結果…
早くも最終回です。
到着した時刻が遅かったので神社の本殿へ入ることができなかった。先輩は神社ならどこでもよかったし、結果としては神社じゃなくても良かったんだと言ってくれた。
「先輩、真っ暗なんですが…」
「…真っ暗だねー、調べてなかったからしょうがないんだけど、んーまあ結果的に神社じゃなくても良かったからねー」
「でも宝くじ当たるんじゃないですか?」
あえて先輩をいじってみる。心に余裕ができたからこそ初めての試み。
「当たるらしいんだよなー、今から買いに行こうかー」
「付近に宝くじ売り場ってありますか?…電波が届いてないから調べられないですね」
「やっぱり宝くじは買わないと当たらないよなー」
結構前にCMで当たるためには買うしかないってフレーズを耳にした気がする。
「まあ大きな悩みを聞くって目的が達成できたし、帰ろうかねー」
「ですね、運転よろしくお願いします」
「はいよー任されたー」
真っ暗で神社かどうか確認できなかったけど、先輩の目的が僕のお話を聞きたいという事だったので。解決してないしこれから帰りがけにまたお話をするんだけど、今はそれが楽しみ。そして車の中で色々な話をして、地元まで戻ってきた。
「まあすぐに結果なんか出ない問題だよなー」
「先輩の力を持ってしても解決できませんでしたね」
「俺はそんなに頼れる人物じゃないよー、性的な悩みに関してだともういよいよわかんないからねー」
「女子高は本当に辛かったですからね」
「女子高の闇なんか知りたくなかったよー、なんてねー」
「…さらに闇がありますけど聞きます?」
先輩が戦慄した表情浮かべて勘弁してって言うので言わない事にした。
「そういや凛ちゃんも明日シフト入ってなかったねー、ホテルで休むって手もあったかー」
「先輩は僕のこと知った上で誘いました?」
「知らないで誘ってたし、泊りがけのデートは凛ちゃんしか誘ったことないよ?んで凛ちゃんのことを知った上で言ったけど」
「え?」
「男でも女でも、性別関係なく凛ちゃんだけを誘うよー。だって俺は凛ちゃんの性的対象に入ってないでしょ?だからえーと、ホイホイついてきたんでしょ?」
ホイホイついてきたんじゃなくて先輩が拒否権を認めてくれないからいつもついてきてるって事に気づいてなさそう。佐々木先輩って実は可愛いんだね。一所懸命に考えてくれるけど、どこかちょっと抜けてて、きっと心から僕を肯定してくれている。僕が女だったら惚れちゃ、あれ?
「ねえ先輩、真剣なお悩みが発生しました」
「改まってお悩み発生しちゃったかー、なになに?俺に惚れた?」
「まさに」
「マジか、いつから?」
「僕を知った上で誘ってくれるって聞いたので、不覚にもときめいてしまいました。恋泥棒さん責任取ってください」
「びっくりするほど急展開だねー、冗談でする表情じゃないし真剣に考えてるって事だよねー」
「なんなら僕は今からでも女になりますが」
「凛ちゃん落ち着いて。俺としてはね、凛ちゃんの話を聞いたうえで誘ったし、こんな事を他の誰かに言うつもりもない。だから、凛ちゃん、俺の彼氏になってくれる?」
「僕から言いましたけどさすがに急展開ですね」
「それ俺が先に言ったよー」
急展開過ぎて僕もついていけなさそう。ど、どうすればいいんだろう?初めての彼氏が先輩、あれだけ悩んでた問題が一気に流れていったからっていう僕の気迷いだったのかも知れない。もしそうだとしたら先輩に申し訳なさすぎる。僕の気の迷いで先輩を苦しめるのは嫌だ…
「まあ、お互いの事は大体知ってるし、どうにかなるんじゃないかなー。凛ちゃんの一時的な気の迷いで俺が翻弄されたんだとしたらそれはそれでいいし。今だから言えるけど、最悪の手として新宿2丁目かなーと考えてはいたからね」
「一度は行ってみたいです」
「ヤだよ、凛ちゃん取られちゃうのはヤだ」
「ゲイカップルなんていっぱいじゃないですか」
「辿り着く前に歌舞伎町に行っちゃったらどうするの?俺そもそも新宿に近寄りたくないんだけど」
「その時は可愛い彼女になりますから、なんならスカート履きましょうか?」
「凛ちゃんマジで落ち着いて?深呼吸したら凛ちゃんの下半身を見てみよう?」
言われた通り深呼吸をして下を見るとスカートだった。僕の自衛策であり絶望の壁の主。もうスカートじゃなくてもいいんだ、下着は流石に今まで通りだけど。
「更衣室はさすがに変えられないけど、無理してスカート履く必要はもうないよねー。下着事情についても考えないとだなー」
「あの、僕が言っといてなんですけど、先輩の為なら脱げますよ」
「凛ちゃん帰っておいでー思考が飛んでるよー」
「スカートだって履きますしこれからは温泉旅行だって行きます、女湯にも入りますし」
「ストップ。落ち着いてゆっくり息を吸って、ゆっくり息を吐いて。今の凛ちゃんちょっとテンション上がってるからリセットさせよう、俺のためにも落ち着いて?」
いったん気持ちを落ち着かせる為にゆっくりと深呼吸。それでも僕の心は佐々木先輩の色に染まりたい想いで溢れている。気持ちが暴走するってこんな感じなのか、とても気持ちがいい。もっと暴走させたいけど先輩を困らせるわけにもいかない、これは困った。
「あれー?凛ちゃんってそんなにコロコロ表情変わるタイプじゃなかったのに」
「顔に出てます?」
「すんごい困ったなって顔してるよー。どう困ったの?」
「僕の暴走がどんどん進んでいって先輩を困らせちゃってどうしようって考えてました」
「うーん…ならば」
先輩の顔が近づいてき、え?んっ…キスされてる、あ、どうしよう僕爆発しちゃう心臓とか色々爆発しちゃう顔熱いどうしようああキス終わっちゃったもっとしたいのに…
「もしかして初めてを頂いたかな?」
もう声も出せないからコクコク頷くしかできない、口を開いたら湯気がいっぱい出そうだ…
「だったらお互いの初めてだねー、ここからはゆっくり進行してこうねー、先は長いだろうし。長くあって欲しいし」
「…はい…」
「まぁ、徐々に進んでいこうね。そのうち周りにも公表しなきゃならないし。さーてどこに喧嘩売ろうかなー」
一時の気の迷いが、最初で最後の彼氏になった。僕は先輩の彼氏として、先輩のお婿さんとして生きていく。障害は山ほどあるけど、先輩が色々動いてくれるし、僕も両親に打ち明けよう。先輩が受け入れてくれたんだから、僕はしっかり生きていける。さあ、ここから頑張って行こう。
おしまい
2話目でぶっ飛んだ展開になって3話で恋愛に持っていって力尽きました…
このお話いつかぶっくんぶくんに膨らませてしっかり書くつもりです。