2024年度
積立投資家にとっての2024年度は、これまでの全ての苦労が報われる年となった。
まず、前年度の最終盤、2024年1月に導入された新NISAで株式市場への新規の参加者も増え、いよいよ、投資というものが日陰者の怪しげな嗜みから、国民の必修科目へと格上げされた感がある。その端境期の問題として、何も考えずにとりあえずオルカンを買っておけ、というような言説が多かったのには閉口したけれど、そのような言説は無責任ではあるものの大外れではないのだから、それはそれでいいのかもしれない。
わずか8年前、2016年には、ときの財務大臣までが、「債券、株に投資するのは危ないという思い込みがある。あれは正しい。われわれの同期生で証券会社に勤めているのは、よほどやばいやつだった」などと言っていたのを思い出すと、本当に遠くへ来たものだと思う。
それに呼応するように、日経平均株価が33年ぶりに最高値を更新し、市場の高揚感は一気に高まった。こういうとき、市場は走る。最高値を超えてすぐに下がるのではなく、その後も、凸凹を繰り返しながら、最高値を更新していくのだ。日本以外の株式市場ではこれまでいつも見られていた光景、それが、日本にも戻ってきた。コロナがほぼ終息したのと相まって、社会の雰囲気が少しずつ明るくなっていくことが感じられた。
ただ、そんな明るい気分の裏側で、世界には相変わらず暗い影が落ちている。ロシアのウクライナ侵攻と、イスラエルのガザ侵攻だ。さらに、アフリカには政情が不安定な国が複数あり、世界の人権状況という視座の高い観点からは、ハッピーな1年だということはややはばかられる。ただ、ではそれに僕が何かをできるのかといえば、できることは限られている。だから、コロナのパンデックのときに投資への後ろめたさから始めた始めた国境なき医師団への寄付を、今年も続けることでせめてもの罪滅ぼしにした。
そんな大きな話の陰で、ミクロの家計にもうれしい変化があった。高校無償化である。以前から、公立高校の無償化は国の政策として行われていた。ところがこれには所得制限がついていて、しかも、その対象が世帯所得だったので、我が家のような共働き世帯はことごとく所得制限に引っかかるという、全く使い物にならない制度だった。そこに、東京都が独自に所得制限を撤廃するという政策を実施したので、都民の僕たちも恩恵に浴することができるようになった。
共働きで妻が出世街道を進み、資産運用も順調な今、もはや金額として大きなものではない。けれど、所得制限にことごとく引っ掛かって、目の前の人参を取り上げられるのは、心理的には除け者にされた感が強く、とても悲しい。これまで色々な制度でそういう思いをしてきただけに、この小さな光明が、何かとても大きなもののように感じられたのだった。長年の投資で達観したつもりになっていた自分にも、まだこんな心理的な揺れが残っていたのだと少し新鮮な気持ちを思い出しつつ、こういう心理的な揺れこそが、投資の世界では思わぬ痛手につながるのだと、思いを新たにしたりもしていた。
仕事の方は相変わらずで、今の持ち場で給料の分、きちんと貢献するという姿勢を貫いた。しかし、そうして落ち着いて見まわしてみると、意外と様々なことが目に入ってくる。その気づきを丁寧に掘り起こしていくと業績も上がるもので、ボーナス時の業績評価は自身の過去最高を更新した。あまりガツガツせず地道にやる方が良い場合もあるのか、などと、今更思ったりもした。
そして、2024年度最後の大イベントは、第1子の大学受験と、第2子の高校受験。これも、両方とも無事に終わった。第1子については浪人もあるかもしれないと思って資金計画を立てていたけれど、その必要もなくなったので、入学祝を奮発しようと思う。春休みには、ご褒美の趣旨も兼ねて家族で東南アジアのリゾートに旅行に行った。家族4人全員で家族旅行に行くのもこれが最後かなぁ、などと思いながら、いよいよ子の独立に立ち会う気持ちを強めたのだった。
【家計と資産の概要】2025年3月
年度末の時点での家計と資産の状況です。
収入の部
夫
月収:49万円
手取:37万円
年収:800万円
妻
月収:58万円
手取:43万円
年収:900万円
貯金の部
貯金:2280万円
資産の部
株式
27万円
投資信託
日本株式:2319万円(△1167万円)
世界株式:4900万円(△3767万円)
投信合計:7218万円(△4934万円)
積立状況
TOPIX連動:毎月5万円
先進国株式投信:毎月5万円
累積積立投資額:2284万円
【コラム】子育てにまつわる給付と無償化
物語の中では、主人公の第1子が高校3年生になった2024年度から、授業料無償化の対象になった、という場面がありました。子育てに関する給付や無償化の制度は、この20年間でめまぐるしく変わってきましたので、色々と混乱があります。そこで、現在の主要な制度がどうなっているかをご紹介しつつ、傾向と対策をみていきましょう。
