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2002年度

 2002年に入っても、景気は相変わらずだった。日経平均がバブル後最安値をつけたとか、不景気なニュースには事欠かない。ただ、自分にとってはもはやこれが常体だったので、何かが変わるわけでもなく、日々仕事をし、適度に遊ぶ日々を過ごしていた。そういう意味では福岡という街はとてもよくて、適度に息抜きもできるし発散もできるという、悪くない環境だった。


 ただ、購入した全日空株の株価は冴えなかった。特に2002年は、9.11で大打撃を受けた航空業界に更に追い打ちをかけるような出来事が起こる。11月にはじまった、SARSの流行。どういうわけか日本ではSARSが大流行したりはしなかったものの、海外は散々で、当然ながら航空業界には暗雲が漂った。そのたびに翻弄されながら、株式投資というのは勝つどころの話ではないと感じていた。


 とはいえ、超低金利の時代は続く。何もしないで貯金を持ち続けることがよいのかという疑問も持ちつつ、この時期は色々と模索していた。それこそ、流行し始めたFXに手を出して、これなら会社から帰った後の夜間でも取引が出来る、と思ったものの、常に画面に張り付いているのに疲れてしまい、結局元手を減らすだけで撤退したりした。授業料程度で大損はしなくてよかった、としかいいようがない。


 福岡勤務も残り1月ほどとなった2003年2月、いつものように見ていた経済ニュースで、竹中金融担当大臣が、ETFについて「絶対儲かると思うから買う」という内容の話をしたのが問題になっていると報じられていた。ここで話題になっていたのは、東証株価指数(TOPIX)に連動するETFのことだった。


このとき、僕はETFというものが何なのか、全く知らなかった。しかし、何とも不思議なことに、そんな発言を聞いた瞬間、逆に「それなら少し勉強してみようか」という好奇心が芽生えた。国の大臣がこんな発言をするなら、少なくとも注目すべき対象に違いないと感じたからだ。


そうして調べてみると、ETFというのは、要するに投資信託を上場しているものだという。投資信託は、毎日1回、取引終了時刻までの売買の申し込みを、翌営業日に売り買いするというスケジュール感になるが、ETFはリアルタイムで株価が付く。こんなことが可能なのは、ETFという投資信託の中身が、丸ごと日経平均株価やTOPIXとほぼ同じ比率の株式になっているからということだった。


面白いことを考える人がいるのだなぁと思いつつ、ETFについて解説したネット記事の中に、注目すべき記載を発見した。ETFの信託報酬は、とても安いというのだ。投資信託では、毎年一定割合の信託報酬という経費が運用会社に引かれる。これが少ないほど、投資家には有利だ。ETFはその信託報酬が極小だという。これは、いいのではないか。大臣の軽率な発言をきっかけにして、僕は次の投資の扉を開けることになった。



【家計と資産の概要】2003年3月

 年度末の時点での家計と資産の状況です。


 収入の部

  月収:29万円(残業込み)

  手取:23万円

  年収:450万円


 貯金の部

  貯金:90万円


 資産の部

  株式

   22万円

  投資信託

   日本株式:1万円



【コラム】投資信託とETF

 投資というのは、何らかの資産にお金を投じて購入したり売却したりして、利益を得ようとする行為です。どのような資産にお金を投じるのかは限定されていないので、株式投資といえば株式にお金を投じることになりますし、不動産投資といえば土地や建物にお金を投じることになります。


 物語で主人公が購入した全日空株は、個別株投資とよばれるタイプの投資で、個別の企業の株式を購入するという、いかにも投資らしい投資です。ただ、このような投資は当然ながら、個別の企業の業績に大きく左右されます。特に航空業界の株式ということになると、同時多発テロやSARS、そして新型コロナウイルスなど、世界で人の動きが縮小するようなイベントが起こると、たちまち業績に影響して、株価も下がる、ということになりがちです。


 不動産投資も同様の問題があります。たとえばマンションの一室を購入して賃貸する、という投資をする場合、その部屋に借り手がつけば安定的な収益が得られますが、空室だと収益がありません。また、何かの災害でその不動産の価値が下がってしまうと、投資した資金を回収できなくなってしまうリスクもあります。


 そうした個別株や特定の不動産の投資につきまとうリスクを薄めるには、投資対象を増やすことが有益です。たとえば、1社の株式を保有しているだけだと、その会社の業績が悪化したらどうにもなりませんが、100社の株式を保有していれば、業績が良い会社もあれば悪い会社もあり、平均するとこのぐらい、という形で値動きがマイルドになります。


 ただ、実際に100社の株式を購入するお金がある個人は稀です。そこで、そういうまとまった株式を保有する信託を作り、それを小口化して多くの人に売るという仕組みができました。これが、投資信託です。投資信託を買うということは、それを通じて間接的に、多くの会社の株式のいくらかの割合を保有する、ということになります。もしその投資信託が100社の株式を購入しているのであれば、100社が同時に全部倒産することは普通はありませんから、大損をするリスクは制御できるということになります。


 そして、株式の投資信託の中には、日経平均株価や、東証株価指数(TOPIX)といったインデックスに完全に連動する運用を目指すタイプのものがあります。このような投資信託は、インデックスに連動するというところから、インデックスファンドとよばれます。インデックスファンドは一般に信託報酬が安く、長期の投資で保有するのに向いています。


 そして、そんなインデックスファンドそのものを、株式市場に上場したのが、上場投資信託(ETF)です。個別株の売買をする株式市場自体を通じて、株式市場全体のインデックスに連動する投資信託も買えてしまう、そんな新しい金融商品が普及を始めたのが、21世紀初頭のこの時期でした。ただ、まだETFという存在も、言葉も、それ自体が全然なじみがないものだったので、竹中大臣は怪しいことを言っているのではないか、というようなことも含めて、話題になっていたのです。


 この物語を書いている2026年時点では、ETFは身近で地に足のついた投資手段として普及しています。20年以上の時を経て、それだけ投資が身近になったということなのでしょう。

 この物語はフィクションです。歴史的な事実として、固有名詞で触れられる企業もありますし、株価や指数などは現実の数字に即していますが、それらはいずれも、あくまで実在の企業等をモデルとして再構築したものに過ぎず、記載された内容が真実であることは保証しません。


 物語内(コラムを含みます。以下同じ。)で紹介する銘柄や投資手法について推奨したり勧誘したりするものでないことはもちろん、投資そのものについて推奨する意図はありませんし、投資の結果を保証するものでもありません。投資判断はあくまでも各自の自己責任でお願いします。


 この物語では、法律や税金の制度を紹介している部分があります。可能な限り正確を期しましたが、その正確性を保証することはできません。また、近年は制度改正のテンポが速いので、早晩、ここに書かれている法律や税制は、現実に適合しなくなることが見込まれます。そうした点を除いても、具体的な状況に対する法律や税制の適用について、筆者はその責任を負いません。その種の判断はあくまでも各自の自己責任で、そして、ご自身で判断が難しい問題については、弁護士や税理士、FPといった専門家への相談を強くお勧めします。

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