第5話 お祖母ちゃんの実力と現実
アダムを追いかけて来たは良いものの元気盛りの子供と腰の痛い老婆。
距離を離されて森林のなかへとアダムが入っていったこともありあたしはすっかりアダムを見失ってしまった。
「確か、このあたりだった筈だけどねぇ、あいつもすっかり見失っちまうし……仕方ない、使おうかね……【シャープ】」
あたしは周りを見渡しながら仕方なく感知魔法を使うことにする。
シャープは感覚を鋭くさせる補助型の魔法。
あたしはあまり補助魔法というのは使うほうではないしそもそも久しぶりに使うもの。
だがこれぐらいの森であれば問題ないだろう。
「うん、ああ、なるほどね、ここからだと北に少し行ったところだねぇ、しかも音の数からしてこれはいけない、はぁ腰が痛いっていうのに老人の扱い方がなってないよ全く」
鋭くなった全身の感覚にピリピリと現状が波紋になって伝わってくる。
それはやはりあたしが想定していた状態で。
あたしは痛い腰を押さえながら急いで駆け出すのだった。
「こっちから聞こえたと思ったが……どれどれ」
あたしは暫く走ると森を抜けて少し広い草原に出る。
「助、助け、て……!」
「絶対に僕の後ろから離れないでください!」
「お、お前みたいな子供に何が出来るんだ!」
「……それは」
「ああ、オレはここで死ぬんだ……!!」
そうすれば腰の抜けたのであろう男とそれを庇うようにその男の前に立ってナイフを構えるアダムがいた。
そして庇われている癖にギャンキャンとわめき散らす男にそれなりに腹が立つ。
「あまり大きな声で叫ぶんじゃないよ、余計に相手を刺激するだろう」
あたしはそんな二人のほうへ近づきながら男に文句を言う。
「あ、マチルダさん……!」
あたしを見たアダムの目が、一瞬嬉しそうに揺れたのが、逆にあたしを辛くさせた。
「追いかけてみればフェンリルウルフの群れに囲まれて、いったい全体あんたは何がしたいんだい本当に……」
あたしはアダムから視線を離して頭を振りながら現状を確認する。
腰の抜けた男とそれを庇うように立つアダム。
そしてその前には気の立ったフェンリルウルフの群れ。
その時点で現状何が起こっているのかは大体理解できた。
「悲鳴の聞こえたほうに慌てて向かったらこの人が追いかけられてて、一緒に逃げようとしたんだけどこの人が黙ってくれなくて……」
フェンリルウルフ越しのアダムが泣きそうになりながらも必死で男を庇いながらあたしに現状を伝えようとする。
「フェンリルウルフは耳がいい、騒げば騒ぐだけ刺激する、そいつの大声が余計にフェンリルウルフ達を刺激したんだろうね……仕方ない、そこで二人とも大人しくしてな」
あたしは文句を垂れながらもこの状況を打破する為に動こうとする。
「助けが来たと思ったら子供で……次に来たのが年寄りなんて……」
だが男はアダムに庇われている癖にまた文句を垂れる。
「っ……」
その言葉を聞いてアダムが辛そうな表情を浮かべたのがあたしにはしっかり見えた。
「あんたね、大概にしな……て言いたいところだけどまずはこっちの対処が先決かね」
あたしは男に文句をつけたかったがあたしの存在に気づいたフェンリルウルフ達はそれを待ってはくれないだろう。
「あんた達には悪いと思ってるよ、でも、引くことはしないだろう……なら、こっちもこっちで引けない理由があるんだよ」
興奮するフェンリルウルフ達にあたしは申し訳ない気持ちからそう声をかける。
それから、一度、服に血糊の付いた男に蔑んだ瞳を向けて、今度はアダムのほうを見る。
そう、引けない理由だ。
バカな孫が首を突っ込んでしまったのなら、その孫の命が懸かっているなら、引くことは出来ない。
