2009年度
リーマンショックでどん底に落ちた株式市場は、2009年度も相変わらずだった。東証株価指数(TOPIX)は900前後の水準で推移し、暴落したりはしなかったものの、上がりもしなかった。ただ、先進国株式は多少なり上昇傾向で、リーマンショックの傷を少しずつ癒しつつあった。とはいえ、積立投資の収益は大幅にマイナスであり、闇の中に現金を投げ込んでいく感覚は続いていた。
そんな冴えない景気の中、我が家は2人目の子を迎えることになった。第1子のときと同様、妻が産休に続いて育休に入り、僕は仕事を継続する形になった。ただ、上の子の保育園については、僕が送りも迎えも担当することになった。そのため残業の余地は、第1子のときよりもさらに小さくなった。必然的に、残業代の減少幅も大きくなった。
収入が減少する中で、相場の底に対応した積立投資額の増額は続いていたので、ついに貯金を取り崩すことになった。相場の低迷と収入減が重なれば、本来なら積立投資を減額したくなるところだが、我が家はあくまで初志を貫いた。次年度には妻が復職するし、出費額も想定の範囲内だったので特に慌てることはない。第1子のときとは違って子育ての経験値も上がっていたし、色々な意味で淡々と過ごした1年間だった。
そんな中で、少しの変化を感じることもあった。それは政局。この年、衆議院議員の4年の任期が9月で終わるため、任期満了にせよ、その直前の解散にせよ、夏から秋の時期に衆議院の総選挙が行われることが確定していた。そして、7月に衆議院が解散され、総選挙では民主党が勝利し、政権が交代した。
民主党は、コンクリートから人へ、控除から給付へ、といったスローガンを掲げていた。どんなスローガンを掲げても、目下の経済情勢を好転させることはできそうにないと諦めていたが、第2子が生まれたばかりの我が家には、1つだけ、うれしい政策があった。子ども手当、である。少子高齢化がずっと問題になっていたこの日本で、ようやく子育て政策の目が向いたのかと、少しだけ、うれしい気持ちになったのだった。
【家計と資産の概要】2010年3月
年度末の時点での家計と資産の状況です。
収入の部
夫
月収:39万円(残業込み)
手取:30万円
年収:610万円
妻
月収:17万円(育児休業給付金)
手取:17万円
年収:230万円
貯金の部
貯金:390万円
資産の部
株式
27万円
投資信託
日本株式:159万円(▲28万円)
世界株式:153万円(▲14万円)
投信合計:312万円(▲42万円)
積立状況
TOPIX連動:毎月5万円
先進国株式投信:毎月5万円
累積積立投資額:354万円
【コラム】子育てに関する社会制度の充実
戦後の日本の福祉政策は、そのかなりの部分が高齢者を対象としたものでした。年金は、障害年金を除けばそのすべてが高齢者向けですし、医療保険も、実際に多くの医療費が必要になるのは高齢期なので、現役世代が高齢世代に仕送りをするという色彩が非常に強かったのです。そして、昭和の時代の日本は高齢者が少なく、現役世代の数が非常に多かったので、このような政策がうまくフィットしました。
その後、少子高齢化が進み、こうした仕送り的な制度は限界が見えてきます。年金の保険料率は上がり、健康保険も高齢者向けの部分が増え、現役世代の不満がたまり始めたのが、まさに2000年代初頭です。
ただ、高齢者を対象とした福祉が悪いのかというと、そうではありません。というのは、誰しも親がいるから生まれてくるわけで、自分が現役で一番お金を稼いでいる頃、だいたいその親は高齢者になっています。ここで、公的な年金や医療保険がなければ、個人として自分の親に仕送りをしなければいけない、というような話になります。でも、その年代の現役世代は同時に子育てをしていたり、場合によっては子が大学に進学して多額の学費がかかっていたりしますから、その時期に両方の負担を全部背負うのは、現実的に難しいのです。
そのため、20代から60代までの幅広い現役世代がお金を拠出して、高齢者に福祉給付をするという制度の大枠自体は、今でも妥当性を保ち続けています。
ただ、そうはいっても少子高齢化に対応した制度の調整は必要です。日本の場合、その調整が政治的に非常に困難でした。しかも、バブル崩壊後に長期のデフレに陥ったこともあって、果たしてこの社会保障制度は持続可能なのだろうか、という疑念が噴出することになったのです。この問題は、2026年現在も解消されていないといっていいでしょう。
他方で、少子化が深刻さを増すなかで、2009年の政権交代のあたりから、子どもに関する政策にもっとお金を投じようという動きが本格化してきました。これは、民主党が野党に転落して自民党が与党に返り咲いた後も、基本路線としては続いています。一方で政策の充実が図られ、他方で少子化がより一層進んだために、待機児童の問題は劇的に改善しましたし、保育園の無償化や、高校授業料の無償化、低所得世帯から大学に進学した子に対する給付型奨学金、学校給食の無償化など、矢継ぎ早に政策が充実されました。
こうした政策の充実は、最初は市町村レベル(給食無償化など)や都道府県レベル(高校授業料無償化など)で始まり、その後国政に反映されるという流れが多くありました。東京都に至っては、都民が東京都立大学に進学する場合の授業料を所得制限なく無償化するという、もはや異次元といってよいような政策まで実現しています。そのため、どこに住んでいるかによって受けられる給付が異なる、といった場面も少なからずあり、自治体間の格差がクローズアップされはじめたのもこの頃です。
特に、首都圏の東京都とそれ以外の県の差は大きく、県境の川を1本、わずか数百メートル渡るだけで、得られる子育て支援が全然違う、というようなことが常態化しました。子育てを見据えて住まいを考えるときは、こうした自治体ごとの違いにも目を向けることが、いまの時代にはますます重要になっています。
この物語はフィクションです。歴史的な事実として、固有名詞で触れられる企業もありますし、株価や指数などは現実の数字に即していますが、それらはいずれも、あくまで実在の企業等をモデルとして再構築したものに過ぎず、記載された内容が真実であることは保証しません。
物語内(コラムを含みます。以下同じ。)で紹介する銘柄や投資手法について推奨したり勧誘したりするものでないことはもちろん、投資そのものについて推奨する意図はありませんし、投資の結果を保証するものでもありません。投資判断はあくまでも各自の自己責任でお願いします。
この物語では、法律や税金の制度を紹介している部分があります。可能な限り正確を期しましたが、その正確性を保証することはできません。また、近年は制度改正のテンポが速いので、早晩、ここに書かれている法律や税制は、現実に適合しなくなることが見込まれます。そうした点を除いても、具体的な状況に対する法律や税制の適用について、筆者はその責任を負いません。その種の判断はあくまでも各自の自己責任で、そして、ご自身で判断が難しい問題については、弁護士や税理士、FPといった専門家への相談を強くお勧めします。




