prologue : 06 side-鈴木大河
「大河先輩、俺たちはりょう君に付いていけると思いますか?」
良太をおんぶして歩く蓮太郎は暗い表情のまま僕に聞いてきた。僕もなにを言わんとするかは理解できる。今回のティラノサウルスとの戦いでは僕たちは良太におんぶにだっこだったからだ。
「死ぬ気で付いていくしかないだろうね。それか他のことで良太をサポートできるようになるか。さっきのは僕ら2人だったら少なくとも生きてない」
「...ですよね」
蓮太郎も同じ気持ちなのだろう。さっきのティラノサウルスとの戦いは表面上は3人で交代しながらの戦闘だったが、明らかに良太が全てを背負っている戦いだった。僕たち2人のサポートだけではなく、おそらく疲労具合まで見ていたのだろう。初見攻撃に気が付くのにも驚いたがそれだけではなく周りが異常に見えている。
「実際、疲労度が全然違うみたいですね。僕たちはまだ普通に歩けるのにりょう君は気絶するみたいに寝ちゃったし」
おんぶした良太を気にしながら蓮太郎が呟く。実際そうなのだ。良太は”くろこ”との話が終わったら一瞬で寝たが、僕たち2人はまだ肉体的にも精神的にも余裕がある。疲労は感じるが、倒れるほどでではないというのが正直な感想だった。
「良太はうちの部活でも一番体力があるのに、僕たちのほうが疲れてないのは本当はおかしいんだけどね」
「りょう君はどこまで見えてたんでしょう。まさか3人とも無傷で終わるとは正直考えてませんでした」
「僕もだよ。良太の立ち回りが上手すぎる。どうやってあんな動き身に着けたんだろうね」
「ですよね。ほんとにすごかった」
半ば現実逃避気味に先ほどの戦闘の感想を話していると教室の窓からこちらを見ている生徒が大勢いるのが目に入った。混乱こそあまり見えないが、顔が引きつっている人も多い。
「...行こう。良太をどこかに寝かせてさっきの”くろこ”ってやつとの話を学校で共有しないと。...生徒会がやるべきかな?」
「動いてもらうしかないでしょうね。...ほかにも動けそうな人を集めておいた方がよくないですか?どうせ混乱の素ですから」
「だろうね。でもまずは方針を決める人を確定させた方がやりやすそうじゃない?」
「確かにそうですね。じゃありょう君保健室にでも寝かせたら合流します」
「おねがい。ついでに陸上部集めといてよ。なにかお願いするかもしれないし」
「分かりました。...でももう何人かは集まってきてそうですね」
蓮太郎が向いている方向に目を向けると見知った顔の面々がこちらに走ってきていた。全員ではないが陸上部のメンバーと大河や良太と同じクラスの数人が近づいてくる。
「ちょうどいいね。手伝ってもらおう。蓮太郎はまた後で」
「了解です」
蓮太郎が保健室の方へと歩いていった。大河も近づいてきている面々のほうへ歩いていく。
「急なんだけど生徒会引っ張りだしてきて。悪いけどすぐに集めてほしい」
明るい顔で取り囲んできた陸上部の部員に対して厳しい顔で指示を出す。いまは勝利を喜ぶタイミングではない事は察してもらおう。良太が寝ている間に僕達が出来る事をするために。