「剣は……使うまでもないね、そもそもフェンリルウルフは身体を覆っている毛が固くていけない、久しぶりだから上手く範囲を調整出来るかだけが、少し心配だが、まぁ、あの男は少し燃えても問題ないだろう【メガフレア】」
あたしは少し考えた後に手を前にかざして魔法を唱える。
瞬間目の前に爆発したように大きく爆炎が燃え上がり、フェンリルウルフの群れを余すことなく、燃やすように豪炎が焔を上げる。
「な、な、な……!!」
それを見て男はさらに腰を抜かした様子で情けなく叫び。
「これは……」
アダムは驚いたように構えていたナイフを下ろして炎を見つめる。
「ふむ、久しぶりにしてはよく燃えた、が、全盛期を考えると劣ってるとしか言えないねこりゃ、感覚が鈍くて嫌になるよ、ああ、腰が痛い」
炎はギャオギャオと鳴き声をあげるフェンリルウルフ達を燃やし尽くすとぱちぱちと爆ぜて消えた。
あたしはそれをしっかりと確認してからフェンリルウルフの亡骸を踏まないように避けながら肉と油の焦げる匂いを不快に思いながらアダムのほうへ向かう。
「マチルダさん!!」
アダムはナイフを手から落としてそのままあたしのほうへと駆け寄ってくると飛び付いてくる。
「……ああ、全く勝手に飛び出すんじゃないよバカな子だね」
あたしは驚きながらもそれを何とか受け止めて、少しだけ躊躇した後に抱き止める。
突き放すことも出来たが、まだ会って間もないババアに飛び付く程に怖い思いをした子供に、そんなことは出来なかった。
流れでそっとアダムの頬に触れれば、子供特有の高い体温が手から伝わってきて、昔娘の頬に触れた時のことを思い出す。
「す、すみません……でもマチルダさんが来てくれたお陰であの人を助けられました」
アダムは少し落ち着いた様子で慌てて恥ずかしそうにあたしから身体を離すと男のほうを指差す。
男のほうに視線を向ければ男はしっかりと放心状態で立ち上がることすらしようとしていなかった。
「……それがバカだって言ってるんだよ」
だからあたしはアダムに事実を伝える。
「え……」
アダムはあたしの言葉に驚いたようにこちらを見る。
「よく見なそいつの格好を、付けてる装備が全然冒険者のそれじゃない、麻酔銃に軽装備、目深く被った帽子、簡単に分かる、そいつは密漁者だね」
あたしは男を指差して上から説明していく。
しかも見た限りでは初心者ではなく慣れてきて手を抜いた結果、という感じだった。
「っ……」
アダムはあたしの言葉に息を飲んで顔を青ざめさせる。
「そもそもフェンリルウルフは知能が高い、群れをなしてここまで襲ってくるなんて粗方その男がフェンリルウルフの子供を狙ったんだろう、ここら辺はフェンリルウルフの群れが寝床にしているのは有名だし、フェンリルウルフの子供は高く売れる、だがその男は……抵抗されて子供を殺した、子供のフェンリルウルフの毛は柔らかいからさぞ切り刻みやすかったろうね、その自分は怪我もしていないのにベットリ付いた血糊が何よりの証拠さね」
そう、この辺りは昔から密漁者が多い。
そして勿論その分魔物の被害や逆にこうして返り討ちにあった密漁者の死亡事故も多かった。
だから叫び声が聞こえた時点であたしは密漁者の可能性を疑い、そして男の服に付いた血糊を見てそれは確信に変わった。
「……」
男はあたしの視線が居心地悪かったのか、苦虫を噛み潰したような顔をして視線を反らす。
「それじゃあ悪かったのは……」
「こっち側、人間のほうだよ、だから頬っておけばその男が食い殺されてはいおしまいって話だったのさ」
あたしは隠すことなくアダムに事実を伝える。
これからまぁ、魔王を倒すまでの旅というのはそこまで短い旅ではないだろう。
ここで詳しく説明せずに事実を隠しこの場を去ることは簡単だ。
