prologue : 02
日替わりセットを食べ終えた良太の発言に大河と蓮太郎は立ち上がって周囲を見渡す。確かに食堂にいた大人たちが消えていた。2人は異変を確認して驚愕の顔を浮かべながら蓮太郎に向き直る。
「おそらく高校生だけ飛ばされたんだろう。器用だな」
「そんなこと言ってる場合?気が付かなかったよ」
落ち着いている良太に驚きながら大河がツッコミを入れた。
「何ならいまだに地震に対しての放送がない。多分職員室も空っぽだな」
良太の言葉に2人はハっとした。先ほどの大きな揺れから大分時間が経っているが放送の1つも無いのはあまりにも不自然だが気が付いていなかった。確かに先生たちがいない可能性を高くしている。だが大河はそれに気が付いてなお落ち着いていた良太に疑問を持った。
「なんでそんなに落ち着いてるの」
「騒いでもいい事なさそうだったからな。飯は食べられる内に食べといたほうがいいし、...人が相手じゃないといいな」
良太の呟きに2人は口を塞いだ。正直な話、対人間は一番想定出来ても日本で生まれ育った俺たちにとっては最悪の相手となる。人殺しが身近な世界では育っていないのだから当然ではあるのだが。蓮太郎は今の良太が落ち着いている理由を察した。これから人間の戦争に巻き込まれる可能性を考えていただけで、別の方向に頭のリソースを割いていただけだった。
蓮太郎がそのことを大河に説明しようとしたところで、どこからが聞いたことが無いほどの声量の咆哮に耳を塞いだ。
「うるせえ!...グラウンドの方向か?」
「多分そうだね。学校の外かもしれないけど」
咆哮が止まり良太が愚痴ると大河が返答した。食堂の入り口を見ていると、先ほどグラウンドの方に走っていった生徒たちがグラウンドから逃げるように走っているのが見えるのでほぼ間違いないだろう。
「...良太はどうする?」
「どうするって...倒せれば今後有利に働きそうな気はするぞ。どっちにしても拠点になるかもしれない学校の近くにこの声量のなにかがいるのは寝れないだろ」
「...そうだね。じゃあ倒しに行くかい?」
「やるしかないだろ。そのための武器と防具だろうしな。」
良太と大河は相談が終わり食堂を飛び出した。
「大河!上靴で動けるわけないだろ!履き替えに行くのが先だ!」
良太の声に大河もグラウンドへの道から方向を変え部室へと駆け出す。蓮太郎は2人のあまりの行動の速さに唖然としたがとりあえず二人について行った。
「お~!ティラノサウルスか!VRとかで見るのとは迫力が違うな!」
「ティラノサウルスで合ってるのかはわからないけどね」
グラウンドの方から逃げてくる生徒を搔き分けてグラウンドに到着した。グラウンドの入り口で3人は立ち止まり中央に鎮座している恐竜をみて良太が率直な感想を口にした。
服装はアイテムとして入っていた防具を制服の上から装着し、靴は部活用のアップシューズに履き替えてきた。あまり怖がっていなそうな良太に少し呆れながら大河は作戦を考えていた。
「良太、来てみたもののどうやって倒す?...足元を狙って動けなくするのが一番楽そうじゃない?」
「そうだな...正直リアルみたいに攻撃した部位にダメージが入るのかわからんから無理せずヒット・アンド・アウェイでやるべきだろ。ここの世界観もわからんしな」
相談を終えて大河は着いてきた蓮太郎に顔を向けた。
「そうだね。そのつもりでやろう。蓮太郎、一緒に戦う?それとも見てる?どっちにしても重要な役割になると思うけど」
「え?...見てるだけでも重要なんですか?」
「まあ、あの恐竜がどんな攻撃パターンか見極めて次やるときの対策になるだろうからな~。最悪その時俺ら生きてないから蓮太郎が頼りになるんじゃないか?」
蓮太郎の質問に良太が答えると腑に落ちたのか押し黙ってしまった。そして覚悟を決めたように一歩前に出た。
「...俺も一緒に戦います。2人よりは3人でやった方が勝率上がるでしょ?」
蓮太郎の回答に良太は笑みを浮かべる。蓮太郎の身体能力は理解しているので、一緒に戦ってくれるだけでありがたかった。
「じゃあやろう。恐竜の形ならの基本的な攻撃は突進とかの直進攻撃と噛みつき、あと尻尾の薙ぎ払いとかだろ。急に変なことしてきたらどうしようもないけど」
「...そうだよね。急に魔法とか使ってくる可能性が捨てきれないのが一番困る。ヒット・アンド・アウェイで一生足狙い続けるのが安牌だろうね。」
「攻撃当たったときの俺たちのダメージがわからんのも致命的だな。当たらない様にするしかない」
「じゃあ基本1人が注意引きながら2人がサポートしながら隙をみて交代って感じですか?」
「そうしようか。常に死ななない事とダメージを受けないことを優先して ...歯茎はしまってね?」
「「了解」」
良太と大河の考えを蓮太郎がまとめて、作戦が纏まる。陸上部の主将でもある大河が方針を決定した。
「始めよう。俺が最初正面でターゲット取るから。大河が左、蓮太郎が右の三角形でやろう。タゲが変わったらそいつを正面として三角形を維持。お互いにサポートを意識!」
恐竜の左右に2人が走り出す。その背中を見ながら良太は武者震いを隠すように大声を出す。
「お前に恨みはないが叩きのめしてマンガ肉して食ってやる‼」
恐竜が良太に顔を向け、咆哮したことで戦闘が開始した。




