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シゴキ  作者: 大友貴生
10/13

集い 4

さとみの言葉通りだったことに、涼子と美沙は思わず

「嘘!マジでいる!!」

と声を上げる。その横で奈々は、心の中で彼らの人数を数えた。男性6人に女性が3人。そのうちの女性ひとりがみこという、このオフ旅行の企画者とでもいうのだろうか、村の人間のはず。となると参加者は自分たちを入れて12人という計算になる。涼子から聞いていたチャットの参加者よりも多いということは、涼子の他にも友達を誘った者がいるという訳だ。

「こんな変な集まりに、意外にいたね」

誰にも聞かれないように、注意深く小声でさとみに囁きかけると、さとみは彼らから目をそらさないまま同意した。

「うん、私も駅で見たときに驚いた。でも、島田さんと若野さんが変だったし、なにかしらの暗示がかかってたとしたら、参加率が良くて当然かって納得できる」

言われてみれば、奈々の同意を得るまでの2人は異常だったし、毛嫌いしているさとみに対する態度の不安定さもおかしい。奇妙な点が見えれば見えるほど、奈々の中の不安がふくれあがった。

改札の前で佇む9人の中から、ひとりの女性が一歩前に出た。背が低く、長い黒髪の、どこか古風な雰囲気を漂わせている。

「ようこそ、志加羽村へ」

その挨拶を受け、涼子が我に帰ったように反応した。

「あ・・・えと、みこさん?」

「はい。それではあなたがろっこさん?」

「そう!はじめまして・・・って、毎晩おしゃべりしてたから変な感じ」

接触はさけているとはいえ、毎日学校で会うさとみに対するのとは対照的に、涼子はみこという女性に親しげに笑いかける。

「お言葉に甘えて友達・・・とか、連れて来ちゃいました。あたしの隣にいるこの子が親友の美沙で、後ろのショートカットの子が奈々。あと、その横の人が奈々の友達。この人と一緒じゃないといやって奈々が言うんで、人数増えちゃったんですけどね」

あからさまに説明に差をつけておいて、今度はこちらへ向けて紹介した。

「こちらがあたしのチャット仲間のみこさん、でいんですよね?」

「ええ、よろしく」

年の頃は自分たちとあまり変わらないようだったが、その立ち振る舞いは遥かに大人びて落ち着いて見える。奈々は自分たちを省みて、こんな何もないような田舎の村に住んでいると、街で浮つきながら暮らしている女子高生と違って物静かになるのだろうかとすら考えてしまった。とはいえ、さとみはその霊感のため、みこという女性に負けず劣らず落ち着いているのだが。

「ねえ!みこさん、みんなを紹介してよ!!」

その言葉を合図に、みこの背後にいた男女が唐突に動き出した。まるでこれまで催眠術で時間を止められていたのを、解除されて素に戻ったかのように。

「あっは!!やっと来たね!!」

「ろっこが最後だよ!もう〜待ったんだからね!!」

「ごめ〜ん!!」

この様子だけ見れば、ごく普通のオフ会に見える。しかしところどころがおかしい、なにかがおかしかった。この光景が、さとみに目にはいったいどのように映っているのだろうか。奈々が無意識にさとみの横顔に目をやったが、さとみの態度はまったく平常心を保っているように見え、何を考えているのかさっぱりつかめなかった。

「村までもう少し奥になりますので、みなさん歩けますか?」

「え!歩くんですか!?」

美沙の声に、みこと一緒にいた男女が笑い声を上げる。

「ほらー、やっぱりこの反応だよ」

「ね、みこさん。言った通りでしょ」

「俺たちとおんなじ反応」

「そう言われましても、がんばってもらわないと到着しませんから。申し訳ないけど、これだけ人が多いと、全員を乗せて走れる車が通れないんです」

コロコロと笑って答えるみこに、さとみが表情を崩さないまま奈々に囁いた。

「あの人、顔は笑ってるけど目は全然笑ってないね」

確かめるように視線を向けると、みこは目を見開いたまま、全員の様子を観察するように「笑い声」をあげている。そしてその視線が、順番にそってゆっくりとこちらに向いた。奈々はとっさに下を向き、笑いすぎてむせている振りをした。

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