きみが、
主人公若干病み気味注意。
何故泣いているのですか?
きみを泣かせたのは誰ですか?
泣く理由を教えてくれないなら、わたしが一人で調べましょう。
きみを泣かせた相手を教えてくれないなら、わたしが一人で突き止めましょう。
きみの前に敵がいるなら、わたしが一人で片付けましょう。
「どうして、涙を流しているの?」
「……知らない」
「泣いているのはきみなのに、その理由をきみは知らないの?」
「知らないよ。あたしは泣いてなんかないもの」
きみは強くありたかった。
誰の前でも強くて、誰にも負けないひとになりたかった。
きみはとても脆くて弱いということ、きみ自身が一番よく知っていたはずなのに。
それでも、強く強くあろうとするその姿は、わたしにとって愛しくて。
「もう……放っといてよ」
「え、」
「しばらくは、あたしに話しかけないで」
そうわたしに言ったのを覚えていますか。
わたしは知っているよ。きみがそう言ったのは、きみを嫌う子たちに言われた言葉を真に受けたからだって。
『アンタを友だちだと思ってる奴なんているわけがない』
急に他人から愛を感じられなくなったんだね。
わたしがきみをほんとうに好きかどうか確かめたかったんだね。
全部全部分かってる。
きみが望むなら永遠にきみとは他人でいましょう。
きみが望むならずっときみを愛してあげましょう。
きみが望むなら、わたしはなんだってしましょう。
「……ねえ?」
「なに?」
「なんであたしと一緒にいるの? あたしなんてほんとは根暗だし、意地悪しちゃうし、つまんないよ」
そう言われたとき、わたしはどんなに嬉しかったか!
きみが思うきみをさらけ出してくれたこと。
わたしを友だちだと言ってくれたこと。
口が緩むのを抑えきれず、笑みをこぼしたわたしに怒ったね。
「な、んで笑うの!」
「なんでって……そんな今更なこと言うから」
「な、……っ」
「決まってるでしょ。全部含めて好きだから一緒にいるの」
きみが泣き虫なこと。
きみが誰より自分が嫌いなこと。
弱い自分を認めたくなくて強がっていること。
つらくていつも陰で泣いていること。
生きるのが嫌で何回も死のうとしたこと。
実は誰かに甘えたいこと。
自分を愛してほしいこと。
他人にもっと優しくしたいと思ってること。
友だちだと笑いかけるみんなと一緒に笑っていたいと願っていること。
全部全部知っているよ。
何回も教えてあげる。
きみをこんなにも愛しているひとはここにいるってことを。
『一組のFは今の父が愛人と作った子だった!?』
『今の母と血が繋がっていないらしい!!』
『母に疎まれ続けるという家庭環境が今のいじめっ子Fを作ったのか!?』
「……なに、これ……!?」
ほら、きみを傷つけた罰だ。
あの子は隠し続けた事実で人々に後ろ指をさされ、一生侮蔑の目で見られるんだ。
きみの脆さを嗤う奴らには、奴らの脆さを突きつけてやる。
きみが受けた痛みを何倍にも、何十倍にもして返してやる!
消えたくなる衝動と周りへの不信感で押し潰されて、壊れてしまえばいい。
きみが望まなくても、きみの敵はわたしが片付けてあげましょう。
たとえきみがそれを自分の強さだと勘違いしても。
きみが気づかなくても、わたしがきみを強く仕立て上げてみせましょう。
たとえその強さが幻で、ほんとうの強さでもなんでもなかったとしても。
きみは何も知らないでいい。
自分の強さはなんなのか。
わたしがどうしてきみをそこまで守るのか。
きみは、ずっと知らなくていい。
「ねえ、」
「どうしたの? 顔赤くして、」
「――これからも、あたしの友だちでいてよね」
きみが望むなら。
わたしのこの気持ちに、“友情”という名前をつけましょう。
(たとえ世界中の誰もがそれを“愛情”と呼んでも、)