眼間 脚本版 注釈
さて、作者はここで何を透明化したのでしょう?
本編
第一幕
透明化は序章にすぎない、透明化された人はいずれ人を透明化する …ハインリッヒ・ハイネの焚書に関す詩が元
ネッカーの立方体…錯視の一種。百聞は一見にしかず、調べてみてもらった方が速い。
忍ぶれど色に出でなば我が恋はものや思ふと人の詰るまで…百人一首40番、平兼盛 「しのぶれど色に出でにけりわが恋はものや思ふと人の問ふまで」を下敷きにしている。
男性同性愛者…ここでゲイと書かなかったのは、女性同性愛者が透明化されやすく、ゲイの本来の意味である「(性別は関係ない)同性愛者」のイメージは不適切だと考えたため。
夢の朧、灯籠…いずれも泉鏡花「縷紅新草」内より。
沖方美樹…代表作は「silent」「いちばんすきな花」といったドラマの脚本家。実名は書けないので偽名。
「コンポタもあります!」、「パンダスペース落ちる」…「silent」の登場人物戸川湊斗と主人公矢木湊斗の名前が一致していることから戸川湊斗の代表的なエピソードのことをいう。
第二幕
絆…「きずな」と読むか「ほだし」と読むか。
金閣寺のように…三島由紀夫「金閣寺」の主人公溝口が金閣を焼く直前に感じていた金閣のありよう。
風邪のシーン…いくつかのBLアニメでは、恋人たちがおかゆを作って相手に食べさせる描写があり、これを反転させた結果。
第三幕
ペットボトルの紅茶の蓋を開けて…「silent」では、戸川湊斗が主人公である青葉紬への感情の変化として、コーンポタージュの渡し方の違いが描かれる。
コーンを食べ忘れていました…第一幕の最後の発言を下敷きにしている。
何も間違っていない…とあるゲイカップルが質問コーナーの際に相手に言った言葉より。
適度に孤独でなくなってしまって、気づけた。あの人がいたから、孤独でいられたのだと。…「エルピス―希望、あるいは災い―」第八話より、全てを失った主人公がモノローグで語るシーンを改悪した。
第四幕
誰もにドナウの水は数滴振りかけられてある
誰もがハンバートハンバートであるのに…
ウラジーミル・ナボコフ「ロリータ」の主人公ハンバートハンバートより。哲学者リチャードローティはこの本を「自らがいっそう残酷でなくなる手助けとなる」本と言い、「ある種の人たちが別種の人たちの苦痛に目を閉じている様をまざまざと見せてくれる」本であるという。今回の書きたかったことである傲慢さは、このことを言いたかった。
第五幕
幸福な人は全てよく似て、不幸な人はそれぞれの理由で不幸になる…トルストイ「アンナ・カレーニナ」の冒頭の有名な一句を使っている。
諦めるとか、…「silent」の脚本家が書いた「踊り場にて」というドラマで主人公がクライマックスで生徒たちに向けて言う言葉より。
「踊り場にて」はその脚本家の真髄が詰まった最高傑作である。
後書き
レズビアン…女性同性愛者の意。
MtF…男性から女性へとなるトランスジェンダーのこと。「虎に翼」作者も日本初の性転換手術に関してポストしている。
未収録部分
マドレーヌ…プルースト 「失われた時を求めて」
金閣…鹿苑寺金閣、「金閣寺」で溝口が初めて見た金
閣
私は…太宰治「人間失格」の最初の文
人身事故、鉄道、松坂の描写…「アンナ・カレーニナ」より、そして松坂が電車から降りたのは「silent」第一話の佐倉想のシーンもなぞる。
斉藤佑樹…ハンカチ王子である人のもじり。野球というメジャーさの体現化。