最初に出産です。出産は、伝統的に病気ではないという扱いなので、何らかの合併症がある場合を除くと健康保険が適用されず、自費診療になります。費用は住んでいる地域にもよりますが、50万円以上が必要となることも少なくありません。他方で、これに対する支援策としては出産一時金という制度があります。物語の主人公に第1子が生まれたときは30万円でしたが、随時増額され、現在は50万円です。
なお、現在国では、出産費用の無償化に向けた検討がされています。これがどういう制度になるのかも、注目です。
次に育児休業給付金です。これは雇用保険による制度なので、自営業やフリーランスの人は残念ながら適用になりません。給付額は、休業に入る前の賃金を基礎に算出されます。以前は月給額の50%でしたが、現在は、出生直後又は産休明け直後の28日間は80%、これに続く通算180日までの間は67%、その後は50%となっていて、順次拡充されています。
3つ目は保育園関係です。2019年10月から、3歳以上の保育園・認定こども園・幼稚園の保育料等が所得制限なしに無償化されました。これは、国の制度です。また、東京都の場合、2023年10月から、第2子以降に限って0歳から3歳までの保育料等も無償化され、2025年9月からは、第1子も完全無償化となりました。しかし、東京都以外の多くの地域では、0歳から3歳までの保育料等は有料のままです。
4つ目は高校授業料です。2010年度、公立高校の授業料無償化や、私立高校の授業料に対する補助が、国の制度として導入されました。この時は所得制限はなかったのですが、その後、所得制限が導入されて制度が一時後退しました。この所得制限は、世帯年収910万円というもので、平均所得程度の男女が共働きをすると超えてしまう水準です。物語の家庭で第1子が高校に進学した時点では、この制限に引っかかっていました。ただ、東京都は2024年に所得制限なしに高校授業料を無償化したので、物語の家庭でも、第1子が高校3年になるときから、授業料無償化の恩恵を受けています。そして、2026年度以降、国の制度として高校授業料が無償化される見込みです。
一方で、紆余曲折を経た制度もあります。年少扶養控除と児童手当です。日本では、扶養家族に対して所得税や住民税の控除枠が設定される年少扶養控除がありました。しかし、民主党政権時代に、「控除から給付へ」というスローガンのもと、児童手当をこども手当と改称の上で充実し、かわりに年少扶養控除を廃止する、という制度改正がありました。これ自体はひとつの筋なのですが、自公政権に戻った後、こども手当の名称は再び児童手当となって額が減り、さらに所得制限が設けられました。他方で年少扶養控除は復活しませんでした。その後、2024年に児童手当の所得制限が撤廃され、給付額も増えましたが、この期間を通してみると、控除がなくなり、給付が減った期間が長く、負担が増加した子育て家庭が多くありました。
児童手当の経緯はやや例外的ですが、全体的にみれば、年とともに給付や無償化が拡大する方向にあります。しかし、これを物語の主人公におきかえてみると、高校の無償化は第1子の高校3年という最終段階でギリギリかすったものの、それ以外の制度はほとんど適用を逃しています。氷河期世代は、この面でも結構な割を食った世代といえるでしょう。ただ、そんな過酷な状況に常にさらされてきたからこそ、この主人公は投資に活路を見出したのかもしれません。
この物語はフィクションです。歴史的な事実として、固有名詞で触れられる企業もありますし、株価や指数などは現実の数字に即していますが、それらはいずれも、あくまで実在の企業等をモデルとして再構築したものに過ぎず、記載された内容が真実であることは保証しません。
物語内(コラムを含みます。以下同じ。)で紹介する銘柄や投資手法について推奨したり勧誘したりするものでないことはもちろん、投資そのものについて推奨する意図はありませんし、投資の結果を保証するものでもありません。投資判断はあくまでも各自の自己責任でお願いします。
この物語では、法律や税金の制度を紹介している部分があります。可能な限り正確を期しましたが、その正確性を保証することはできません。また、近年は制度改正のテンポが速いので、早晩、ここに書かれている法律や税制は、現実に適合しなくなることが見込まれます。そうした点を除いても、具体的な状況に対する法律や税制の適用について、筆者はその責任を負いません。その種の判断はあくまでも各自の自己責任で、そして、ご自身で判断が難しい問題については、弁護士や税理士、FPといった専門家への相談を強くお勧めします。




