰ってみたいですね。あの甘い日々に、今度は女性をなかせないように」


 あいつが棚に戻した酒は、マラスキーノ。さくらんぼから作るリキュール。

 同じようにさくらんぼから作るお酒、キルシュよりも甘味が強いお酒だったわね、そういえばこれ、種ごと潰すんだっけとか、どうでもいいトリビアがついでに浮かぶ。


「この紫は妻にぴったりですね」


 紫よりも暗い青色に見える層を、軽く指でつつく。


「のろけ話になりますが、出会ったころの妻は本当に美しい素晴らしい女性でした。少し歳が上でしたが、無邪気であどけない所もあり、私は一目で恋におち、口説き落として結婚にこぎつけました。

彼女と結婚した時は、このまま死んでもいいと思いましたよ」


 棚に片付けられる前に、わずかに香った匂いでそれが何なのかわかった。

 パルフェ・タムール。

「飲む香水」とも呼ばれるほど匂いに特徴的で、媚薬効果があるとも言われたスミレのリキュールだとわかった。


「この色は息子ですね」


 自然の食物を使っていたら出せない、鮮やかな青の層に指を置く。


「息子が生まれた時、私に似てなくて少しがっかりしてしまいました。よくよく考えたら、こんな私に顔が似たって良い事があるはずないのだから、がっかりするようなことじゃないのに、酷い親ですね、我ながら。

