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2017年度

 2017年度も株式市場は堅調で、この年、ついに積立投資の含み益が1000万円を突破した。評価額がプラスに転じたのが2012年の後半だったことを考えると、わずか5年でとても遠くまで来たのだなと思う。子ども達も小学校6年生と3年生。習い事にも1人で行くようになり、物理的に手がかかる時期は過ぎようとしていた。


 そんな年度初めの上司との面談で、僕は今後のキャリアをどうするか、ターニングポイントとなる決断を迫られる。


 背景として、僕の会社の総合職は、入社からほぼ一貫して本社勤務を続ける一握りのエリート、それこそ同期の中で三傑とか四天王とかと呼ばれるような役員候補以外は、支店の課長、本社や大規模支社の課長代理を務めた後、地方の小さめの支店での支店長を経て、本社の課長、支社長、と出世していく。この途中で、子会社に出向する人もいるが、これも、片道切符と往復切符がある。初級管理職以降はこうしてふるいにかけられる。


 では、本社にいるエリートが羨ましいかというと、そうでもない。たしかに出世のペースは早く、ボーナスも高いのだけど、何しろ激務で家庭を顧みる余裕がない。それに、ボーナスが高いといっても、同期の間で倍以上の収入差になるわけでもなく、累進課税を考慮すると、僕ぐらいの所得で2馬力の方が、結局、家庭の総手取額は高かったりする。


 なので僕は、そこまでしゃかりきに働くわけでもなく、地道に成果を出しながら、家庭生活との両立を図るという形でここまで来ていた。しかし、ここから先、出世の道を一歩進めるなら、ここらで地方の支店に出なければいけなかった。でも、下の子は手がかからなくなってきたとはいえ、まだ小学3年生。せめて下の子が中学校に入るまでは、家庭優先で行きたい。


 しかも幸いなことに、このところ積立投資の含み益は十分に拡大していて、貯金も順調に増加しているので、この先、子ども達が高校、大学と進学してもおそらく経済的に問題がないといえる状況になっていた。こうなると、無理に出世を目指すより、ワークの面では現状でできる最大限の貢献をしつつ、ライフの面では家族との時間を大切にするという在り方を、戦略的にとることにもためらいがなくなる。


 というわけで、いつまでも現状でいられるわけでないことは十分理解していると伝えつつ、あと3年は関東近辺での勤務を続けたいという意向を伝えた。この時点では、この希望が通るかどうかは分からない。でも、結果的には、このとき地方勤務を承諾しなくて本当によかった。それを思い知るのは、2年後のことになる。



【家計と資産の概要】2018年3月

 年度末の時点での家計と資産の状況です。


 収入の部

  夫

 月収:47万円

   手取:36万円

   年収:760万円

 月収:48万円

   手取:37万円

 年収:780万円


 貯金の部

  貯金:1390万円


 資産の部

  株式

   40万円

  投資信託

   日本株式:1069万円(△402万円)

   世界株式:1326万円(△679万円)

   投信合計:2395万円(△1081万円)


 積立状況

   TOPIX連動:毎月5万円

   先進国株式投信:毎月5万円

   累積積立投資額:1314万円



【コラム】単身赴任

 世界の先進国のなかで単身赴任という形での人事異動があるのは日本ぐらいだといわれます。では、単身赴任ありの日本の人事制度は不合理なのでしょうか。実は、そうとも言い切れない部分があります。


 日本では、解雇の規制が非常に強いといわれています。法律上は、客観的に合理的で、社会的に相当な理由がない解雇をしてはいけない、とだけされていて、それ自体は当然のことのようにも見えます。しかし、実際にこれが裁判で問題になると、客観的に合理的であるとか、社会的に相当であるとかといったハードルがかなり高いという状況が長らく続いてきました。


 この主要な理由は、終身雇用と一家の大黒柱という、まさに昭和の時代の働き方にあります。終身雇用制のもとで、夫が会社で働いて一家の収入を稼ぎ、妻が家事と育児を担当するというモデルでは、夫の失業は一家が路頭に迷うことに直結します。それはあまりに過酷です。そのような過酷さを補うだけの合理性や相当性がないような解雇は駄目だ、というのが裁判での判断基準になっていたのです。


