第四十九話 新しい目標
装飾品の店を離れたあとも、アリスたちはグランベルの街を歩き続けた。
「あのお店も見てみましょう」
「はい」
アリスが楽しそうに指差すたび、彰人もその後をついていく。
食料品店。
衣料品店。
小さな雑貨屋。
見たことのない道具を扱う店。
どこを見ても、彰人にとっては新鮮だった。
「本当にいろんな店がありますね」
「でしょう?」
アリスは嬉しそうに笑う。
「私もこうして街を歩くのは好きなんです」
「そうなんですね」
そんな会話をしながら、しばらく歩いていると――
「……」
彰人はふと立ち止まった。
頭の中に、二つのものが浮かぶ。
一つは――
【SS】と表示された、あのロール。
もう一つは――
さっきアリスが見つめていた、可愛らしい髪留め。
どちらも今すぐ買うには、少しお金が足りない。
「……お金、稼がないとな」
「彰人さん?」
「え?」
アリスが不思議そうにこちらを見る。
「何か言いましたか?」
「いえ、独り言です」
彰人は笑った。
けれど、心の中では決めていた。
まずは冒険者として、しっかり依頼をこなそう。
薬草採取のような簡単な依頼だけではなく、もっと報酬の高い依頼にも挑戦してみたい。
そして――
ロールを買う。
それから。
もし余裕ができたら、あの髪留めも。
「そういえば、彰人さん」
アリスが話しかける。
「はい?」
「明日からは、また冒険者のお仕事をするんですか?」
「そうですね」
彰人は頷いた。
「特にギルドから呼ばれなければ、依頼を探してみようかなと思っています」
「無理はしないでくださいね」
「大丈夫ですよ」
そう答えながら、彰人は少しだけ笑う。
昨日までは、ただ何となく冒険者になった。
けれど今は違う。
小さいながらも、目標ができた。
そのために依頼を頑張る。
「明日はギルドに行ってみます」
「はい」
アリスも嬉しそうに頷いた。
「でも、今日はまだ街を楽しみましょう」
「そうですね」
彰人は笑う。
異世界に来て、まだ三日目。
分からないことだらけの世界。
けれど――
こうして少しずつ、この世界でやりたいことが増えていく。
それが、なんだか嬉しかった。
そして彰人は知らなかった。
明日、冒険者ギルドで待っている依頼が――
新たな出来事へと繋がっていくことを。
最後までお読みいただきありがとうございました。
よろしければ、ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります。