 でも、息子の内面は私によく似ました。私が子供の頃やっていた習い事に通ったり、私が進学した学校で私と同じ部活を始めたり。

 私よりも立派な成績を上げていたので、私も鼻が高かったですよ」


 あいつが棚に戻す酒瓶を見なくてもわかる。

 ブルーキュラソー。青色はこれしかない。

 青系カクテルを作るために、人口着色料で青く染め上げた、オレンジのリキュール。

 味ではなく色を、優先されたリキュール。


「この可愛らしい黄色は娘以外に考えられませんね」


 薄い黄色の層を彼は愛でるように撫でる。

 何度も、何度も。


「娘は妻似で、本当に愛らしくて、目に入れても痛くないという言葉の体現と言っていいぐらい可愛らしい子でした。

 あまりにも可愛いので、ついつい甘やかして可愛がりすぎて、お姫様、女王様扱いで、息子に怒られてしまったくらいですよ。

 娘も娘で、少し前まではお父さんのお嫁さんになるーと言ってくれたのに、最近は冷たくて……。誰もが通る道だとわかってはいますが、悲しいものですね」


 木の箱に納めて、大事そうに棚に戻したお酒。

 それはリキュールの女王、シャルトリーズ。


「そしてこれは……私ですかね」


 最後の層に指が辿り着く。

 薄い茶色の層に。


 カウンターの向こうで、最後の酒瓶が棚に戻された。


 ブランデーだった。






「五〇年……。半世紀ですか。

 短いように思っていましたが、もう、十分私は生きました」


 中空を見つめ、紳士は語る。

 カクテルから手を離す。

 そして、立ち上がる。


「だから、私はこちらにいきます」


 何の躊躇もなく、彼は進んだ。

 二つの扉。二つの選択肢。

 青の扉と、紫の扉。

 そのうちの一つを、老紳士は選んだ。


 紫の扉を、彼は選んだ。


「……後悔は、なさいませんか?」

 酒瓶を全部片付け終えたあいつが向き直り、尋ねる。

 笑顔の最終確認。


 こいつは笑顔がデフォルトな分、器用に笑顔のまま感情表現をするのに、今日の笑顔は能面じみている。

 営業用とか、作り笑顔じゃなくて、まさしく貼り付けているとしか思えないほど、無味乾燥した笑顔で尋ねるあいつに、老紳士は答える。

 同じように能面じみた笑顔で。


「後悔? あるわけないですよ。私は思い返して、改めて良い人生だったと再確認したのですから」

 ……「良い人生」ね。

 あたしは眼鏡をずらして、裸眼で老紳士を見た。

 老紳士の「人生」を、見た。


 見て、納得した。

 喉に引っかかっていたものが抜け落ちるような感覚。でも、全然すっきりしない。


 老紳士が、……あれがこのカクテルを注文した理由が良くわかったわ。

 一口たりとも、あれが飲まなかった理由も。


「そうですか」

 あれの答えで、あいつの笑顔に感情が戻る。


「それはとても、残念です」

 憐憫を込められた笑顔で、それだけ言った。

 その言葉にあれは、何の返答もせずに、背を向けて、扉を開けた。

 紫の扉を開けて、その先に進んだ。


 ……本当、嫌な奴。

 面倒なカクテルを作らせておきながら、その礼さえも言わなかった時点で、気付いていたけどね。






「何が見えました?」

 あたしにそう尋ねて来た時には、もう憐憫は笑顔に残っていない。楽しげでおかしげな笑顔しか、そこにはない。

 訊かずとも、どうせ全部わかってるくせに。だからこその、憐憫とあの言葉だったくせに。

 知ってたけど、あんたってけっこう腹黒いわ。


「あれが語っていた通りの、このカクテル通りの人生よ」

 それだけ言って、あたしは七層のカクテルに視線を移す。


 芸術品のように美しいカクテル。

 どれも混ざっていない、混ぜ合わせていない、異色のカクテル。

 あれが一口も飲まなかった、ただ眺めていただけのカクテル。


 飲まなかった訳よ。

 混ぜなかったはずだわ。

 このカクテルは、見た目の美しさだけを追求した、混ぜることはもちろん、飲むことを前提にしていない、観賞用のカクテル。

 使っているのが糖度の高いシロップやリキュールばかりという時点でお察しね。


 ……そう。あれの人生はこのカクテルと同じ。

 見ている分、それも一つ一つをピックアップして見れば、理想的な人生。

 混ぜてはいけない、飲んでもいけない、一層ごとを単独で飲むことすらダメ。


 あれの人生は、そういう人生。


 優しい虐待の典型と言える、甘やかし放題の母親に育てられ、仕事第一の父親は金だけをあれが求めるがままに渡し続けた。


 そんな家庭で育ったあれが、年頃になれば本能のままに女を弄び、捨てた。その因果が巡り、あれが捨てた女に報復されて、生殖能力を失うまで。

 それで少しはマシになったかと思ったら、そのことを黙ったまま一人の女と結婚。だけど、その女は結婚詐欺まがいを散々繰り返した悪女。今度は自分がやり続けたことを、妻にされる屈辱を味わう。


 そして生まれた息子。もちろん、自分の子じゃないとは初めからわかっていたけど、種無しであることをくだらないプライドで絶対に語りたくないあれは、托卵であることを知りながら息子として育てる羽目になる。

 もちろん、可愛くなんてないから、自分のストレス発散と、見栄の為の道具として育てた。自分が出来なかったことをやらせて、結果が出せなかったら殴る蹴る、出したら他人の前でだけ褒めて自慢の種。


 次に生まれた娘。この子も自分の子ではないことはわかっていた。わかっていたからこそ、そして妻によく似た、自分好みの顔立ちだったからこそ、あれは甘やかし放題甘やかして、自分にべったり懐く、父親第一のファザコンに育てようとしていた。最低最悪な下心、劣情を抱いて。


 娘が年頃になったら手を出す気満々で育ててたけど、思春期特有の父親に対する不快感からか、それとも父親の劣情に気付いていたのか、娘はあれに冷たく当たり、そのストレスを息子で晴らす。