だがこれから旅をする中でこういうことに直面することは少なからずあるだろう。
あたしが二回の大きな旅をしたなかで、決して美談では語れないようなことが幾度となくあった。
今のように魔物ではなく人間側が悪く、それでも人間を優先してこうして魔物を害する。
そういうことだって少なからずあったのだ。
だからこそ、今は隠さずに伝えるべきだと感じた。
これから先、もっと感化できないことだってきっと沢山あるのだから。
「じゃ、じゃあ、知能が高いなら話し合いをすれば…………殺さなくても」
アダムは動かなくなったフェンリルウルフの燃え殻に悲痛そうな視線を向けながらそう呟く。
「自分の子供を殺された親が、それで許すと思うかい? そんな男を庇った奴含めてね、……まぁ、子供には分からないかね」
アダムはまだ子供だ。
子を持つ親じゃない。
だからしっかりは分からないかもしれない。
だが少なからずあたしの娘が目の前で殺されていればあたしはそいつを許さないだろう。
まぁ、あたしは娘の死に際すら知らず、殺されていたことすらつい昨日まで知らなかった駄目な親だが。
「……それじゃあ僕が勝手に突っ走ったから、悪くないフェンリルウルフがたくさん殺されることになったってことじゃ」
事実とぶつかり合いながらアダムは吐き出すようにそう呟く。
旅を初めて一日目。
それにしてはあまりに大きな壁かもしれないが。
それでもこれから旅をするにあたってを考えれば良い壁なのかもしれない。
フェンリルウルフには悪いと思うが。
「まぁそういうことになるね」
だからあたしはそれをそのまま肯定する、
「っ……」
アダムは泣きそうに瞳を歪めながら自分の口許を手で覆う。
「……でも、あの時点ではまだ誰が、どうして襲われているのかまでは分からなかった、だから動いたあんたは……そこまで悪くないんじゃないかね」
それがあまりにも悲痛で、自分で追い詰めておきながら、最後に少しだけの助け船を出す。
「マチルダ……さん」
アダムは少し驚いたようにあたしのほうを見て名前を呼ぶ。
「一番悪いのは、この男だよ」
そして、あたしは言いながら男を指差す。
「お、オレは悪くねぇ! フェンリルウルフのガキを売ればしばらく金には困らねぇ! 獣のガキなんてポンポン生まれるんだ、一匹ぐらい貰っても誰も文句言わないだろ! それなのにあのフェンリルウルフのガキ暴れやがるから、へまって殺しちまったじゃねえか! しかもそいつら襲いかかってきやがって……」
だが指差された男は何の反省もした様子なく煩くただわめき散らす。
「お前っ……」
そんな男を見てアダムは憤ったように呟く。
「なんだ! 文句でもあるって言うのか!? 文句言うならそこの化物みたいなババアに言えばいいだろ! たくさんのフェンリルウルフを殺したのはあっちだ!」
だがそんなアダムを見て男は逆ギレしてあたしを指差してそう怒鳴る。
「そうだねぇ、確かに数あるうちのたった一匹だねぇ、それに親を殺したのはあたしだ」
そう、男が殺したのはたった一匹、そしてあたしが燃やして殺したのは何十頭もいる群れだ。
「そ、そうだ! オレは悪く……ひっ!」
あたしの言葉に赦されたとでも思ったのか安堵の表情を浮かべようとする男にあたしはただそっと手を向ける。
そうすれば男はビビりきった悲鳴を情けなく上げる。
あたしの殺気を感じ取ったのだろう。
「だから、あたしがここでただの八つ当たりであんたを殺しても誰も困らないねぇ、だって……数あるなかの一匹だ、バカなガキが一匹死んでも誰も困らない」
あたしは言いながら手のひらに炎を生み出す。
何時でも、この男を燃やして殺すことは容易だ。
「ふ、ふざけるな! オレは人だぞ! 人を殺せばお前が捕まるだけだ!」
