転生したら魔法に触れる所からでした。
「で、どうだったのよレンカは」
「存外成長の余地はあるかもしれませんね」
「あらジェレミーがプラスな評価するなんて珍しいわね」
「お嬢様の眷属だからもあるかもしれませんが、私が殺気を当てても心拍数が上がっただけで特に反応は見えなかったですね」
「元人間の眷属なのに珍しい物ね」
ベットの方で2人がニコニコ朗らかに話している。
「随分嬉しそうにするのですねアンナ様」
「だって娘の拾い物が良い物なら親は誰だって喜ぶでしょう?」
ただいまー
「お嬢様が帰ってきたみたいですよ」
「ジェレミー出迎えなくていいわレンカが行くでしょうし」
「そうですね」
ちょっと戻って放心中の蓮花
「どうして、、、」
ジェレミーさんから突然とんでもない圧を飛ばされていつの間にか気付いたらわたしが鍛え上げられることになっていた。
「確かに冒険者?に見つかった時の自衛力は欲しいとは思ったけどさぁ」
「眷属なって3日目よ?ちょっとこの体に慣れる時間欲しいよねぇ」
平和な日本で育ってきたのだから生まれてこの方一度も武器なんて握った事なんか無いし、他人を殴ろうとしたことも無い。殴られたことはあるけど。
「いや!この機会に戦えるようになれば前みたいに奴隷にならなくていいじゃん!マスターから逃げれるくらいまで実力が上がれば1人で生きて行けるわけだし!」
こういうまずい事がまず起きたらポジティブに考えよう!
人間はすぐ悪い方向に考えちゃうからね!もう人間じゃないけど!
ただいまー
そう言っていたらマスターが帰ってきた。お母様がもう居ることを伝えに行かなきゃ。
そう言ってリビングから玄関に移ると満面の笑みでマスターが靴を脱いでいた。
「マスターもうお母様が到着されてますよ」
「そうなの?それよりもとりあえず疲れたからリビングまで運んで―」
「ちょいきなり抱き着かないでくださいよ!!」
一瞬リビングの扉から打撃音が聞こえた気がする。
「一人で歩いてくださいよ。」
「いいじゃんせっかくレンカが玄関まで出迎えてくれたんだしさ。んーやっぱり良い匂いする。」
「嗅がないでくださいよ!それと運んでる途中で吸わないでくださいよ!」
「いいじゃん減るもんじゃないし」
「減るんですよ!それに血を吸われたらリビングまで絶対運べなくなりますよ!?」
「そうなったら私がレンカを運んであげるから」
ダメだすごいニコニコした顔で平然と言ってくる。この状態のマスターと話していると頭が痛くなってくる、、、。
「まぁでも吸われてる時のレンカの顔はお母様にも見せたくないし我慢してあげますよー」
「お願いしますよ!?」
血を吸われている時のわたしの顔は一体どうなってるんだ、、、。
抱き着いてくるマスターを渋々背負ってみるが案外軽い、眷属にされてから振り回されているから気にした事無かったが見た目はわたしより歳低めの少女だった。
何かの感情がチラ見せしたような気がするがリビングに居たマスターのお母様達の笑顔でかき消された。
「あ、お母様」
「久しぶりねレーテ、随分レンカを気に入ってるのね。良い拾い物したようでお母さん嬉しいわ。」
「でしょ!やっと見つけた理想形なんだから!」
宝物を自慢するように胸を張るマスター屈託のない笑顔を浮かべていて少し眩しく感じる。
「でも私が選んだ眷属候補リストを全部蹴って出て行ったかと思ったら、まさか人間を眷属にするとはお母さん思っても居なかったわ」
「うっだってお母様が選ぶのかわいくないし、やっぱり自分で見つけたかったし!」
「だからって護衛もできない、能力もない身売りの娘を最初の眷属にするのはどうかと思うのよ」
さっき結構面白い人と思ってた人から結構グサグサ刺されるんだが、、、何か悪いことしました?
