仕事屋ばあさん
毎日が同じ事の繰り返し…
もう何年も同じ生活を過ごしている…
朝起きて、ゲームをして、友達と話をして……
俺の名前は川上零
もうすぐ二十歳になるが、仕事をしようとは思っていない。
一生遊んで暮らすんだ。
死ぬときはゲームのコントローラーを手に持って死ぬんだ。
そう考えていたが、いつもいつも同じ事を繰り返しているとさすがに退屈を感じてくる。なにか、この生活を変える方法はないだろうか?と、考えていたところだ。
「はぁ、生活を変えるって言ってもなぁ。どうすれば変わるんだろう。仕事をすればかなり生活は変わるとは思うけど。めんどくさいしなぁ。はぁ」
深いため息をして考えていたとき、家のチャイムが鳴った。
「だれだろ?」
ドアを開けると見知らぬお婆さんがいた。
「あの〜どちら様ですか?」お婆ちゃんに問い掛けた。するとお婆ちゃんが静かな声で、かすれている声で話し始めた。
「私は、仕事屋ばあさんと言われております。この家から退屈なオーラを感じたので足を運んできました。」
退屈なオーラ?何を言ってるんだ?相手にしないほうが良いのか?
「あの〜、俺は仕事をする気は無いので、すいませんが帰っていただけますか?」
「私はあなたに一番合う仕事をプレゼントしに来ました。ですから、少しだけ私の話を聞いてくれませんか?」
しつこい婆さんだ。でも、俺に一番合う仕事ってなんだろう?少し気になるな。
「じゃあ、少しだけなら話を聞いてあげますよ。立ち話をなんですし中に入ってください」
そういってお婆さんを家の中に入れた。やっぱり知らない人を家に入れるのはまずかったかな。まぁ、良いや。少しだけだし。
「あ、ここに座ってください。散らかっててすいません」
お婆さんを座布団に座らせ、俺は座るところが無かったのでストーブの上に座った。
「で、俺に一番合う仕事とは?」
「あなたに一番合う仕事は、“小説家”です。」
「しょ、小説家?」
「はい、小説家です」
「あのね、お婆さん。俺は小説なんて読んだことも無いんですよ?それなのに、書けるはずがないでしょう?」
「あなたには才能があります。あなた自身、気が付いていないだけです」
「うさんくさいって言ってるんだよ!俺は小説なんて書けない!もう帰ってくれ!」
「あなたが小説を書けば一ヵ月で有名になります」
「えっ?一ヵ月?」
「はい、一ヵ月であなたは有名になります。ただし、あなたが本気でやればの話ですが…」
「本気でやれば一ヵ月で有名になれるのか!?お金もたくさん入るのか!?」
「はい、有名になれますし、お金もたくさん入ります。そして一ヵ月後、もし、あなたが有名になっていれば、代金として10万円いただくことになります」
「10万?はっ、そうゆうことか。うますぎる話だと思ったよ。もういい。帰ってくれ」
そう言うとお婆さんは玄関の方に歩いていった。
「一ヵ月後、あなたは200万円稼ぐことができるのに。それでは失礼します」
200万?本気で言ってるのか?こんなチャンス二度と来ないかもしれない。
「待ってくれ!婆さん!」
「何でしょう」
「やるよ!俺。200万稼げるんならやってみるよ!でも、もし200万稼げなかったら、詐欺として訴えますからね」
「大丈夫です。本気でやれば稼げます。安心してください」
「でも、どうすれば良いんですか?」
「まず、今から本屋に言って、あなたが気になったものを買って、その本を読んでください。読みおわったら、すぐに小説を書き始めてください。書きおわったらそれを出版社に提出してください。提出してから1週間後に200万円が手元に入ります」
「本屋に行って本を買って、読んで、小説を書いて提出すればいいんだな!じゃあさっそく買いに行ってきます」
「それでは私は失礼します。一ヵ月後にまた来ます」
俺は急いで本を買って、急いで家に帰り、急いで読んで、急いで小説を書き始めた。
時が経つのを忘れ、俺は一生懸命小説を書いた。
そして、ついに小説が完成した。
何度も何度も自分が書いた小説を読み直して誤字がないか、ストーリーはつながっているか、などを確認した。
時が経つのはあまりにも早く、お婆さんが来てからもう三週間が経っていた。
俺は急いで出版社に小説を提出した。
それから楽しみに待っていた。お婆さんの話だと1週間後に200万円が手に入るということだからな。
この一週間、俺はゲームをしないで、本屋に行って本を買ってきた。そして、読んだ。
提出してから一週間が経った。ポストに手紙が一通入っていた。
その手紙には“あなたが書いた小説がすごく売れたので200万円を銀行に振込んでおきます”と書かれていた。
俺は銀行に向かった。そして、200万円を家に持って帰った。
家に着いて、もう一度200万円を確認した。
「はぁ、この枚数。この感覚。やっぱり200万円は大金だな〜」
ピンポーン
家のチャイムが鳴った。
誰だろ?
ドアを開けるとあの時のお婆さんがいた。
「お婆さん!あなたのおかげで200万手に入ったよ!」
「それは良かったですね。それでは代金として10万円をいただきます」
代金?ぁあ〜たしかそんな話もしたな。でもせっかく大金を手に入れたのにな。でも10万円くらいなら渡しても良いかな。いや、相手は婆さんだ。なんとかごまかせるだろ。
「なんのことですか?もしかして人違いじゃないですか?」
「あなたは、最低の人間ですね」
「なんだと、このババア!知らねぇって言ってんだろ!」
俺は婆さんにビンタをした。
「恩をあだで返すとは、やはりあなたは最低の人間です。そんな人間には罰を与える」
あれから何年経っただろうか
誰とも会わず、どこにも行かず、ただ
俺は決して終わることのない小説を書き続けている