男は自分の言ったことを棚に上げてそう怒鳴る。
あたしからすれば人だからなんだというのだというところだ。
人だろうと、魔物だろうと、動物だろうと一つの命、それは何も代わりはしない。
「はて、本当にそう思うかい?」
だからあたしは不敵に笑って見せてそう問いかける。
「……は?」
男は訳が分からないというように間の抜けた声で呟く。
「今この現状を見ているのは、助けに来てやったのに謗った子供と、気の触れた化物ババアだけ、あんたをあたしが殺したって一体誰がそれをわざわざ衛兵に伝えに行くんだい? もしここで何があったのか聞かれたとしてもあたしはこう言えばいい「男の悲鳴が聞こえたから駆けつけたが既に時遅く男は死んでいた、興奮さめやらないフェンリルウルフと応戦する過程でその男の遺体も燃えてしまった」とね、そうすれば……少し運の悪かった事故、で終わるねぇ」
そう、この男は助けに来たアダムさえ謗った、そんな男の味方は残念なことにここにはいない。
あたしが言ったことが全て事実になり。
男の死はバカな密漁者が魔物にやり返されて殺されただけのただの事故として完結する。
「っ……ま、ま、待ってくれ! わかった! オレが悪かった! もう密漁なんてしない! だ、だからっ! どうか命だけは!!」
男はあたしの言葉で全てを察したのか慌てて謝りながら必死の命乞いをする。
「命を軽んじたお前が命だけはと命乞いするのはそれは滑稽というものじゃないかい? だって、お前の言葉をそのまま借りればたかが一匹じゃないかい」
それが逆にあたし癇に触った。
自分の言った言葉には責任を持つべきだ。
今目の前にいるのは二回世界を救いながら、その旅のなかで沢山の命を奪った気の狂ったババアなのだから。
「ひぃっ……!!」
あたしはそのまま男を燃やしてしまおうとも思ったがアダムが何も言わずにあたしの手を掴む。
「……なんだい?」
あたしはアダムのほうを見て少し怪訝に声をかける。
あたしが今一番この男に腹を立てているのはアダムの優しさを無下にしたことだ。
「止めましょう、とりあえず捕縛して、ノラさんに連絡してここに衛兵を呼んで貰います、ノラさんも何かあればなんでも言っていいと言っていましたし、そうすればこの男はちゃんと法の元に裁かれる」
アダムは、こんな状況にいきなりぶつけられたただの幼い子供なのに先ほどの泣きそうな顔は何処へやら、凛とした顔でまるで大人のようなことを言いながらカバンから通信端末を取り出す。
それは出立前にノラにあたしとアダムそれぞれにと持たされたそれだ。
国の関係者であるノラなら連絡をすれば確かにすぐにでもここに衛兵を用意してくれるだろう。
「……密漁者なんて牢に入れてもせいぜい数年で出てくるよ」
あたしは手のひらの炎を燻らせながらアダムに伝える。
そう、密漁というのは世界からすればそこまで大きな犯罪にあたらない。
それなのに稼ぎはいいものだから大体の密漁者というのは捕まっても数年牢屋に入れられてすぐに出てきて、また同じ犯罪を繰り返す。
だから密漁というのは減らないのだ。
「それでもです、国が裁かないと意味がない」
だがアダムは折れることなくそう言ってしっかりとあたしの目を見た。
「っ……」
その芯の通った瞳に別の誰かを重ねてあたしは息を飲むと手のひらの炎を消しさる。
「……別にあなたの為ではないのでそういう目で見られるのは困ります、……僕がここに来なければマチルダさんだってこんなことする必要はなかった、ボクのせいでもある、それなのにマチルダさんを人殺しには出来ない……それに」
アダムを男は自分をこの気の狂ったババアから救ってくれた恩人というように見やるがアダムは男を言葉でしっかりと突き放す。
そして。
