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公式企画参加してみた⑨ なろうラジオ大賞6

フィクサーの寝言

作者: モモル24号


 暗殺組織を牛耳るのは残酷で人でなしのボスではない。彼の側近の一人、黒のスーツに身を固めた仮面の者。


 目立たぬよう言葉数は少なく、幹部会でも、ボスの側で静かに佇む。一見すると護衛にも見える。だが仮面の者は明らかに細い。ボスと仮面の者を囲う三人の男は背も高く胸板も厚い。彼らこそ正真正銘の護衛であり、仮面の者も一緒に守られているようだ。


 正体不明。いつしか組織の頭脳、仮面の参謀(フィクサー)と呼ばれるようになった。組織の躍進は謎の参謀の手柄と言っても差し支えない。国の癌となり得る連中を次々と始末していた。


「しかし、我々は今は窮地に陥っている」


 国王が暗殺された。おそらく第二王子派の近臣の仕業だ。跡継ぎが王太子に決まりかけていた矢先の暗殺である。疑われたのは暗殺組織の人間になるのは当然の成り行きだった。


「これは我々と決別を図る王太子派の策略だ」


 暗殺組織に依頼は来ていなかった。政敵になり得る第二王子派の企みに見せかけ、潰すのに組織が利用されたのだ。


 暗殺業を営む以上、濡れ衣を着せられる事はよくある話だった。しかしこの裏切りは組織として許せるものではなかった。


「過激な軍事顧問や、第三王子の始末を頼んでおきながら、暗部を切り捨て玉座につくなど許せるものか」


 ボスは集まった幹部達にも同意を求める。幹部達からは静かな怒りの同調が感じられた。


 ボスは一瞬隣の仮面の参謀(フィクサー)に目をやる。組織がうまくやって来れたのも、参謀の助言のおかげだ。この会合で裏切った王太子への怒りを煽らせたのも、仮面の参謀(フィクサー)の想定通りだったのだ。


 焚き付けたはいいが、この後の方針をボスも聞いていない。


「王太子を討て。今すぐ」


 仮面の参謀(フィクサー)の囁き。待っていた言葉をもらいボスはニヤリと笑う。


「よし、決まりだ。我々は王太子を討ちに行く!」


 幹部達の士気が高まる瞬間──ボスの胸から刃が生えた。そして護衛達が、一斉に暗殺組織の幹部達を襲う。


「なっ‥‥なぜ裏切っ‥‥った」


「裏切り? 寝言は寝ていいなよ。始めから私はこの国の()()だ」


 死に瀕するボスが理解したのは、全てこの仮面の参謀(フィクサー)の企みだった事だ。


 いったい誰が? 


 思い当たるのは⋯⋯ボスの意識はそこで途絶えた。


()()()、ありました。弟君からの手紙です」


「やはりね。裏切ったのはこの男(ボス)の方だ。まあいいさ、おかげで邪魔者は全て夢の中だ」


 後は証拠を手に、第二王子派を潰すだけ。参謀(フィクサー)の暗躍により、国は今までになく平穏な時代が続いたという。


 

 お読みいただきありがとうございました。


 寝言は寝て言えって、言いたいだけの物語でした。

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― 新着の感想 ―
「寝言は寝て言え」カッコいいセリフですね。 ハードボイルド的な作品で面白かったです。
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