2013年度
2013年度は、いわゆるアベノミクスが本格始動する年となった。
年度が替わる直前の3月、アメリカではダウ平均が史上最高値を更新し、リーマンショックから完全に立ち直った。日本の株式市場はまだまだだったけれど、日銀総裁に黒田氏が就任し、4月以降、黒田バズーカといわれる金融緩和策を実行に移していく。日米の株価ともに、年末に向けて上げ調子となり、我が家の積立投資もあれよあれよという間に、含み益が300万円を突破していた。
仕事の面でも、堅調な株価を背景にしてか業績が安定し、成果主義のボーナスも良い方向に作用した。リーマンショックから東日本大震災までの間の暗い世相がようやく晴れていくのを、多くの人が実感し始めた頃だった。そして、その雰囲気が景気を後押しする、これまで見たことがない循環が感じられた。
一方で、デフレからの脱却はまだまだだった。物が売れるようになるということと、値上げが可能であるということは、似ているようでいて全く違う。経済の明るい兆しを感じて財布の紐は緩んでも、それは、これまで買い控えていたものをこれまでの値段で買いたい、というような需要であることが多く、政府や日銀が掲げた物価目標はなかなか達成されなかった。そんな状態だから、給料が上がるわけでもない。まだまだ「景気は回復しつつあるのに、賃金や物価には反映されない」という、中途半端な状態から抜け出せていなかった。
僕のような個人投資家にとって、そんな2013年度最大のできごとは、2014年1月のNISA開始だった。この時点では5年の時限措置という何とも先の見通しがつきにくい制度ではあったものの、上げ相場の市場で株式譲渡益が非課税になるというNISAの存在感は際立っていた。我が家の場合、毎月の積立額でNISAの年間限度額をフルに使えるので、新規の積み立ては全てNISA口座で行うことにした。
生活の実感としては、相変わらず物価は安く、給料も横ばいだったので、家計が急に楽になったわけではない。ただ、妻も時短勤務と残業抑制を経て、ついに管理職の入り口に到達し、ここから先は夫婦で仕事を頑張っていくというステージに入った。子ども達も順調に学年が上がっているし、それだけでも十分なのかもしれない。
そして何より、株価の回復は、あの長い低迷の時代をようやく抜けたのだという実感を与えてくれた。
【家計と資産の概要】2014年3月
年度末の時点での家計と資産の状況です。
収入の部
夫
月収:44万円
手取:33万円
年収:700万円
妻
月収:43万円
手取:32万円
年収:680万円
貯金の部
貯金:770万円
資産の部
株式
22万円
投資信託
日本株式:573万円(△146万円)
世界株式:671万円(△264万円)
投信合計:1244万円(△410万円)
積立状況
TOPIX連動:毎月5万円
先進国株式投信:毎月5万円
累積積立投資額:834万円
【コラム】少額非課税投資制度(NISA)
2014年1月に導入されたNISAは、その後何度かの制度変更を経て、2024年に恒久化されました。過去の制度の変遷を詳しく知ってもあまり意味がないので、現在の制度について概観してみましょう。
まず、NISAの対象は、国内外の株式と投資信託です。「少額」と銘打ってはいますが、その最大保有上限は1800万円分ですから、これから投資デビューしようと考えている個人にとっては十分すぎるほどの枠があることになります。
この物語の主人公が2014年1月までに積立てた累積投資額は、元本ベースで約800万円です。リーマンショック以降の毎月10万円という投資額はかなり大きいように感じられますが、それでも、現在のNISAの枠でみれば、半分も使っていないという規模感になります。この調子で物語の積立てが進んでいったとき、累積投入額が1800万円を超えるのは2022年頃、主人公が47歳になる時期と見込まれますから、どれだけ長期の投資をイメージした制度なのかがお分かりいただけると思います。まして、夫婦だと枠は倍ですから、これを使い切るのは相当なものです。
より詳しくみていくと、NISAは2種類の枠からできており、成長投資枠(年間の購入上限240万円)と、つみたて投資枠(年間の購入上限120万円)があります。そして、両方の枠を合計した最大保有上限が1800万円ですが、このうち、成長投資枠は買付額ベースで1200万円までです。つまり、枠を全部使い切るには、買付額ベースで600万円分は積立投資によって積み上げなければなりません。
積立投資だけで1800万円の枠を使い切ろうとすると、毎年最大限の120万円を積立てても15年の年月がかかります。それだけの年月をかけて、じっくり長期投資をしましょう、というメッセージが、この制度自体から発せられているということなのでしょう。
ちなみに、NISAというのは、Nippon Individual Savings Accountの略とされています。最初にNipponがついているのは、これがISA(Individual Savings Account)の日本版、という意味で名付けられたからです。では、ISAはどこの国の制度かというと、イギリスです。ただし、イギリスのISAは、株式や投資信託に限定された制度ではなく、一定額までの貯金も、その対象としています(そもそもSavingsというのは貯金なのですから、名称自体から明らかですね)。
かつて日本では、利子や配当が非課税になる「マル優」という馴染み深い制度がありました。今では一般の人が使える制度ではなくなりましたが、貯金に手厚かった時代の象徴ともいえます。かわりに、名称に同じような源流をもつ、しかし、対象が投資に特化した制度が導入されたというのが、貯蓄から投資へという政策を反映しているといえるでしょう。
この物語はフィクションです。歴史的な事実として、固有名詞で触れられる企業もありますし、株価や指数などは現実の数字に即していますが、それらはいずれも、あくまで実在の企業等をモデルとして再構築したものに過ぎず、記載された内容が真実であることは保証しません。
物語内(コラムを含みます。以下同じ。)で紹介する銘柄や投資手法について推奨したり勧誘したりするものでないことはもちろん、投資そのものについて推奨する意図はありませんし、投資の結果を保証するものでもありません。投資判断はあくまでも各自の自己責任でお願いします。
この物語では、法律や税金の制度を紹介している部分があります。可能な限り正確を期しましたが、その正確性を保証することはできません。また、近年は制度改正のテンポが速いので、早晩、ここに書かれている法律や税制は、現実に適合しなくなることが見込まれます。そうした点を除いても、具体的な状況に対する法律や税制の適用について、筆者はその責任を負いません。その種の判断はあくまでも各自の自己責任で、そして、ご自身で判断が難しい問題については、弁護士や税理士、FPといった専門家への相談を強くお勧めします。




