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2023年度

 2023年度は、新型コロナウイルスが5類に移行するという話から始まった。実際のところは、1年くらい前から厳戒態勢は解かれていて、職場で感染者が出てもマスクをしていれば濃厚接触者とは見なされないなど、生活は平常に戻りつつあった。ただ、それでも家庭内で感染者が出ると隔離対象にはなってしまうので、それもなくなった、という意味では大きな変化だった。


 そしてようやく、公共の場所でもマスクをしない人が多数派になった。これも諸外国では1年以上前にマスクをやめている国が多かったなか、マスクなしで同室に感染者が出ると濃厚接触者になってしまうという問題もあって、日本ではなかかマスクから離れられなかった。自粛警察みたいな人も相変わらずいたので、マスクをしていないと外を歩けないという感じが強かったけれど、これも徐々になくなっていった。


 コロナの影響が薄まっていくなかで、僕の会社では長距離の人事異動が再び増え始めていた。年初の人事面談は、当然、そういう話になる。しかし、ここでの僕の答えは、昇格する妻を支えるため、第2子が高校を卒業するまでの間は通勤可能圏内での勤務を希望、というものだった。以前なら、それでも有無を言わせない異動辞令が出たりもしていたが、新型コロナを経て、また、意に反した長距離の異動の存在が新卒採用上マイナスになるという時代の変化もあって、こうした希望も通りやすくなっていた。


 他方、出世の道を歩み始めた妻の生活は、大変ながらも充実しているようだった。コロナが落ち着いてきたこともあり、夜の会合が復活しつつあるタイミングであり、また、大きな会議や時差のあるオンラインミーティング、そして時には海外出張と、慣れるまでは大変そうだ。でも、うちの場合は僕が子ども達の(ついでに自分たち夫婦の分も)弁当は作っているし、夕食も前日夜か当日朝に仕込みや作り置きをしているので、掃除の頻度が落ちたことを除けば家庭生活に大きな影響はない。何より、子育てで色々セーブしていた分を解き放った面もあるようで、やりがいを感じているようだった。


 そんな姿を見て育つこども達の未来は、どんな感じなのだろう、などと思う。妙なプライドや固定観念に意味がないことは十分伝わっていると思うので、あとは、時代の変化を含めた選択だろう。上の子も高校2年生になったから、そろそろお金との付き合い方なども手ほどきしないといけない。学校でのファイナンシャルリテラシーに関する教育が始まったとはいっても、この分野ほど一般論と実践の違いが、特に心理的な面で大きい分野も少ないので、そちらの姿も、少しずつは見せてあげないと、などと思いながら、子育てが最終コーナーを回ってきたことを感じるのだった。


 そして、そんな我が家のファイナンシャルな状態はといえば、ロシアのウクライナ侵攻や、それに伴うエネルギー価格の高騰が、家計に重くのしかかり始めていた。イスラエルのガザ侵攻のような、世界の今後を憂慮させるような事態も起きた。こうした情勢の中で、いよいよインフレが不可避だという雰囲気になり、いろいろなものの値上げが続く。しかし、昇格した妻はともかく、僕の給料は特に変化がないので、物価に収入が追いつかない状態になりつつあった。


 他方で投資成績は、日本株式、海外株式ともに優秀だった。長年にわたって投じた元本に対する利益率は150%を超え、その時価は総額で5000万円を超えた。これとは別に2000万円以上の貯金もある。2011年の時点で、家を買う代わりに投資を積もうという選択をしたけれど、もしあのとき、家を買ってローンを返し続けた場合と比較しても、遜色のないバランスシートにはなっていた。


 共働きによる収入と会社の家賃補助のインパクトが大きいといえば大きいけれど、家を買った場合の住宅ローン減税と同程度のインパクトだと思えば、結局持ち家でも賃貸でも経済学的にはあまり違わないというのが実証されたのかもしれない。家の購入とローンの返済いう不動産投資と、家を購入しないで有価証券を積立てる投資は、どちらもコツコツと資金を拠出するタイプの投資には違いない。もちろん、投資は短期的に損失を出したりもするので、大数としてみたときの話ではあるものの、それが実証されたのは心強かった。



【家計と資産の概要】2024年3月

 年度末の時点での家計と資産の状況です。


 収入の部

  夫

 月収:49万円

   手取:37万円

   年収:800万円

 月収:58万円

   手取:43万円

 年収:880万円


 貯金の部

  貯金:2130万円


 資産の部

  株式

   31万円

  投資信託

   日本株式:2038万円(△946万円)

   世界株式:3924万円(△2852万円)

   投信合計:5961万円(△3798万円)


