2016年度
2016年度、不惑を迎えた年は、全体でみると堅調な相場推移だった。下の子の小学校での生活も2年目になって安定し、自分自身も、不惑を迎えて会社の中では中堅どころという立ち位置を固めつつあった。
ただ、全体として堅調だったこの年の相場は、実際には小刻みに揺れた。4月の熊本地震では国内株式が一時急落したし、6月にはBrexit、そして、11月には第一期のトランプ大統領の当選が決まるなど、社会や政治の分野では非常に大きな出来事が相次ぎ、そのたびに株価が急落する、ということを繰り返したのだ。
でも、この種の急落は回復も早く、熊本地震とBrexitは2か月もすると何事もなかったかのようだった。トランプ大統領に至っては、開票中に株価が急落したものの、当選が確定したらその後は一本調子の上げ相場になるという、何ともよく分からない動き方をした。
この頃、我が家の積立投資は利益が積み上がり、含み益が65%に達していた。ここまでになると、それこそ株価が4割以上下げるといった場面にならないと、評価額がマイナスになることはない。他方で、これらの3つの、それなりにインパクトのあった下げイベントでの下げ幅は、せいぜい直近高値の5%~10%程度。しかも、熊本地震は日本限定の、Brexitは主たるインパクトがヨーロッパの、ある意味地域限定イベントで、分散投資をしていると全体的な下落率はさらにマイルドになる。もはや積立元本を評価額が下回ることは、それこそリーマンショック級の危機が起こらない限りなさそうだという状態になっていた。
しかしそうなると、相場が急落して保有資産の評価額がマイナスになったら、積立額を倍増して迎え撃つという、当初の戦略が適用される場面がほぼなくなってしまう。夫婦共に昇給昇格してきているし、子の中学受験を見送ったこともあり、旅行の出費を多少増やしてもまだ、貯蓄余力はある。この余力を、適切な下げ相場で投じた方がよいのではないか。
夫婦でそのような話し合いをし、今後は、総資産額ベースで直近高値を5%下回ったら、投資額を5割増しにする、というルールを入れることにした。実際問題として、子ども達が小学生でそこまでお金がかからない今、毎月15万円程度の投資を継続することは全く問題がない。ただ、投資額を増やすきっかけとして、5%の下落から直近高値の克服までという限定を入れて、少し山っ気のある形で積み立てを続けていこう、ということになった。
【家計と資産の概要】2017年3月
年度末の時点での家計と資産の状況です。
収入の部
夫
月収:46万円
手取:35万円
年収:750万円
妻
月収:46万円
手取:35万円
年収:760万円
貯金の部
貯金:1230万円
資産の部
株式
34万円
投資信託
日本株式:900万円(△293万円)
世界株式:1074万円(△487万円)
投信合計:1974万円(△780万円)
積立状況
TOPIX連動:毎月5万円
先進国株式投信:毎月5万円
累積積立投資額:1194万円
【コラム】世界情勢と株価
株価は、大きくいえば世界情勢の影響を受けますが、その程度は場面によりけりです。リーマンショックのような、それ自体が経済的なイベントだと、ダイレクトに株価に響いてきます。日本のバブル崩壊も、同様にとらえてよいと思います。
他方で、自然災害や政治的なイベントに関しては、反応が様々になります。
まず、自然災害は基本的に地域限定です。東日本大震災レベルの大災害でも、壊滅的な被害を受けるのは日本の47都道府県のうち3県で、広域的な影響という観点でも日本の半分くらい、というのが実際でしょう。となると、実は世界の株価への影響という意味では、それほどのインパクトにはならないのです。物語の本文で出てきた熊本地震は、阿蘇地方を中心に熊本県に深刻な影響をもたらしましたが、その傷は熊本県にほぼ限定されていて、日本の株価も比較的すぐに持ち直しました。首都直下地震は少し違った次元のインパクトがあるかもしれませんが、それ以外だと実は限定的な影響で終わることの方が多そうです。
Brexitのようなイベントだと、関係する国も複数ありますし、様々な調整から広域的に株価が下落します。ただ、実際には人々は変わらず生活しているわけで、ここで問題になるのは、たとえば、EU各国からイギリスに出稼ぎに来ていた人の在留資格が怪しくなるとか、イギリスとEUの間で関税が復活するとか、あるいはイギリスの企業がヨーロッパ本土で営業する場合の免許の扱いが変わるとかといった類いのことです。つまり、一通りの調整がついてしまえば、人々の生活、そして経済は、意外と何事もなかったかのように回っていきます。
トランプ大統領の例は少し特殊ですが、大きな選挙の後に相場が大きく動くこと自体は、よくあることです。といっても、よほど極端な政策が現実に実行されない限り、その影響は限定的なものになります。ただ問題は、本当に極端な政策が実行されると、そのインパクトが甚大なものになりかねない、ということです。
2025年の第二次トランプ政権による相互関税がまさにそれで、この問題が表面化した2025年春、株価は一時、10%を超えて急落しました。市場は不確実性を嫌うので、何をするか分からない為政者の気まぐれは、相場に非常に大きな影響を与えるのです。また、第一次トランプ政権が誕生した2016年のアメリカ大統領選挙以降、各国で、SNSを中心に陰謀論が蔓延したり、ポピュリスト候補者が当初の予想を超えた支持を集めて当選したりということが相次いでいます。こうした極端な主張や、極端な政策を訴える政治家の存在が、今後は株価という面でも大きなリスクファクターになっていくかもしれません。
これに対する確実な処方箋というものは、個人投資家という立場からは、実はありません。ただ、どんな相場が来ても狼狽もしなければ狂喜乱舞もせず、投資をルール化し、機械的に執行して積立てる、その心の強さが求められているのだと思います。
この物語はフィクションです。歴史的な事実として、固有名詞で触れられる企業もありますし、株価や指数などは現実の数字に即していますが、それらはいずれも、あくまで実在の企業等をモデルとして再構築したものに過ぎず、記載された内容が真実であることは保証しません。
物語内(コラムを含みます。以下同じ。)で紹介する銘柄や投資手法について推奨したり勧誘したりするものでないことはもちろん、投資そのものについて推奨する意図はありませんし、投資の結果を保証するものでもありません。投資判断はあくまでも各自の自己責任でお願いします。
この物語では、法律や税金の制度を紹介している部分があります。可能な限り正確を期しましたが、その正確性を保証することはできません。また、近年は制度改正のテンポが速いので、早晩、ここに書かれている法律や税制は、現実に適合しなくなることが見込まれます。そうした点を除いても、具体的な状況に対する法律や税制の適用について、筆者はその責任を負いません。その種の判断はあくまでも各自の自己責任で、そして、ご自身で判断が難しい問題については、弁護士や税理士、FPといった専門家への相談を強くお勧めします。




