第4話「森の闇と、現れた銀の騎士」
冒険者ギルドで正式に「先輩・後輩」の契約を結んだ二人は、早速「薬草狩り」のクエストのためにルナの街を出た。
場所は、ノアが昨晩過ごした「最果ての森」。
「あんたね、新人のくせにフラフラ歩かない! 魔獣が出たらどうするのよ!」
リィンは憤慨しながら、草むらをかき分けて進む。その後ろを、ノアは眠そうにあくびをしながら、重い腰を引きずってついていった。
「……薬草なんて、そこら辺に生えてるだろう。適当でいいじゃないか」
「全然適当じゃないわよ! 薬草は薬草でも、質の良いものじゃないと高く売れないの!」
そう言い争っているうちに、太陽が沈み、森は深い闇に包まれた。
途端に、周囲の様子が一変する。昼間は静かだった森が、凶悪な魔獣たちの唸り声で満たされた。
「しまっ……! 薬草に夢中で時間を忘れてた!」
リィンが青ざめる。彼女のランクはE。夜のこの森は、Eランク冒険者には荷が重すぎる。
暗闇から、赤い眼光を光らせた巨大な狼——「シャドウウルフ」の群れが姿を現した。
「ノア、逃げ……っ!」
リィンが言いかけた時には、すでに群れは襲いかかってきていた。
絶体絶命。リィンが目を閉じた、その時。
――ヒュンッ。
空気が鋭く裂ける音。
リィンのすぐ横を通り抜けた「何か」が、シャドウウルフの動きを完全に停止させた。それは魔法の弾丸でも、剣の閃光でもない。ただの、魔力を込めた小石だった。
「……騒がしいな。眠れないだろう」
聞こえてきたのは、ノアのいつもの気だるげな声……ではなかった。
リィンが目を開けると、狼の前に立つ、一人の男の背中があった。
夜のノア——銀髪を月光に輝かせ、クマなど微塵もない鋭い眼差しをした「ナイト」が、そこに立っていた。
「な、誰……!?」
リィンの言葉に答えることもなく、ナイトは空中で指を鳴らす。
すると、シャドウウルフたちは、何か深い夢から覚めるような仕草を見せた後、一斉に地面に倒れ込み、静かに寝息を立て始めた。
「……終わった。帰るぞ、先輩」
ナイトはそう言うと、狼たちの死体……ではなく、眠り続ける彼らを無視して、悠然と歩き出した。
リィンは、その圧倒的な存在感と、一瞬で狼を無力化した正体不明の魔法に、心を奪われる。
「すごい……! なんて、なんて魔法なの……!」




