第8話「夜の残像と、不機嫌な背中」
古老との対話から数日。
リィンは、ノアが安眠できるようにと、ギルドでランクアップのためのクエストを次々と引き受けていた。
もちろん、その隣には、いつも通りあくびをして眠そうにしているノアがいる。
「(あのナイト様……また会いたいな)」
リィンはクエストの報酬で買った甘いお菓子を食べながら、夜空を見上げていた。
あのシャドウウルフの夜、ノアの近くにいたあのナイト様。ノアを護衛していたようにも見えたし、ノアを連れ去ったようにも見えた。
「(ノアと一緒にいれば、またあのナイト様が、助けに……いや、様子を見に来てくれるかもしれないわよね)」
そう思えば、この手のかかるダメ後輩の面倒を見るのも、少しは苦にならなくなるというものだ。
「おい、リィン。次の依頼、まだか? 早く寝床に行きたい」
「ちょっと、私がお菓子食べてる間くらい待ちなさいよ! あんたの睡眠環境のために頑張ってるんでしょ!」
リィンがノアの頭を軽く叩くと、ノアは面倒くさそうに溜息をつく。
「……別に、依頼なんてしなくても、お前がその辺の魔獣を倒して素材を売ればいいだけだろう」
「ダメに決まってるでしょ! ギルドを通さない依頼なんてランク上がらないし、何より、それではナイト様に見てもらえないじゃない!」
「……はぁ。よくわからん」
ノアは結局、リィンのペースに合わせて歩くしかない。
リィンにとっては、この「ダメな後輩を引っ張ってクエストをこなす日々」こそが、憧れのナイト様に繋がる道だと信じていた。
「(さあ、まずは今日の依頼をクリアして、もっと上のランクを目指すわよ!)」
リィンの恋心と、ノアの安眠への執着。
微妙にズレた二人の目的は、しかし「一緒にいる」という結果において一致していた。




