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2011年度

 東日本大震災で幕を閉じた2010年度。その延長にある2011年度は、当然ながら震災の影が色濃く落ちていた。そんな中、我が家では兄弟加点で第2子も認可保育園に入ることができ、これで、熾烈を極めた保活を乗り切ることができた。ただ、認可保育園の保育料は世帯所得に応じて決まるので、保育料が安くなるということも特になく、相変わらず、毎月10万円近い保育料がかかっていた。


 株式相場も相変わらずの軟調で、東日本大震災を受けて日本株が下落傾向になったのはもちろん、先進国株式も特に上昇はしなかった。日本株の下落の影響を受けて、保有資産の評価損はさらに拡大し、リーマンショック後の2番底という様相になっていた。さて、この底相場はいつまで続くのだろう、そんなうんざりした気分になりつつ、我が家では、人生の次のステップをどうするかが課題になっていた。


 家、である。


 子どもも2人生まれて、家族構成はほぼ確定した。金利も安く、共働きならそれなりの金額のローンも通る。貯蓄もそれなりに積み上げた。そういう前提で、家を買うかどうか。東京なので、現実的にはマンションを購入するかどうかが、現実的な話題になる時期だった。


 ただ、この検討に大きな影を落としたのが、東日本大震災だった。首都圏のマンションで、東日本大震災による大規模損壊や機能不全を起こしたものは特になかった。ただそれは、東京の震度が5強止まりだったからで、これが震度6や7となったときにどうなるのか、というのは現実的な恐怖として検討対象になった。


 もうひとつの課題は、家族がこれ以上増えることはないにしても、減ることはある、という問題だった。僕は大学を卒業するまで実家で暮らしていたけれど、妻は大学進学と同時に上京して実家を出ていた。とすると、最短で第1子が大学進学するタイミング、つまり14年後には、4人が暮らせる家は必要なくなる。僕と同様大卒と共に家を出るにしても、その時期は18年後。一方で、想定されるローンは30年。さてこれで、4人が生活できる大きさの家を買うのは合理的なのだろうか。


 もちろん、その時が来たら家を売却するなり他に貸すなりして住み替える、ということもできる。ただ、その時に不動産価格がどうなっているのか、その流動性がどのくらいあるのか、といったことになると、余りに先のこと過ぎて読めない。検討は行き詰まった。


 持ち家か、賃貸か、これは答えの出ない論争の筆頭格だと思う。純粋に経済的に考えれば、賃貸は一定の期間その不動産を経済合理的な価格で借りる行為なので、どちらもトントンか、賃料に家主の利益が上乗せされる分だけ持ち家が若干有利、ということになるだろう。ただ、その持ち家の優位性は、住宅ローン金利で結局持って行かれる。だから、即金で買うのでなければおそらく理論的な優劣はない。


 一方で現実問題としては、保有している不動産に欠陥が見つかるとか、災害に見舞われるとか、そうしたリスクがヒットしたときに、回復困難な損害を被るかもしれないという問題をどう見るか、ということが課題になる。特に日本の場合、他国と違って地震のリスクが無視できない。そして我が家の場合、会社の家賃補助があるのでその分だけ賃貸が有利という要素もあった。


 というような検討の結果、この時点での我が家の決断としては、賃貸を継続することにした。そのかわり、今後相場が回復しても、毎月10万円の積立投資額を減額することはせず、その全額を市場に委ねることにした。不動産価格が上がるような局面では、おそらく株価も上がるので、そこでリスクをヘッジしようと考えたのだ。


 この決断が正しかったのかどうか、その答えは、10年以上の時を経てはじめて分かることになる。



【家計と資産の概要】2012年3月

 年度末の時点での家計と資産の状況です。


 収入の部

  夫

 月収:41万円(残業込み)

   手取:32万円

   年収:640万円

 月収:35万円(残業抑制)

   手取:28万円

 年収:490万円


 貯金の部

  貯金:460万円


 資産の部

  株式

   25万円

  投資信託

   日本株式:241万円(▲66万円)