 ただ、解雇ができないとすると、例えば会社が部門を縮小するような場合、そこにいる人に別な場所で働いてもらわなければいけません。そこで、解雇に対する規制が厳しいかわりに、人事異動や転勤については、よほどのことがない限り会社の人事権を優先する、という考え方が取り入れられてきました。


 今の日本の判例は、解雇を制限するという意味では会社に対して厳しく、異動について人事権を尊重するという意味では労働者に厳しいという、2つの要素をバランスさせる観点からできあがっているといえるでしょう。


 これ自体は、会社員と専業主婦、そして子どもという世帯にはそれほど違和感なくマッチします。子どもが中学生以下の場合は家族で引っ越せばいいわけですし、子どもが高校生以上になって就学上の理由から転居が難しくなれば、夫だけが単身赴任しても、その時点では子にそこまでの手間もかからず、それほど問題にはならないからです。そういうわけで、単身赴任が生じることを前提にした単身赴任手当の制度が整備されているような会社も少なくないどころか、むしろこれが普通だという感覚でした。


 しかし、夫婦共働きということになると、この前提条件が崩れます。そもそも夫婦が別の会社で共働きをしている場合、同時に同じ地域に赴任できるとは限らず、遠距離異動は単身赴任に直結します。しかもそのとき、子どもの年齢が保育園児や小学生ということになると、単身赴任元に遺された側の配偶者は、子育てを一手に引き受けなければならず、非常に大きな負担になります。


 この負担は、単身赴任元に残った側の配偶者だけにかかるわけではありません。このような状況におかれた配偶者は、確実に仕事をセーブします。残業などできませんし、子どもの病気や、学校行事などで休まなければならないことも増えます。これは、残された側の配偶者が務める会社が、その労働力を十分活用できない状況を生み出します。


 しかしそうなると、単身赴任を命じた会社は、単身赴任させた社員の労働力を120%活用できるのに、単身赴任を命じられた人の配偶者が所属している会社は、大幅な戦力ダウンを甘受しなければならない、ということになります。つまり、自社の社員に単身赴任を命じることは、自社の利益を最大化する一方で、他社に迷惑をかける、という形になるのです。逆に、そのような会社は、他社からそのような迷惑をかけられても文句はいえません。


 これを、迷惑はお互い様だと考えるのか、そういうことならお互い迷惑をかけないようにしようと考えるのかは、企業風土の違いも大きいのだろうと思います。しかし、単身赴任を国全体の経済の問題として見たときに、実は効率が悪いのではないかということが、最近は意識されてきています。物語の時代には、まだまだ昔の感覚で単身赴任が命じられることが一般的でしたが、これからも少しずつ、時代は変わっていくのかもしれません。

 この物語はフィクションです。歴史的な事実として、固有名詞で触れられる企業もありますし、株価や指数などは現実の数字に即していますが、それらはいずれも、あくまで実在の企業等をモデルとして再構築したものに過ぎず、記載された内容が真実であることは保証しません。


 物語内(コラムを含みます。以下同じ。)で紹介する銘柄や投資手法について推奨したり勧誘したりするものでないことはもちろん、投資そのものについて推奨する意図はありませんし、投資の結果を保証するものでもありません。投資判断はあくまでも各自の自己責任でお願いします。


 この物語では、法律や税金の制度を紹介している部分があります。可能な限り正確を期しましたが、その正確性を保証することはできません。また、近年は制度改正のテンポが速いので、早晩、ここに書かれている法律や税制は、現実に適合しなくなることが見込まれます。そうした点を除いても、具体的な状況に対する法律や税制の適用について、筆者はその責任を負いません。その種の判断はあくまでも各自の自己責任で、そして、ご自身で判断が難しい問題については、弁護士や税理士、FPといった専門家への相談を強くお勧めします。

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