プロローグ・ゲームをしよう 2
こうして神社へと向かう事になった俺なのだが……神社の敷地に入った瞬間、
「……っ⁉」
視界が変わった。
なんの変哲もない、子供の頃から見ているだろう神社の入り口に足を踏み入れた瞬間、これまで一度だって見た事もない様な場所……恐らく、北欧神話とかに出て来そうな巨大神殿っぽい所に立っていた。
…………。
……いや、ナニコレ? これ、どんなドッキリ?
地元で海外旅行している気分だ。
さっきまで右も左も馴染み深い、細路地の野良ネコまで知っている様な場所から、いきなり視線の一ミリ先すら知らない場所へとワープして来たのだから、俺の精神は天地がひっくり返る勢いで動揺する事しか出来ない。
マジで一体……何が起きてるって言うんだ?
俺の心がマグニチュード9.0程度の揺れを計測していた頃……声が聞こえた。
『ゲームをしようじゃないか』
「……ゲーム?」
おかしな物言いだ。
見る限り、そこは東京ドームにだって負けないレベルでデカい神殿のど真ん中。
そして、それしかない。
強いて言うのであれば、神殿っぽい白い石柱と同色の壁があるだけ。
この状態でどんなゲームをすると言うのだろう?
そもそも、俺は……だな?
「なんで、お前とゲームをしないと行けないんだよ?」
眉を大きく捻って言ってやった。
不本意極まりないからだ。
大体、俺は亜里沙に呼ばれたから来た。
それだけの筈だと言うのに……ゲーム、だと?
『お前はゲームをする為に呼ばれた……それだけの話しだ』
「……はぁ?」
『なぁに、大した事ではない。お前には一つ特殊な固有技術を与えてやる。かなり有用な代物だ。上手く活用すると良い』
「いや、なんだよ? そのユニークスキルって? とっても面白いスキルなのか?」
『そのユニークではない……いや、ある意味『面白いスキル』ではあるかも知れぬがな?』
声がそう答えた直後……ぐぅっ!
「……な……なん…だ?……こ、れ……?」
俺の意識が混濁化して行く。
いきなり何だって言うんだよっ⁉
こっちはマジで何も分かってないって言うのに!
言ってやりたい事は山の様に……そう、チョモランマもビックリな勢いで山程あるって言うのに!
せめて雑言の一つでも叫んでやりたい俺が居る中……その意に大きく反する形で、俺の意識はとてつもない何かの意思によって奪われて行く。
くっそぉぉ……マジでこれ何なんだよ……?
『最後に、このゲームの内容だけを言って置く』
徐々に意識が暗闇へと落ちて行く中、声が聞こえた。
『このゲームは人探しだ』
答えた謎の声を最後に……俺の意識は完全に闇へと沈んだ。