「もしこの状況でマチルダさんがこの人を殺したら……ボクは必ず衛兵に突き出します」
アダムは迷うことなくそう言いきった。
自分が撒いた種。
男の非。
全てを分かったうえでもアダムはその選択を選んだのだ。
「それが……あんたの正義かい? 親の復讐のために動いているのに……子供の癖に芯が通っていて、それでいて矛盾していて面白いね」
あたしはアダムのほうを見てそれだけ言うとハッと笑って様子を伺う。
そもそもアダムが旅についてくると言ったのは自分の両親の敵を討つためだ。
復讐の為に動くアダムが正義を貫くというのはそれなりに滑稽で、それでいてその真面目さは必ずこの先の旅で苦労することが目に見えていた。
「……」
だが笑われてもなおアダムはその真剣な瞳を揺らすことはしなかった。
だからあたしは完全に男への敵意を納めて男に向けていた手のひらをゆっくりと地面におろす。
そもそもフェンリルウルフには悪いとは思っているがあたしは今以上にもっと、悲惨な状態で、何も悪くないものの命を奪ったこともある。
そんなやつがそれ程までにこの男がしたことであたしが殺したフェンリルウルフの為に怒る筈がない。
そもそも腹が立っていたのはアダムを巻き込み、アダムの優しさに付け上がり、アダムを傷付けたその一つの事柄にたいしてだった。
それならアダム本人が選んだこの結果を、あたしがとやかく言うことではない。
「いいだろう、あんたが始めたことだ、ここはあんたの筋を通してやろうかね、早くあの胡散臭い男に連絡しな、こいつは……きつめに縛っておいてやるからね」
あたしははあっと、一息ため息を吐いてからアダムの頭に不器用に手を置いてから縄を取り出して男のほうへ向かう
男は安堵した様子を見せながらもまだ怖いのだろう、あたしが近付こうとするとヒッと弱々しく悲鳴を上げた。
全く、本当にどうしようもない男だ。
かなりきつめに縛ってもまぁ、誰も文句は言わないだろう。
「っ……はい!」
アダムは自分の意見が通ったのが嬉しかったのか、はたまた別の何かが嬉しかったのか、それはあたしには分からないが、少しだけ声に元気を戻してそう言うと、端末を使ってノラに連絡を入れ始めた。
アダムが連絡をするとノラはすぐに近くの衛兵をこの場に呼ぶと言い、ぐるぐるに縛った後も休憩がてらその男の近くで休んでいたあたし達の元にはすぐに数人の衛兵が到着するとすっかりへにゃへにゃになった男を引っ張って連れていった。
それを見送った後は近くで今日はキャンプをするとアダムに伝えてすぐに設営の準備に取り掛かった。
別にアダムの心情を考えたとかそういうことではない。
ただあたしが久しぶりに戦ったり、走ったり、魔法を使って疲れただけだ。
「全く……国も国だよ、こんな年寄りに世界を救わせようなんてね」
あたしはテントの前で火の番をしながら一人文句を垂れる。
そもそもは国がおかしいのだ。
こんなババァにまた世界を救うために魔王を倒す旅に出ろなんて言うことがだ。
むしろこの数十年であたしを越える人材がいないなど後衛の育成事態がどうなっているのか甚だ疑問に感じる。
「あの、マチルダさん……」
そんなあたしの名前をアダムは呼びながら森のほうから歩いてくる。
「なんだい、薪は集められたのか、い……」
薪集めに行かせた筈のアダムの腕には一匹の小さなフェンリルウルフの子供が抱かれていて。
「……あの、そこの、洞窟のほうで鳴き声が聞こえて、見に行ったらこの子がいたんです、もしかしたらさっきのフェンリルウルフ達の生き残りかもしれなくて」
おどおどしながらなんて言うものだから。
「それで、連れてきたってことかい……全く、あんたは次から次へと問題ばかり連れてくるね」
あたしはため息をつきながらやれやれと頭に手を置いた。