 積立状況

   TOPIX連動:毎月5万円

   先進国株式投信:毎月5万円

   累積積立投資額:2164万円 



【コラム】人手不足の時代 

 日本は少子高齢化が急激に進む社会です。このことは、1990年代に既に指摘されていて、エンゼルプランなんていう、おとぎ話のような名前の政策が実際に策定されたりもしました。しかし、その内容は実際に子どもの数を増やすには全く不十分なもので、しかも、若者が就職氷河期に直撃されたため、結婚や子育てどころではない、という現実を覆すことはできませんでした。


 ただ、この頃の少子高齢化の問題は、どちらかといえば、将来の年金の支え手が不足するとか、税収が減少して国が立ち行かなくなるといった、国の将来を憂うる話としてとらえられていました。逆に言うと、国ぐらいしか、このような超長期の問題を認識して対応していく必要性について認識していなかったのです。


 そして、その後も少子化は続きましたが、少なくとも2010年頃までは、企業の採用の現場で若い人材が不足していて困る、というような現実的な問題はそれほど生じていませんでした。しかし、2010年代に入ると、まず、建築現場のような若い労働力を特に必要とする業種で、人材の不足がいわれるようになりました。折からの資材価格の高騰と相まって、多くの大型建築プロジェクトが延期や中止、予算の高騰といった問題に見舞われました。さらに、2024年問題といわれた労働時間に対する規制の強化もあり、今もその影響は拡大しています。


 そうした現場系の採用難に遅れること数年、大卒の職場でも、同じようなことが起きています。こちらはもう少し構造が複雑で、そもそも2020年台に定年を迎える世代、つまりバブル前後に大量採用した人たちが、ちょうど役職定年や定年を迎える一方、就職氷河期に極端に採用を絞ったために30代半ばから40代の人員が少ないという問題も絡んでいます。このような状態なので、企業を維持するためには若者も中途採用者も、とにかくそれなりの人を採らなければ回らないのですが、肝心の若者の数が減っているので、優秀な人から争奪戦になっていくのです。


 というわけで、今の若者は、新しい時代の「金の卵」になっています。新人の採用競争が激化する中では、当然、待遇を上げなければ良い人は応募してきません。ところが、新卒者の待遇を上げると、それに比例して2年目や3年目の待遇も上げないと、後輩の方が給料が高いという状態になり、先輩の離職を招きかねません。そんなわけで、ギリギリ給料が逆転しない程度に調整しながら、初任給を引き上げる、ということを、多くの企業が行いました。


 ただ、この解決策では、中堅以上の社員はあまり報われません。ことは市場原理なので、待遇を上げないと採用が困難になるとか、離職されてしまうとかといった事情がなければ、待遇を上げる必要がないからです。そして、今の中堅以上というのは、要するに氷河期世代です。氷河期世代は、このあたりを非常にドライにとらえて転職を繰り返す人と、せっかくあの時代に就職できたのだからもう冒険は懲り懲りだという人に分かれます。業界や会社によってこの人数の比が結構違うので、この違いが、業界ごと、会社ごとの賃上げに対する姿勢の違いにもつながってきます。


 物語の主人公は、この2つのモデルのちょうど中間です。就職や身分に関する冒険については懲り懲りだと思っていますが、一方で、何の冒険もしなければ果実がないことも分かっています。だから、仕事とは別の、投資の世界で冒険をしているわけです。ただ、この2つの冒険は、どちらも冒険でありながら、その毛色はかなり異なります。転職を繰り返す人生は非常に個別性が高くて、その個人のキャラクターなどにも影響される再現性が低いものですが、積立投資は理論に基づいた冒険だからです。これは、どちらが良いというわけではありません。そういう社会の構造を認識した上で、向いている道、納得できる道を自分で選ぶということだろうと思います。


 ここにきて、少子高齢化という国や社会の課題が、ついに日常の社会経済の課題として降りてきました。この先もこの動きは止まらないでしょうから、若い皆さんには、ぜひそのアドバンテージをいかして、自分に有利な道を開拓されることを期待します。

 この物語はフィクションです。歴史的な事実として、固有名詞で触れられる企業もありますし、株価や指数などは現実の数字に即していますが、それらはいずれも、あくまで実在の企業等をモデルとして再構築したものに過ぎず、記載された内容が真実であることは保証しません。


 物語内(コラムを含みます。以下同じ。)で紹介する銘柄や投資手法について推奨したり勧誘したりするものでないことはもちろん、投資そのものについて推奨する意図はありませんし、投資の結果を保証するものでもありません。投資判断はあくまでも各自の自己責任でお願いします。


 この物語では、法律や税金の制度を紹介している部分があります。可能な限り正確を期しましたが、その正確性を保証することはできません。また、近年は制度改正のテンポが速いので、早晩、ここに書かれている法律や税制は、現実に適合しなくなることが見込まれます。そうした点を除いても、具体的な状況に対する法律や税制の適用について、筆者はその責任を負いません。その種の判断はあくまでも各自の自己責任で、そして、ご自身で判断が難しい問題については、弁護士や税理士、FPといった専門家への相談を強くお勧めします。

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