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2022年度

 2022年度は、上の子が高校に、下の子が中学に、それぞれ進学した年だった。中学受験はしない、という方針だったので上の子の高校入試にはかなりヒヤヒヤしたものの、終わってみれば第一志望に合格していて、この学校であればこの先の大学進学を考えても問題はないだろうということで安堵した。その姿を見ていた下の子も発奮したようで、中学入学後はよく頑張っている。これは、良い傾向だった。


 一方で、相変わらずなものもある。新型コロナウルスの感染拡大からもはや3年目、ようやく日常は通常モードになり始めたものの、それでもまだ、日本ではマスク着用が続いていた。感染した場合の事実上の制限は大分少なくなってきていたものの、いまだに感染症予防法上は2類感染症という扱いだったし、まだまだ人の移動もコロナ前には戻っていなかった。何しろ、ゴールデンウィークの旅行で飛行機の特典航空券が取れるぐらいだったのだから、本当にいつまで続くのだろうという感じだった。


 とはいえ、多くの人がいつまで続くのだろうということを感じるようにもなっていたので、何かきっかけがあれば、元に戻っていくのではないかという兆しを感じたのもこの頃だった。そうなってみると、テレワークの快適さも捨てがたいし、どちらがいいのだろう、というようなことが頭をよぎる、そんな時期だった。


 経済情勢という意味では、2022年度は、あまり株価が冴えない1年だった。東証株価指数(TOPIX)の大納会の終値は、大初会の初値を下回ってしまったし、先進国株式の指数も特に夏以降は伸び悩んでいた。その要因は、ロシアのウクライナ侵攻。ウクライナ情勢そのものの不透明さに加えて、天然ガスの主要産出国であるロシアに各国が経済制裁をかけたためにエネルギー価格が急上昇し、経済を圧迫した。せっかく新型コロナウイルスの暗い影から立ち直りかけていた世界に、新しい影が落ちたのだった。


 そして、ロシアへの経済制裁の影響が最も大きく表れたのが、ロシア株式への投資を伴う投資信託だった。投資信託の中には、そもそもロシアの株式指数を対象にしたようなものもあり、こうした投資信託の中には強制償還になってしまったものも出た。そこまで行かなくても、21世紀になってから流行したいわゆるBRICS投資をテーマにするような投資信託では、その一角のロシアの株式が取引不能になった影響は大きかった。


 世界に分散した投資であっても、そもそも1国分が丸ごと蒸発してしまうような状態になると、ある程度の影響は避けられない。僕のポートフォリオは、特に何も考えずに日本株式と日本以外の先進国株式が半々、というものだから、このときの経済制裁の影響を直接は受けていない。けれど、ロシア国内でマクドナルドが撤退するとか、間接的な影響は多分にある。こうした観点からも、自分と世界がつながっているのだなと、実感したのだった。


 そんな中、我が家では1つの大きな転機があった。妻が上級管理職への昇格を打診されたのだ。もともと妻の会社は、インフラ系のB2B企業で、しかも全国にたくさんの支店があるような類いの会社ではない。また、折からの女性活躍という方向性もあって、遠距離転勤などの間接差別になりかねない昇格要件を撤廃したという。ここで昇格すると、この先は企業幹部としての道を歩むことが期待されている、ということだった。


 この話を聞いて、僕は絶対に受けるべきだ、とアドバイスした。子ども達はもう中学生以上で、弁当を持たせて学校に行けば、返ってくるのは日が暮れる頃。どうしても都合がつかないなら、お金を渡しておけば買い食いも外食もできる。小学生の頃のような心配は、もういらないところまで、我が家は来ていた。幸い、僕は一通りの家事はできるし、料理に至っては子ども達の3食をほぼ全て賄ってきた実績がある。今も子どもたちの弁当は僕が作っているので、何も困ることはない。


 そんな僕に、彼女は言う。もし、あなたが転勤になったらどうするのか、と。それに対する答えは明確だった。転勤しなければ昇格できないような会社で、無理に昇格を目指すことはない。幸い我が家の資産は十分積み上がっているし、無理に昇格を目指して単身赴任なんかをしても、その間の出費を埋め戻すだけで何年もかかる。それなら、無理せず今のまま行けば、それでいいのではないか、と。


 こういうと、理解のある旦那のようでもあるけれど、僕の本心は少し違っていた。


 正直なところ、この頃になると、もう自分の昇格の最終地点が、一番頑張ってどのくらいかは、見えていた。そしてそれが、そこまで高い地位でないことも。それなのに、遠距離転勤をしないと昇格ができないような会社で、単身赴任に耐えてがんばってみたところで、本当に負担に見合う将来があるのか、疑問に感じていた。


 しかも、世の中は女性活用の時代である。同じ能力なら、転勤等の条件については多少優遇しても女性を取り立てるというご時世、夫婦の中で取り立てられやすい方が昇格して家庭を引っ張っていた方が、結果的に負担は少なく、実入りは多く、合理的だ。だから、これでいいと思ったのだ。


