表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

3:思い出

席に戻ると、杏那がねぇねぇ!と話し掛けてきた。

「もう1人の男の子来たって!楽しみだねー」

「ふーん…」

「何よ?楽しそうじゃないわね〜」

と、少々ふてくされながらも、杏那は男の子と話はじめた。

私はサラダをちびちび食べてると、

「あー来たー!」

と、葛西旬くんが、少し大きめな声で言った。

「あー…ごめんごめん」

と言って、席に着いたのが、さっきトイレの場所を聞いてきた人だった。

「わー。結構イケメンじゃね?」

と、杏那が私の耳元で囁いた。さすが杏那……目ざとい。

「ほらー自己紹介しろよー」

と、旬くんが言った。

「ああ……遅れました、五木葉(いつきよう)です。多分みんなより年上の十八歳です。よろしくお願いします」

言い終わってから、五木葉さんがこちらに気づいた。

「あ…さっきの人だよね?さっきはありがとう」

と、頬笑みながらお礼を言った。

「い…いえ」

「え!え!なあに!?二人はお知り合いなの!?」

と。杏那が興味しんしんに聞いてきた。

「ああ、うん。さっき、トイレの場所を教えてくれたんだ。…えっと、名前は?」

「柏原美彩希です」

「そうなんだ。いい名前ですね」

「あ…ありがとう…」

そんな事あんまり言われた事無いから照れるなあ…。

でも、何だか五木さんっていい人そう…。

そんな事を思ってるうちに、杏那が五木さんに何やら話しかけてる。

多分、杏那は五木さん狙いかな…。

私はどうしよっかな…。何か誰とも全然話してないよね。

「じゃあ次はカラオケいっちゃおー!」

と、杏那が言い、みんな盛り上がっていた。




私も、家に帰ってもする事がないから、カラオケに行く事にした。

カラオケは、すぐ近くにあり、杏那はずっと五木さんに話しかけながらカラオケ店まで行った。

「じゃー!一曲目はわたくし杏那から行きたいと思いまーす!」

「イエー!」

みんな盛り上がってますなー。てか何で私は一人寂しくはじっこでポッキーを食べてるんだか…。

「大丈夫?楽しくない?」

五木葉くんが話しかけてきてくれた。

「ああ…いえ、別に」

あんまり気を持たせたくないから、私は素っ気なく答えた。

「そう?なら良いけど…」

それで二人とも黙ってしまった。

何か…話しかけなきゃいけないっぽい?かな…?

「あの…」

「なに?」

「んーと…杏那の事、どう思いますか?」

「どうって?」

あー!何聞いてんの私!

あっ、でも杏那は五木さん狙いだから、後でどう思ってたかを杏那に伝えてあげればいいっか。ナイスじゃん私!

「何か、いい子そうとか…」

「ああ、そうだなー…明るい子かな。会話が終わらないし、楽しい子だよね」

「へー…」

よし、聞こう。

「恋愛対象としては…どうですか?」

「え?…うーん…」

何でか私が心臓バクバクしてきてる…!

「友達としてはいい子だと思うよ。でも、恋愛感情はあんまり出てこないかな…」

何故か私はホッとしていた。

「ねー!みっさきー!歌おうよー!」

と、杏那が声をかけてきた。

「ほら…!何だっけ!あの歌うたおうよ!思い出の歌!」

「え……」

思い出の歌というのは、太一とよく歌っていた歌の事だ。

太一が死んでから、一回も歌ってないし、聴いてもなかったな…。

「歌おうよー!」

「ん…いいや」

今うたったら泣きそうだし…。

太一を思い出すと、今でも胸が張り裂けそうになる。

この思い出の歌をうたったら、私どうにかなっちゃうかもしんないし…。

「じゃあ、私がうたおーっと」

と、杏那が言って、音楽が鳴り出した。

音楽を聴いた途端、懐かしさと悲しみがあふれてきた。

「~♪~♪」

やめてよ…杏那…!!

やば…泣きそう…

「あれ…?大丈夫?柏原さん?」

と、五木さんが眉をひそめて聞いてきた。

「あの……ちょっとトイレ…」

と言って、私は部屋から出た。

トイレがしたかったわけでもなく、気持ち悪くなったわけでもない。

この音楽を聴いた途端、何故か太一が帰ってきたように思えた。

ガチャ

いつの間にか、裏口まで来ていた。

裏口の階段の所で、私は涙を流していた。止まらなかった。

もうどこにもいない太一の事を、探してしまいそうになる。

ガチャ

「大丈夫?柏原さん・・・っ!」

五木さんが、息を切らして尋ねた。

何でここにいるのとか、そんな事思う前に体が勝手に動いた。

何故か私は、五木さんに抱きついていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