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第6話「消えない隈(くま)と、安眠の噂」


「ノア! 起きなさいってば! ギルドの依頼を受けるわよ!」


 ギルドのカウンターに突っ伏したまま、ノアは地を這うような声で返す。


「……無理だ。昨日の移動だけで、もう一週間分は動いた……。今は、ただの石になりたい」


「あんた、まだ15歳でしょ!? どんな生活したらそんなに老け込めるのよ!」


 リィンは呆れながらも、ノアの目の下に刻まれた、取れる気配のない濃いくまを見つめた。

 正直、彼女は少しだけ心配していた。不摂生というより、何か重い病でも患っているのではないかと思えるほど、ノアの眠気は深刻に見えたからだ。


「……ねえ。あんた、それだけ眠れないなら、街の外れに住んでる『偏屈な古老』の話を聞きに行ってみる?」


 リィンがふと思い出したように口にした。


「古老……?」


 ノアが薄く目を開ける。


「ええ。昔、凄腕の道具職人だったっていうおじいさん。今は引退してるけど、彼なら……あんたのその、普通じゃない寝不足を解消する『何か』を知ってるかもしれないわ」


 ノアの瞳に、わずかな光が宿る。

 帝国では、どの名医に診せても「魔力不足による虚弱」と診断されるだけだった。だが、この辺境の地なら、別の視点があるのかもしれない。


「……そこへ行く。依頼より、そっちが先だ」


「ちょっと、勝手に決めないでよ! 依頼をこなして、そのついでに寄るの! ランクGは黙って私についてきなさい!」


 リィンはノアの襟首を掴んで引きずっていく。

 ノアは抵抗する気力もなく、ずるずると引きずられながら、心の中で「安眠」という言葉を反芻していた。


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