「いいじゃない別に!居るだけで癒してくれるし!これから私を護衛できる力をレンカにつけていこうと思っていたし!」
「えっ初耳なんですけど」
「そう言うと思ったからジェレミーを連れてきたの」
「どういう事よ」
わたしを無視して話が進んでいくし、すごい不機嫌そうな顔でマスターがお母様を見つめている。
「レーテに何かがあってからは遅いのよ?だからジェレミーにレンカの戦闘訓練させるの。もちろん厳しくあっ私はこの話終わったら家に帰るけどジェレミーはこの近くに置いていくわよ。」
「なにそれ!」
「だって娘の初めての眷属がすぐに死んじゃうなんて悲しいでしょ?それにレンカが冒険者に見つかってもしレーテが危険な事になろうものなら嫌ですもの。本人からも了承を得てるわ。」
「ほんとにレンカ!?」
マスターが聞いてくるが答えたくない。さっきからマスターのお母様とジェレミーさんが「嘘言ったらわかってるな?」みたいな目で見つめてきているし、ほんとの事言ったらマスターに何されるかわかったものじゃない。
仕方ないと言うような顔でマスターのお母様が口を開く。
「じゃあこうしましょう。レンカに訓練させるのはお互い変わらないんだしレンカをレーテの学校に通わせて、学校の時間はレーテが訓練して、家に帰ってきたらジェレミーに訓練させればいいんじゃない?それでどっちの教えが良かったか終わった後にレンカに聞きましょ?」
へ?なんで一度流れてた通学の話が再燃してるの?しかも休み無いスケジュールになってない?
「学校通ってる間にこの文様がバレて捕まったら全部無駄では?」
「大丈夫よ。私が文様隠せば少なくとも今私とジェレミーが人の街中に居てもいいように学校に居る間くらいバレないようにできるわ」
「お母様の魔法は私より上手だからよっぽどのことがない限りバレる心配しなくていいわ」
もうわたしに拒否権がないのがわかる。これ以上拒否したらますますジェレミーさんが怖い顔してくるだろうしマスターの機嫌が悪くなっていくし最悪だ。
「ねぇレンカ一緒に学校行こ、、、?」
「・・・はい」
これ以上拒否したらわたしの立場がひどい事になりそうだったから了承したのであって、決して最後の一撃がマスターの上目遣いとかそういう訳ではないのだ。油断してて突然のかわいさに抵抗できなかったとかそういう訳ではないのだ。
「やったー!一緒に登校しようね!」
うぅ、、、こうやってマスターがすぐ抱き着いてくるから首に細い手が回されて顔がすごい近くなるし毎日ドキドキさせられて気が気でなくなるからやめてほしい。
「そういえばお母様まだ入学式の時期まで2か月あるけどその間はどうするの?」
わたしのお腹に顔すりすりしながら他人と会話されてこそばゆいんだけど。マスターの力が強くて剝がせないからなすがままにされるしかない状況に耐えるしかない。
前の世界の友達が見たら羨まれるんだろうなぁと必死に意識を反らして耐えることにする。
「その間は、入学テストに受かるために座学も戦闘訓練もレーテがつきっきりで教えてあげればいいじゃない。ジェレミーにも準備期間は必要でしょうし。レンカが入学テストクリアできなかったらそもそもレーテが教える機会がなくなってしまいますもの」
「ありがとうお母様!」
「いいのよレーテの物を予定無しに使える用に訓練したいのは私のわがままだもの」
とりあえず2か月間はマスターだけから教育されるのが決まったらしい。マスターは学校に居る時間があるから1日中教えられるってことはないし2か月後の慣らしみたいなものだと思おう、、、。
「それじゃ話もまとまった事だしそろそろ私たちは帰るわね」
「えーまだ早いんじゃない?」
