prologue : 01
今回、以前短編として制作した同名作品を長編としてリメイクして投稿します。
長編作品を作るどころか物語を書くのも3本目ですので、温かい目でご覧いただけると幸いです。
初めてのくせにプロットの時点で大分物語が長い可能性に震えておりますが、頑張って更新してまいります。
高校3年生になり、2ヶ月がたった。最高学年であるという実感も少し感じ始めた頃、竹中良太はいつものように食堂で昼食を食べていた。
「今日のメニュー美味しいな」
良太がつぶやくと横に座っていた鈴木大河がお盆の中の日替わりセットを見ながら少し呆れながら返事をした。
「それ、日替わりメニューでたまにあるやつじゃん。今まで食べたことなかったの?」
「おれは親子丼セットとカレーうどんセットばっかり食べてたからあんまり他のメニュー食べてこなかったんだよ。知ってるだろ」
大河に冷静にツッコまれ、苦笑いしながら返した。鈴木大河は良太と同じ陸上部に所属しており、しかも3年間同じクラスの親友だ。良太は基本1人で黙々と練習する事を好むが、大河は面倒見も良く一種のカリスマを思わせるリーダーシップを発揮するようなタイプで陸上部の主将もしている。性格は違うが、同じ100mのライバルとして、リレーの仲間として切磋琢磨しながら仲を深めてきた。そんな二人の軽口を向かいの席で聞いていた東蓮太郎が良太の方を首を傾げながら見ていた。
「どうした?」
「なんでいつも同じもの食べてたのに今日は違うの?」
その様子に気が付いた良太が問うと蓮太郎は当然の疑問を口にした。東蓮太郎は良太達と一緒に昼食を食べているが高校1年生であり良太達の通う楠野里高校には通い始めたばかりだ。良太とは小学生の時からの友達で、高校生ともなれば敬語など先輩に対して気を遣う年代だが、良太は小学校からの友達に敬語で話されるのは気持ちが悪いと蓮太郎の中学生の時にも話していたためそのままタメ口で話している。
「あ~、親子丼セットとカレーうどんセット学年が替わったタイミングでリニューアルしたんだよ。値段変わらずに量が明らかに少なくなっちゃったんだ。流石に選ぶ気なくなったよね」
「そうそう。流石に2年間横で見てた俺にも明らかに量が少なくなったの分かったからね」
良太の説明に大河も理解を示した。2人は高校で知り合ってからずっと基本食堂を利用していた。事情を知らない蓮太郎もこの理由には苦笑いするしかなかった。
「2か月ぐらいたったけど蓮太郎は学校に慣れた?」
良太は蓮太郎と会話を続ける。今日一緒に食べている理由は良太が蓮太郎を誘ったからだった。
「もう大分慣れたよ。そもそも困ったらりょう君とか先輩に聞きに聞けばいいしね」
「それはそうだな。何とかなってそうでよかった。部活はいけそうか?」
「今のところ大丈夫。他の1年とも仲良くなったし、先輩たちも優しいし」
「それは良かった」
良太はとりあえず蓮太郎が学校生活に不満を持ってなさそうなことに安堵した。実は蓮太郎は良太や中学の先生が推した結果、良太達が通う楠野里高校にスポーツ推薦で入学したという経緯があるため、良太にとっては友達として以外にも気にかけている部分がある。蓮太郎もその事は理解しているので一緒に昼食を食べている。
大河はそのことは理解していたし、蓮太郎とも同じ部活の仲間としてさらに仲良くなりたいと考えていたため昼食に混じることを了承していた。
良太達のたわいもない会話を聞きながらふと食堂の窓の外を見た大河は窓の外の色が明らかにいつもと違うことに気が付いた。
「...外、なんか変な色してない?」
良太達が窓を見る時には食堂にいる他の生徒たちもざわざわと少しづつ違和感に気が付いているようだった。
「空が紫に染まってる?」
良太も気が付いた。正確には食堂の窓からは建物の壁しか見えないが、ガラスの反射で空を見て違和感に気が付いた。
