第3話「ギルド長の提案と、義務の指導係」
冒険者ギルド「ルナ支部」の扉を蹴り開ける勢いで、リィンはノアの腕を引いて中へなだれ込んだ。
「ギルド長!この、この男が、サンドイッチを潰したのに謝りもしないんです!」
リィンの怒声がギルド内に響き渡る。
居合わせた冒険者たちが、興味津々にこちらを振り返った。中には呆れたような視線で、今にも倒れそうな銀髪の青年——ノアを見て笑う者もいる。
「リィンさん、まあ落ち着いて。……で、そちらの青年は?」
カウンターの奥から現れたギルド長は、リィンの剣幕を軽くあしらいながら、ノアを見た。
ノアは、周囲の視線などどこ吹く風で、ギルド内の椅子にふらふらと近づき、そこに倒れ込むように座った。
「……登録に来た。眠い。」
ノアのあまりの覇気のなさに、ギルド長が苦笑する。
「登録? 君のような、今にも消え入りそうな若者がか? ……まあいい、これが新規登録用紙だ。記入して」
リィンはそれを見て、ギルド長に詰め寄る。
「ギルド長!だから、こいつから弁償代を……!」
「リィンさん。もし彼が登録したばかりの新人で、依頼料が払えないなら、あなたが指導係としてクエストに連れて行き、稼がせてやるのが『先輩』の義務でしょう?」
ギルド長はニヤリと笑った。
「フルーツサンド代は、クエストの報酬から天引きする。その代わり、彼がまともな冒険者になれるまで、あなたが面倒を見なさい」
「えぇーっ!なんで私が!あのポンコツ男を!?」
リィンは愕然とした。パン代を返してもらうつもりが、手のかかる新人の世話をする羽目になるとは。
一方、椅子で目を閉じていたノアは、心の中で呟く。
「……面倒なことになったな。でもまあ、薬草狩りとかのクエストなら、森で寝られるか……」
不本意ながらも「指導係」を引き受けたリィンは、椅子でうつらうつらしているノアを見下ろし、大きなため息をついた。
「わかったわよ!私が、あんたを立派な冒険者にしてあげるわ!感謝しなさい!」