「申し訳ございませんお嬢様。今回私たちはお嬢様が眷属を作ったと聞いて急いできたので長居できないのです。私は止めようとしたのですが、、、」
「まぁいいじゃない!娘の元気な顔は見れたし!!」
「それではお嬢様これで私達は失礼致します。」
「うんわかった。それじゃお母様お元気で」
その瞬間、目の前からレーテのお母様達の姿がまるで元からそこに居なかったように消えた。テレポートかな?魔法ってなんでもありなんだね。
「マスターそろそろ離してくれません?そろそろ首が限界なんですけど」
「よし!それじゃお母様達も居なくなったし血吸わせて♪」
「え、いやでs」
まぁ抱き着かれている体勢から逃げ切れるはずもなく首筋に痛みが走るんですけどね。
どんな表情してるのか見てみるとマスターは満面笑みと幸せそうな顔をしているから何と言えばいいか優しい感情が出てくる気がする。
体中が熱くなり段々力が抜けてきて回されていた腕でマスターの胸に抱き寄せられる。そういえば正面から血を吸われるのってこれが初めてだっけ、、、。
結局いつも通りマスターの膝に頭を預けることに
「ごちそうさま今日も美味しかったわよ」
「お粗末様でした」
「何で不機嫌になってるのよ私に血吸われるの好きでしょ?」
「そんな訳ないです」
そうは言うがニヤニヤと意地悪なマスターの顔に直視することができない。
「あらそう?」
「そうです」
「ふぅん丁度いいしこのままちょっとだけ座学しましょうか。そーねレンカは魔法に興味あるみたいだし軽く経験してみますか」
「経験?」
「まず誰しも魔力があって魔法には魔力が必要なのね?魔力が感じられないと魔法を使える段階まで行けないの、まず私が軽く体の中で魔力を循環させるから感じてみて?」
「そんないきなり」
「レンカは私の眷属なんだから大丈夫よ」
そう言ってマスターが微笑みながらゆっくり目を閉じる。目を閉じてるだけなのに絵になるなこのマスター、、、。
「ほらレンカも目をゆっくり閉じて、、、」
マスターの顔に見惚れていると手で目を隠され閉じるのを促される。
「深呼吸して集中してさっき血を吸ったから見えやすいと思う」
目を閉じてからゆっくり呼吸をしてみる。
暗闇の中で魔力を感じようとしてみるが一向に魔力らしきものを感じられず焦ってくる。
「大丈夫焦らないでレンカはできる」
そう言われすこし落ち着いた気がする。諦めず暗闇の中を探すと何か赤い線のような物が見えた気がする。赤い線を辿ってみると人体のラインに沿って線が構成されているのが見えてくる。もっと見ようと集中していたら人体のラインの中心から光が出てきてわたしの目の前に来てなんだか目の付近が暖かいを越して熱くなって来たような。
「あtっつ!!!」
「はいお終い今日はここまでよ。それで何か見えた?」
「赤い線のような物がマスターの方から見えた気がします、、、」
「初日でそこまで見えるなんてすごいわ!さすが私のレンカ!」
ここまで手放しで褒められるのもなかなか無いからすこし恥ずかしい。
「それでレンカ自身の色は何か見えた?」
「いえ特には見えませんでしたけど、、、」
そう言うとマスターは口元に手をあて考え始めた。何かおかしかったのだろうか。
「レンカは気にしなくていいわ、それより初めてなのによく魔力を感じ取れたわね?」
「マスターの声を聞いた後なんだか落ち着いてきて視界が広がったような気がしたんです。」
「ふふふ嬉しいことを言ってくれるのねレンカは」
「なんだか疲れてきました」
「初めて魔力に触れたから疲れたのね、このままゆっくり休んで」
マスターにそう言われると急に瞼が重くなる。ようやく魔法の第一歩を踏み出したのに喜ぶ暇すら無い。
「おやすみなさいマスター」
「おやすみなさい私の眷属」
そう言ってマスターの膝の上で意識を手放した。