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シゴキ  作者: 大友貴生
7/13

集い 1

奈々がオフ旅行に行くと了承したことで、涼子と美沙のつきまといは治まった。二人はさとみも同行するという条件に渋い顔を見せたものの、先方に電話をするや一点、大歓迎という態度に豹変した。そのあまりの露骨さに、奈々が恐怖心をよけいに募らせる。

「なんかいつもの二人じゃないみたい」

さとみはあえてそれに答えなかった。中途半端な同意は、かえって怖がらせてしまうだろうからである。

奈々がさとみの部屋で話し込んでいた間、奈々の家に涼子と美沙が訪ねてきた。幸いしたのは奈々は直接さとみの家に来ており、誰も居場所を把握していなかったことと、奈々とさとみが幼なじみで、目と鼻の先に家があると知られていなかったこと、さらに二人が奈々の家の前で待ち伏せするところを、窓から気がついて帰るまで様子を探れたため、それ以上絡まれずにすませられたことだった。

彼女たちは義理立てする必要もない関係にこだわり過ぎ、徐々に言動に異常をきたし始めている。それでも涼子は「みこ」さんとチャット仲間ということで、彼女とそこまで親密な会話を交わしていると言い訳も立つが、そのチャットに参加すらしていない美沙に至っては、ここまで執拗に約束を守ろうとするのはおかしい。

さとみの同行を急に認めたのも、先方の「みこ」さんが人数の増えることをよしとしたからだろう。「みこ」さんは人を欲しがっている。というよりも、祭に人が必要なのだろう。村人だけでは足りない、外部の人間を少しでも多く。それがどういうことを意味しているのか。

さとみは別のクラスではあったが、合同教室や朝礼などで、できるだけ二人の様子を観察した。が、オフ旅行に関する以外、涼子と美沙はまったくいつもと変わりがないように見える。奈々は旅行の日程が近づくにつれ、不安である本音を口にしていたが、それでもさとみが一緒に行くということで、自分の中で何かしらの折り合いが付けられたらしい。あるいは言葉にしてしまうことで、恐怖心がふくれあがってしまうためなのだろうか、それ以上詮索するような発言はしなくなっていた。



出発当日、さとみは奈々と互いの家の前で待ち合わせをしていたが、その時間を待たずに奈々の方から訪ねてきた。

「ごめん、ここで待ってるから、普通に支度していいよ」

玄関先で頼み込んで来る奈々に、さとみの母親が困惑気味に中へと誘う。

「でもそこじゃ寒いでしょ、中で待ってて。ね?」

「うん、その方が私も気兼ねしなくていいし、そうして。まだ全然準備できてないから」

慌てて洗面所から声をかけたさとみに、奈々が靴を脱ぎながら、申し訳なさそうに言った。

「家だと、涼子たちが迎えとかって来そうで怖いんだ。昨日もーー」

昨日も、と言いかけてから、奈々はさとみの母親の背中を一瞥して続きを飲み込んだ。その続きを聞いたのは、さとみの仕度が整い、二人で駅に向かって出発した後だった。

「あの子たち、みこさんって人と電話した後はいつも、さとみが来ることを歓迎してるっぽくなるんだけど、しばらくするとさとみの悪口言い出して、置いてっちゃえばいいとか、あたしだけ連れてくとか言い始めるんだよね。それでまた電話すると、やっぱり大勢で行った方が楽しいよねっていいだして・・・なんか洗脳されてるみたいで怖いんだもん」

さとみは話しを聞きながら、それは確実に洗脳されているんだろうと考えた。まあとりあえず、仲間はずれにしようという相談を持ちかけられたなんて、当の本人とその母親の前で言いにくいのはあたりまえだろう。

「昨日はちょっと解けかけだったのか、明日迎えに行くから、待ち合わせ場所スルーして三人で行かないって言ってたのね。二人ともあたしとさとみがお向かいさんで、小学校から一緒って知らないから。たぶん前日だし、みこさんと電話してるだろうからそんなことしないとは思ったんだけど、でもやっぱりもしかしたらって思っちゃうんだ」

めんどくさい人たちだなあと思いながら、さとみは奈々の話を聞いていた。

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