楠野里高校:03
「それはそうと、なんで俺がド真ん中なんだ?左右にキャプテンと副キャプテンはおかしいだろ」
「いやいや。後ろにいるよりこの配置の方が楽だよ」
「...?なんで?」
「そりゃ、良太は発言する側なんだから後ろにいる訳には行かいよね」
「まじかよ。大河が上手いことやってくれよ」
「全部出来るわけないじゃん。そもそも俺と蓮太郎は共有終わってるしね?」
「諦めなさい。貴方たち3人はいま一番注目される立場なんだから逃げられないわよ」
比奈も大河と同じ認識ということは逃げる事は出来ないようだ。というか座っている場所は良太を逃がさないための配置であることに気が付いてしまった。もう取り囲まれているのだから頭を抱えるしかない。
「は~、めんどくさいな」
「シャキッとしなさい。会議始まるみたいよ」
比奈の言葉で体育館の入り口に顔を向けると生徒会の生徒たちが揃って入って来ていた。それだけではなくサッカー部やバスケ部といった運動部、文化部の部長達も入ってきたようだ。
「大河は行かなくてよかったのか?事前の打ち合わせしてたんじゃね?」
「問題ないよ。だって今日の会議の内容は俺たちの話がもとになるんだから」
「あぁそんな感じ。…じゃあ新しい情報はないのか?」
「今のところは聞いてないね」
「じゃあ“くろこ”の話が始まるまでは寝てても問題ないか」
「良太が何もしなければ打ち合わせ通りに終わるってだけよ。だから寝てる暇はないわよ」
「昨日何か隠してたやつこの会議で言った方がいいと思うよ。だから寝れないだろうね」
比奈からもヤジが飛んできた。後ろの蓮太郎も同調している。
「…まって。昨日何か言ってないことあるの?聞いてないよ?」
「まあまあまあ、そろそろ会議始まるから静かにしないと」
話していない大河に怒られるのはめんどくさいので無理矢理会議に意識を向ける。その間に生徒会は体育館の舞台を背にして座っている。主将達は自分の部活の生徒が集まっている場所へ移動していった。
その光景に今まで話し声が響いていた体育館は徐々に静まっていき、足音しか聞こえなくなった。全員が椅子に座ったのを見計らい生徒会の1人が立ちあがる。
「それでは皆さん、集まっていただきありがとうございます。今回の事態に関する緊急会議を開始します」
2023年5月10日、午前9時、異世界転移した楠野里高校の運命を決めた会議が幕を開けた。
「今回の会議は生徒会が仕切らせていただきます。司会進行を務めます。生徒会副会長、秋村芽吹です。まず初めに生徒会長から一言お願いします」
そういって生徒会の進行役が促すと中央に座っていた生徒が立ち上がる。
「おはようございます。生徒会長の細川有希子です。朝早くから集まっていただき感謝します。今回の会議では今ある情報を共有すること、そして今後どのように行動するかを議論することを目的としています。」
「現在我々は異世界転生、又は異世界転移のような現象が起きていると予想されています。生き残るために楠野里高校全体で協力していきたいと考えています。よろしくお願いします。」
緊張した面持ちで生徒会長が話している間、出席している全員が静かに聞いている。生徒会長の話した内容も“くろこ”が「この世界に連れてきた」と言っていたからほぼ事実だろう。
「ありがとうございます。今回の会議では全体に対しての情報の共有を主な目的として考えています。そのため質問などは積極的に出してください。」
「まず、現在分かっている部分について共有します。陸上部主将の鈴木さんよりお願いします」
「はい。現在分かっている事ですが・・・」
急に隣に座っている大河に話が振られたことに驚いたが、どうも当事者に話してもらうスタイルのようで、大河は驚かずに話し始めた。
「・・・ステータス画面にはアイテムを保管する機能もあり、通常では持ち歩けない量でも所持が可能となっているようです。」
大河は昨日の夜までに分かっていたことを説明していく。一応事前に共有しているようで、見渡しても疑問を持ったような顔はいなかった。一応の確認程度なのだろう。
(大分準備がいいな。だったら”くろこ”って名乗ったあいつの話が大半か…)
知っている内容なので考え事をしながら聞き流していたが、新しい発見はなかったようでそのまま大河の説明が終わる。
「ありがとうございます。今の時点で疑問がある人は挙手をお願いします。…大丈夫そうなのでこのまま続けます。鈴木さん、東さんからは情報の共有をしてもらっていますが、竹中さんからはこちらも聞いていません。何か補足などありませんか?」
急に指名されびっくりしたが、ボーっとしていたのがばれていたのか比奈からは白い目で睨まれている気がする。そのまま次の話題に行くのかと思っていたが俺に確認するとは予想していなかった。
当てられてしまったので仕方なく立ち上がる。ついでに昨日言わなかったドロップ品のことを共有してしまおうと考えた。
「そうですね、さっきの内容で問題ないです。ただ、昨日3人で倒した“ファイヤーストームT-レックス”ってやつ、ボス扱いだったみたいで肉とか素材以外にも武器が一個ドロップしました。」
静かだった体育館は俺の発言によってザワザワと話し声が聞こえる雰囲気に様変わりする。他の部活の部長たちのあまり面識がない人たちには事前共有されていないとめちゃくちゃ睨まれてしまった。この状況で笑っているのは俺のことを昔から知っている蓮太郎だけだろう。
「生徒会長、どうぞ」
「なぜ今まで黙っていたのですか?」
頭を抱えている生徒会長が挙手したので指名するとキレ気味に怒られた。
「話したところで現状を打破できるアイテムではないですし、流石に昨日は疲れていたので質問攻めにあうのは面倒くさかったんですよ。」
生徒会長は少し納得するように表情は変わったが、頭を抱えたのは変わらず椅子に座った。…ヤバい奴でごめんね。