   世界株式:269万円(▲18万円)

   投信合計:510万円(▲84万円)


 積立状況

   TOPIX連動:毎月5万円

   先進国株式投信:毎月5万円

   累積積立投資額:594万円



【コラム】為替と経済情勢

 物語の本文からは少し外れるのですが、2011年から2012年にかけては、今となっては最後の円高というべき、強烈な円高が進行した時期でもありました。


 東日本大震災で甚大なダメージを受けたことを考えれば、その分日本の国力が落ちて、円の価値が下がる、というのがわかりやすいイメージなのですが、そうはならなかったのです。その原因として指摘されたのが、日本が長年にわたって蓄積してきた海外資産です。


 日本人は、個人としてはあまり投資に積極的ではなく、投資をしているという人も日本株が中心で、海外資産への積極投資は最近になるまであまり話題になりませんでした。


 しかし、日本の企業は違います。そもそも製造業は、日本の製品を海外に輸出して儲ける、あるいは日本から海外に投資をして工場を建設し、そこで製造した製品を世界中に売って儲けるという構造です。また、日本人の多くが加入している生命保険も、保険会社が資産を運用して保険金の原資を確保しているので、これまた海外への投資が多くありました。


 このようなわけで、日本人は、自分では日本の銀行にお金を預け、生命保険に加入しているだけでしたが、そこから間接的に、世界中の実に多彩な資産を保有していたというのが実態です。


 さて、そんな日本が、東日本大震災の被害を受け、国内で復興に向けた資金を必要としたとき、何が起こるのか。海外に貯めていた資産を日本に戻したり、場合によっては海外資産を売却したりということが連想されます。そこで、円を買う流れができ、円高につながったといわれています。もちろん、実際に大規模に海外資産が売却されたわけではありません。しかし、市場は、そう連想した瞬間に動くのです。


 このときの円高は、1ドルが75円、1ユーロが100円といった極端なレベルにまで進んだので、海外旅行に行く人などは激安で買い物ができた、と喜んでいたものです。


 しかし今(2026年)は、1ドルが150円、1ユーロが170円といった具合ですから、為替だけでも日本から見た海外の物価は倍になってしまいました。しかも、その間海外では毎年インフレが続きましたから、当時の感覚からすると倍どころではないわけです。一方、日本が海外に保有する資産自体は、特に減少しませんでした。


 日本はすでに世界有数の対外純資産国であり、その規模は今後もしばらく減らないとみられています。海外に持つ資産を運用し、その利子や配当で豊かさを維持するという構図は、あながち非現実的な未来像ではありません。現に、公的年金(GPIF)などは、非常に大きな規模の対外資産を、株式や債券の形で保有しています。今後の日本は、海外に保有する資産を運用しながら、その利子や配当で豊かさを補う国へと、静かに姿を変えていくのかもしれません。

 この物語はフィクションです。歴史的な事実として、固有名詞で触れられる企業もありますし、株価や指数などは現実の数字に即していますが、それらはいずれも、あくまで実在の企業等をモデルとして再構築したものに過ぎず、記載された内容が真実であることは保証しません。


 物語内(コラムを含みます。以下同じ。)で紹介する銘柄や投資手法について推奨したり勧誘したりするものでないことはもちろん、投資そのものについて推奨する意図はありませんし、投資の結果を保証するものでもありません。投資判断はあくまでも各自の自己責任でお願いします。


 この物語では、法律や税金の制度を紹介している部分があります。可能な限り正確を期しましたが、その正確性を保証することはできません。また、近年は制度改正のテンポが速いので、早晩、ここに書かれている法律や税制は、現実に適合しなくなることが見込まれます。そうした点を除いても、具体的な状況に対する法律や税制の適用について、筆者はその責任を負いません。その種の判断はあくまでも各自の自己責任で、そして、ご自身で判断が難しい問題については、弁護士や税理士、FPといった専門家への相談を強くお勧めします。

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