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第9話「不思議な卵と、予期せぬぬくもり」


 ランクアップのために引き受けたのは、森の奥深くにある「光る苔」の採取クエストだった。

 リィンが一生懸命に岩肌を探っている間、ノアは案の定、手近な大樹の根元を陣取って、うつらうつらと船を漕いでいた。


「もう! ちょっとは手伝いなさいよノア!」


 リィンの怒鳴り声に、ノアが少しだけ顔を上げる。その視線の先、根元の茂みに、見たこともない虹色に光る「大きな卵」が転がっていた。


「……リィン、変な石がある」

「石? ……えっ、これ卵じゃない! 綺麗……」


 リィンが手を伸ばそうとしたが、ノアはその卵をひょいと抱え、あくびをしながら再び目を閉じた。


「……なんだか知らないが、これ、ちょうどいい温度だ……。枕にする」


「ちょっと、そんな貴重そうな卵を枕にするなんて! ……って、もう寝てるし」


 ノアは卵を抱きしめるようにして、そのまま深い眠りに落ちてしまった。

 数時間後。採取を終えたリィンがノアを起こそうとしたその時、ノアの腕の中で「ピキッ」という鋭い音が響いた。


「えっ……嘘、今孵るの!?」


 光が溢れ出し、卵の殻が弾け飛ぶ。

 そこから現れたのは、手のひらサイズの、銀色の毛並みに覆われた小さな竜のような魔獣だった。つぶらな瞳をパチパチさせたそれは、目の前で眠るノアの頬をペロリと舐める。


「キュイッ!」


「……冷たい。なんだ、お前……」


 目を覚ましたノアと、生まれたての魔獣が見つめ合う。

 リィンが慌てて鑑定スキル(初歩)を使うと、驚きの結果が出た。


「これ……『幻影夢竜ファントム・ドレイク』の幼体!? 数百年に一度しか生まれないって言われてる、超希少な魔獣よ!」


 その魔獣は、ノアの膨大な魔力を「温めて」もらっていたことで、彼を親だと認識したらしい。ノアの肩に飛び乗ると、そのまま髪の中に潜り込んで丸くなった。


「……こいつがいると、少しだけ魔力のチクチクが和らぐ気がする」


 ノアが少しだけ意外そうな顔をする。魔力を吸う性質を持つこの魔獣は、ノアにとって図らずも「移動式の安眠グッズ」になったようだった。


「(超希少な魔獣を懐かせるなんて……。やっぱりこの子、ただの寝不足じゃないわ。……もしかして、こういう珍しいことが起きれば、またナイト様が様子を見に来てくれるかも!)」


 リィンはニヤニヤと妄想している。

 こうして、ノアの髪の中に小さな居候が増えた状態で、二人の奇妙な旅は次のステップへと進み始めた。

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