 そんな大きな転機を迎えつつ、不穏な世界情勢はそのままで、2022年度は終わっていった。



【家計と資産の概要】2023年3月

 年度末の時点での家計と資産の状況です。


 収入の部

  夫

 月収:49万円

   手取:37万円

   年収:780万円

 月収:55万円

   手取:41万円

 年収:860万円


 貯金の部

  貯金:1950万円


 資産の部

  株式

   28万円

  投資信託

   日本株式:1574万円(△542万円)

   世界株式:2918万円(△1907万円)

   投信合計:4492万円(△2248万円)


 積立状況

   TOPIX連動:毎月5万円

   先進国株式投信:毎月5万円

   累積積立投資額:2044万円 



【コラム】いわゆる「女性枠」について

 物語の主人公は、妻の昇進を喜び、全力で支える道を選びました。これは、必ずしも多数派ではないかもしれません。しかし、この物語の主人公にとっては、最適な選択でした。いわゆる女性枠は、男性にとって競争を歪める存在のようにみられて、ときに嫌悪されたりもしますが、必ずしもそうとは限りません。


 まず、夫婦共働きで妻の側が出世の道を進むということは、家族全体としてみれば何も悪いことではありません。世帯所得は増えますし、男性が出世街道を驀進する場合と違って、遠距離転勤や勤務時間の点で女性ならではの配慮を受けられる可能性もあります。そうすると、男性側が出世を選択するよりも、家庭全体としては有利な状況になることもあるわけです。唯一障壁があるとすれば、男性のプライドと女性の遠慮ですが、この物語の家庭は、そうした心情的なものよりも、実利をとったといえるでしょう。長年にわたる投資の経験が、プライドなど何の得にもならないということを、得心させたのかもしれません。


 実は同様のことは、様々な「女性枠」についても妥当します。


 たとえば、東京工業大学(今の東京科学大学)が入試に女性枠を導入したことが大きなニュースになりました。総定員が変わらないとすると、東京工業大学を目指していた男性受験生にとっては、女性枠の分だけ定員が減るので、不利になります。当然不満の声もありました。


 しかし、少し視点をかえて、たとえば東京大学や一橋大学を受験する男性から見てみたらどうでしょうか。優秀な女性が、女性枠があるのならといって東京工業大学を目指すことになれば、その分、他の大学を目指す受験生の競争は緩和されます。そこに利を得る機会だって、あるかもしれません。


 逆に、女性枠があるからということで、その枠を目指して女性の志願者が一定以上に増えると、結局、その枠を目指した女性同士で共倒れになってしまう、ということだってあり得ます。女性枠が本当に女性に有利なのか、といえばそうとも限らないわけです。そういう共倒れを見越して、あえて女性枠のない大学を目指す、という女性がいても、おかしくはありません。


 このように、世の中で展開される政策は、その直接の効果とは別に、様々な波及効果があります。そして、その波のなかには、市場の歪みとでもいうべき、漁夫の利的な実利を得られる機会につながるものも含まれるのです。このような人為的に作られる歪みについては、不公正であるとの批判もつきまとうでしょう。そして、そうした批判には一理があることも少なくありません。しかし、小賢しいようですが、真正面から何かを批判をして誤りを正すよりも、その歪みをうまく利用した方が、結局利益になることも少なくありません。


 そうした歪みをすべて見切って行動することは簡単なことではありません。しかし、少なくとも短絡的に、誰かが優遇されているからズルいとか、自分が損をしているとかというようなものではありません。そもそも人生の満足度を高めてくれるのは、そうした人と比べた何かではなくて、自分の絶対的なよりどころであることが多いでしょう。


 物語の主人公は、20年に及ぶ投資の経験を通じて、そうしたことを体験的に会得してきたようです。だからこそ、妻の出世を喜び、サポートに回ることを即決したのだろうと思います。そして、快くそのような選択をすることが、実は、実利的にも一番大きなリターンがあるということも、きっと体感的にわかっていたのでしょう。これからの時代は、そうした柔軟性がますます必要になるのかもしれません。

 この物語はフィクションです。歴史的な事実として、固有名詞で触れられる企業もありますし、株価や指数などは現実の数字に即していますが、それらはいずれも、あくまで実在の企業等をモデルとして再構築したものに過ぎず、記載された内容が真実であることは保証しません。


 物語内(コラムを含みます。以下同じ。)で紹介する銘柄や投資手法について推奨したり勧誘したりするものでないことはもちろん、投資そのものについて推奨する意図はありませんし、投資の結果を保証するものでもありません。投資判断はあくまでも各自の自己責任でお願いします。


 この物語では、法律や税金の制度を紹介している部分があります。可能な限り正確を期しましたが、その正確性を保証することはできません。また、近年は制度改正のテンポが速いので、早晩、ここに書かれている法律や税制は、現実に適合しなくなることが見込まれます。そうした点を除いても、具体的な状況に対する法律や税制の適用について、筆者はその責任を負いません。その種の判断はあくまでも各自の自己責任で、そして、ご自身で判断が難しい問題については、弁護士や税理士、FPといった専門家への相談を強くお勧めします。

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