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2012年度

 「○○支店 課長を命じる」


 社会人15年目の春、僕は課長に昇格した。といっても、支店の課長だから、本社でいえば課長代理で、管理職のほんの入り口だ。でも、就職氷河期に藁にもすがる思いで得た内定通知書から、ついにここまで来たのだと思うと感慨深かった。


 とはいえ、課長になったから何かが変わるのかというと、実はあまり変化がないのも現実だった。部署自体がそれほど大きくないので、部下といっても2人の係長と1人の主任、2人の若手といったところで、片手の指で足りるぐらい。自ら取引先とやりとりをすることも多く、実際のプレゼンには部下と共に赴く。でも、肩書きが変わるというのは不思議なもので、同じ仕事をしていても判断の重さが一段違って感じられた。


 昇格して収入面がどうなったのかというと、実はこれが、月給ベースではほとんど変わらなかった。というのは、僕の会社では管理職になると残業代が出なくなり、そのかわり、もともとの残業代に少し色を付けたぐらいの役職手当が出るので、収入が減ることもない一方で、それほど大きく増えるわけでもない。


 大きく変わるのはボーナスの方で、こちらは、業績連動ということでこれまでの倍近い金額になることもあれば、半減することもあるという、かなり変動の激しいものになった。この時期、成果主義が年々強化される流れになっていて、管理職以外も勤務評価によるボーナス査定がされていたものの、実際上は情実的なものもあって、それほど成果主義が貫徹されていたわけでもなかった。でも、管理職は厳密に数値の達成状況が問われる。仕事のステージが1つ変わったのだ、と実感する部分だった。


 そしてこの春、第1子が小学校に進学し、第2子は保育園の3歳児クラスに入った。この結果、毎月10万円近くかかっていた保育料が3万円程度にまで下がった。第1子の学童に費用が多少かかるものの、保育料に比べれば少額で、家計も一息つくことができた。この原資を使って週末に習い事を始めたり、子ども達の成長も、次の段階へと進んでいった。


 株式相場を見ると、長い低迷の時代を経て、ようやく日本株が上向き始めたのもこの頃だ。そして、先進国株式は一足先に上げ相場となり、円安の影響もあって、円建ての評価額は1年間で3割近くの上昇を遂げた。その結果、2012年の年末には、とうとう積立投資の損益がプラスに転じ、長い長い冬の時代が終わった。積立投資という仕組みは、結局こういう局面で効いてくるのだと、初めて実感した。


 家を買わないことにしたかわりに、積立投資の金額自体は毎月10万円で維持することになったが、あらゆる面で、ようやく生活に明るさが見えてきた、そんな1年だった。



【家計と資産の概要】2013年3月

 年度末の時点での家計と資産の状況です。


 収入の部

  夫

 月収:44万円

   手取:33万円

   年収:700万円

 月収:40万円(残業込)

   手取:31万円

 年収:640万円


 貯金の部

  貯金:620万円


 資産の部

  株式

   19万円

  投資信託

   日本株式:368万円(△1万円)

   世界株式:469万円(△122万円)

   投信合計:837万円(△123万円)


 積立状況

   TOPIX連動:毎月5万円

   先進国株式投信:毎月5万円

   累積積立投資額:714万円



【コラム】管理職と残業代、成果主義

 物語の会社では、管理職には残業代が出ない代わりに役職手当が出る、という給与体系でした。これは、実際の会社にもよくあるスタイルです。


 しかし、管理職に残業代が出ない、というのが制度的にOKなのかどうかは、実はかなりグレーです。法律上、残業代を払わなくてよいのは、「管理監督者」というごく一部の上級管理職だけとされています。支店の課長とか、本社で課長代理クラスというような初級管理職が管理監督者になるのかというと、厳密にはならないというのが、判例や行政解釈の正しい理解だと思います。


 とはいえ、会社の中で正面からこの問題を指摘するのも実際には難しいですし、役職手当も一定程度支給されるので、実態としては、役職手当を「固定残業代に近い性質の手当」と考えて折り合いをつけている人が大半でしょう。管理職になると残業代がつかなくなるために、かえって年収が下がる、というようなことがあると、管理職のなり手もなくなり会社としてもよくないでしょうから、そのあたりはうまく調整されているのだろうと思います。


 そして、物語の中では、管理職になった一番のインパクトとして、成果主義によるボーナスがありました。成果主義というと、頑張った分だけ報われるというようなプラスのイメージもありますが、当時の日本企業で成果主義というと、頑張った分が報われるというよりは、成果が上がらない場合に振り落とされるという側面が強いものでした。というのは、どんなに成果が上がっても上限は3割増止まりなのに、わずかに目標を達成できなかっただけでボーナスが半減する、というような、全体としてはコスト削減を強くイメージした、いわば負の成果主義が多かったためです。


 そんな成果主義は当然評判もよくないわけで、最近の成果主義はそのあたりがかなり修正されてきています。上位5%の成績限定といった制約は大きくとも、かなり高いインセンティブが得られる賃金制度を採用する会社も、実際に出てきています。


 新卒での就職のときは、ここまで目を配って条件を考えることはないかもしれません。しかし、昨今は終身雇用の制度がより揺らいでいて、転職も珍しくなくなってきています。また、いったん転職したあと、元の会社に戻るアラムナイ採用といった仕組みも、話題になっています。転職を考えるときは、こうした点までしっかり検討して、納得のいく会社で仕事をする、そういう時代になってきているのでしょう。

 この物語はフィクションです。歴史的な事実として、固有名詞で触れられる企業もありますし、株価や指数などは現実の数字に即していますが、それらはいずれも、あくまで実在の企業等をモデルとして再構築したものに過ぎず、記載された内容が真実であることは保証しません。


 物語内(コラムを含みます。以下同じ。)で紹介する銘柄や投資手法について推奨したり勧誘したりするものでないことはもちろん、投資そのものについて推奨する意図はありませんし、投資の結果を保証するものでもありません。投資判断はあくまでも各自の自己責任でお願いします。


 この物語では、法律や税金の制度を紹介している部分があります。可能な限り正確を期しましたが、その正確性を保証することはできません。また、近年は制度改正のテンポが速いので、早晩、ここに書かれている法律や税制は、現実に適合しなくなることが見込まれます。そうした点を除いても、具体的な状況に対する法律や税制の適用について、筆者はその責任を負いません。その種の判断はあくまでも各自の自己責任で、そして、ご自身で判断が難しい問題については、弁護士や税理士、FPといった専門家への相談を強くお勧めします。

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