「大河、空がこんな色になることってあるのか?」
「わかんない。オーロラ?」
「北欧とか行かないと見れないやつが日本で見えるのか?しかもオーロラって夜だろ。...太陽よりも強く光ってるのか?」
「隕石だかフレアだかが来たら見える場合があるってどっかで見たような...?」
食堂に居た生徒達は確認しようとゾロゾロと食堂から出ていった。良太は意味が分からない光景に困惑しながらも昼食を食べ進めた。昼食をほったらかして外に見に行くという選択肢は出ていない。良太がそんな調子だったので大河と蓮太郎も椅子に座ったままだった。蓮太郎は何か情報収集できることはとないかとスマホを取り出して、圏外になっている事に気が付いた。
「本当にそうかも、今スマホ圏外になってるよ」
スマートフォンの画面を見せながら蓮太郎も会話に加わった。その時唐突に下から突き上げるような衝撃で地面が揺れた。
椅子に座っていた3人はとっさに机の下に隠れた。食堂に残った他の生徒も同じように机の下に隠れたようだ。
「大分でかい揺れだな!けど一瞬だった。余震がまた来るのかな?」
地震が予想していたより早く収まり、いそいそと良太はお茶碗と箸を持ったまま机の下から出てきた。それに釣られるように二人も机から出てくる。
「でもりょう君、流石にこの揺れでこの短さは変じゃない?どっちかというと隕石が落ちてきたとかの方がそれっぽいけど...」
蓮太郎は疑問を感じた事を話しかけてくる。
「分からん。とりあえず早く飯食い終わらないと避難始まっちゃう!」
蓮太郎はこの状況で昼食を食べ終わる事を優先する胆力に少し懐かしさを覚えながら笑った。その横で静かに大河が眉を顰めながら空中に指を振っていた。
「大河先輩、どうしたんですか?」
気になった蓮太郎が問うと大河は眉間にしわを寄せたまま蓮太郎をみた。そして何か指を動かした後、ゴトンッという音とともに大河の足元に鞘に入ったロングソードと防具のような何かが現れた。
「は?どっから出てきたよそれ」
思っていたより意味の分からない状況良太と、蓮太郎は驚愕した。それだけではなく近くにいた生徒も何人か気づいて固まっている。とっさに良太が疑問を口にした。
「多分2人も持ってる。頭を固定して視界の右端になんかない?」
「頭を固定...右端?...あるな。」
その右端の何かに意識を集中すると視界にまるでウェブブラウザを立ち上げたかのように画面が現れた。その画面に書かれている事を読んでいくとどうやらステータス画面の様だった。
「なるほどな。とりあえず座れ。...異世界転生だと思うか?」
机から出てきて立ったままだった2人に着席を促し、良太は大河と蓮太郎に疑問を投げかけた。良太の発言は突飛だが、意味の分からない事象に対しての答えとしてはありそうなものだ。もはや今の時代アニメやライトノベルに全く触れてこなかった高校生は少ない。3人の通っている楠野里高校は進学校ではないため猶更触れている生徒は多く、大河達も何を言わんとするかを理解した。
「...こんな人数、というか下手したら学校ごと移動させるものなの?」
「それに武器が最初からあるって...」
大河が食堂を見回しながら呟いた。蓮太郎もその言葉に頷きながら自分の疑問を呟いた。良太もその疑問は感じていた。
「...初期武器があるってことは戦う系統のやつだろ。」
「そうだろうね。じゃないと最初から武器いらないから」
3人の表情は厳しい。武道の心得を学んできた側の人間ではないからだ。良太は食べ終えて空っぽになったお茶碗をプレートに戻し、気が付いたことを手を合わせながら口にした。
「はぁ、ご馳走様でした。...食堂の中のおばちゃんたちが消えてる。先生達もだ。」
登場人物名
竹中 良太 たけなか りょうた
鈴木 大河 すずき たいが
東蓮 太郎 あずま れんたろう