 虐待をされていた息子がついに不満をぶちまけて、とっくの昔に体格も力量差も逆転していた息子に殴られて、そうやってあれは、ここに来た。


 五〇年の人生に、幕を自分から降ろした。


「ものは言いようね」

 あたしが見たあれの人生を思い返して、重いため息が零れた。


「全くです」

 あいつも使ったバースプーンを洗って磨きながら、憐憫をわずかに蘇らせた口調で同意する。

 あれの語った人生に、嘘はなかった。

 昼ドラも真っ青なドロドロで身勝手な人生を、ただただ綺麗な所だけを見て、綺麗に言い換えていた。


「あれは、迷っていたんじゃなくて、自分に言い聞かせたかっただけなのね」

 自分の人生は素晴らしい、自分は良い人生を歩んだと、あれは自分に暗示を掛けたかったから、ここに来て、このカクテルを注文した。


 そんなの、無意味なのに。自分を騙しきれていなかったくせに。

 だからこそ、真実がわかりきっていたからこそ、あれは紫の扉を選んだ。


 青の扉の向こう側に、幸せなど待っていない。あるのは、あのドロドロとした人生の続き、今まで後回しにしていたツケを清算するだけの人生だと知っていたから。


 だから、逃げた。

 ……どこまでも、卑怯で最低な男。






「ね、これ、飲んでもいい?」

 あたしは手に取る。

 飲まれることを前提にしていないカクテル。プース・カフェを。

 無造作に手に取って中身が揺れて、触れあっている境面がわずかに滲んで混ざり合う。


「え? 私は別にかまいませんが、それ、本当に観賞用、飲まないことが前提のカクテルですよ」

「わかってるわよ」


 久々に、あいつから笑顔が消えて、目を丸くしたきょとん顔が見れた。それだけで、あの身勝手卑怯最低男から感じた不快感が少しマシになるあたしは、我ながら単純。


「いいのよ。食べ物を無駄にしたら、もったいないお化けが出ちゃうからね」

 おどけてあたしは、あいつが磨いていたバースプーンを奪って、グラスに突っ込んで中身をかき混ぜる。


 あたしがかき混ぜた瞬間の、あいつの驚愕の表情は写メってれば良かったぐらい珍しくて、普段あいつに茶々を入れられてるあたしには気持ち良かった。

 ……グラスのカクテルが、泥水みたいな色になったけど、うんまぁ、それくらいの価値はあったと思う。あったことにしましょう。


「……本気でそれを飲む気ですか? 他のカクテルをお作りしますよ?」

 驚愕は数秒で消して、笑顔を取り繕ったこいつは相変わらず客商売のプロだけど、その笑顔からドン引きは隠しきれていないわよ。

「……飲むわよ。あんたが作ったものなんだから、あれが飲まないのなら、あたしが飲むわ。

ほら、これ飲んでる間にカクテル作ってよ。お任せで、あたしにぴったりなのを」


 ものすごい色のカクテルを睨んで、宣言。


 飲むわよ。あれがただ自分に言い聞かせる、自己満足の為だけのカクテルでも。

後悔しない、ここに来た人も、遺された人も、幸せになる結末を、そういう人生のカクテルを作って、その名前を求めるあんたが作ったものなんだから。


 カクテルは、見た目も大事だけど飲んでこそ価値があるものだと、あたしもあんたも思っていることなんだから。


 あたしの言葉に、あいつは数秒の間を置いてから、答えた。

「……かしこまりました」


 あいつが、客が求めるがままに、客の人生そのもののカクテルを作り出して提供するあいつが、あたしにどんなカクテルをぴったりと思っているのか、それを楽しみにしながら、あたしはグラスを煽った。






………………まっず!!


バーでオーダーすると(特に混んでて忙しいときに)、バーテンさんが絶対に内心「ふざけんな!」と思っているカクテルNo,1、プース・カフェ。


まずいモノ扱いして申し訳ないですが、調べたら本当に飲むことをほとんど前提にしていない、飲むとしたらストローを使って一層ずつ飲むしかないので、相当な甘党じゃないとおいしく飲めないカクテルらしいので、純粋に味がお好きな方は申し訳ありませんがお許しください。


レシピは、「レインボー」で検索して出てきたプースカフェのレシピを参考にしてます。作中でも書いたように、使う酒の種類を増やしたら層が増えるので、これはほんの一例だと思ってください。


それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました!

次回は番外編、カクテルのうんちく講座予定なので、楽しみにしていただけたら幸いです。

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