あとがき
長い物語にお付き合いいただき、ありがとうございました。この物語は、筆者自身が辿った投資の足跡を振り返りつつ、実際の数字でバックテストをしたらどういうことが起きるのか、という観点でフィクションをつづったものです。
ただ、フィクションではあるのですが、同時代を生きてきて、それぞれの年度にだいたい同じような体験をしているので、その年の出来事のディテイルに妙に細かい部分があったり、それに伴う心情描写が当時の人のものにかなり寄っていたりするのは、体験が反映されているから、とはいえると思います。
そんな物語ですが、実際には、ご都合主義なところも多々あります。そもそもこの時代に運よく就職できるという時点で勝ち組ではないかと言われれば、それはそのとおりです。しかも、大学同期で同等の就職をした伴侶と水平婚し、子どもたちも大きな障害や、大病などの危機的なイベントなく成長する、そんな理想的な家族ばかりではない、という批判は、甘受するしかありません。
他方で、物語の主人公とその家庭は、そういう意味で恵まれてはいるものの、決してすごく裕福だとか、高額の所得を得ているとかというわけではありません。妻の所得は最終的にかなり高額になる可能性がありますが、少なくとも積立投資を描いている時点での世帯年収は1000万円から1600万円程度なので、中の上ではあるものの、大卒総合職の共働き家庭として見れば中央値といったところをイメージしています。
そのような家庭で、どこまで行けるのか。実際にバックテストをしてみると、結果はかなり驚きの内容になりました。まさか億に達するとは、書いていた本人も思っていなかったのです。ただこれも、たとえば首都圏でこのような共働き夫婦が年収の5倍(物語の夫婦だと、5000万円~8000万円)くらいのマンションを購入する、という風に考えると、累積投入額という観点からは別におかしくはありません。2020年代の爆発的な上昇相場が思った以上に強烈ではありましたが、これは不動産価格も同様なので、イーブンでしょう。
失われた20年とか、失われた30年とかといわれた時期を、こうして振り返ってみると、単に失われていたわけではなくて、いろいろな起伏と、その時代を生きた人たちのライフステージやライフイベントがあることが、改めて思い起こされます。そして、その失われた時代に抗って撒いた種が花開くとき、実はそれが、単に失われていた時代でもなかったことが浮き彫りになるのです。個々人のおかれた状況は、まさにそれぞれですが、そのひとつの形を描くことができていれば、よかったなと思います。
そして、この物語とセットで書いたコラムは、私が若いころに知っておきたかったことを詰め込みました。法律や制度の説明から、税金、社会保険、自治体の施策に至るまで、統一感はあまりないのですが、ただ生きているだけで、これだけの制度や施策が関係してくるのだということを、あらかじめ知っているのとそうでないのとでは、やはり大きな差が出ます。本当はこういうことこそ、高校の家庭科や、大学の教養課程(実用法学基礎、みたいなイメージ)あたりで学ぶべき内容だと思うのですが、現実はなかなか追いついてこないようです。
物語の本編とコラムが、若い人たちが将来を戦略的に考える一助になればなと思いつつ、稿を閉じることとします。
この物語はフィクションです。歴史的な事実として、固有名詞で触れられる企業もありますし、株価や指数などは現実の数字に即していますが、それらはいずれも、あくまで実在の企業等をモデルとして再構築したものに過ぎず、記載された内容が真実であることは保証しません。
物語内(コラムを含みます。以下同じ。)で紹介する銘柄や投資手法について推奨したり勧誘したりするものでないことはもちろん、投資そのものについて推奨する意図はありませんし、投資の結果を保証するものでもありません。投資判断はあくまでも各自の自己責任でお願いします。
この物語では、法律や税金の制度を紹介している部分があります。可能な限り正確を期しましたが、その正確性を保証することはできません。また、近年は制度改正のテンポが速いので、早晩、ここに書かれている法律や税制は、現実に適合しなくなることが見込まれます。そうした点を除いても、具体的な状況に対する法律や税制の適用について、筆者はその責任を負いません。その種の判断はあくまでも各自の自己責任で、そして、ご自身で判断が難しい問題については、弁護士や税理士、FPといった専門家への相談を強くお勧めします。




