突然の追放とか言うテンプレート 16
ここらの関係上、俺はラームズ伯爵領から首都・リザムへと本拠地を移転……つまるに、お引越し確定と言う事になる。
Sランクパーティーに在籍していたら……の、話しだが。
「アンタはこの街に留まってくれないと困るんだよ」
ルミナは極めて真剣な顔をして言う。
どんだけお前は、俺を地元から出したくないんだ?
「別に国外に出る訳でもなし……そこまで言わなくても良いんじゃないのか?」
「ダメだね! アンタがもし王都になんて行ったら、確実に宮廷の人間に目を付けられる……ううん、確定で目を付けて来て、王族の末端辺りにいる姫がアンタを狙いに来る!」
……は?
「いやいや……俺が王族に目を付けられるとか……そんな馬鹿な話しが……」
あってたまるかよ~っ!……って感じの台詞を笑いながら言おうとした俺だったのだが、
「あるんだよ! それも思い切りっ! しかもそれをやっちゃったら……マジで世界が動くんだよ! ここもマジな話し!」
猛剣幕でがなり立てて来た!
と、とりま落ち着こうかルミナさん!
……思い、俺は作り笑い風ながらも、やんわりとした爽やか笑顔を作りつつ、
「どうどう……はい、深呼吸してー? ゆっくり、ゆっくりで良いから、ヒッヒッ・フーと行こうか?」
「なんでラマーズ法⁉ 私、まだ種すら撒かれてないんですけどっ!」
どうにか落ち着かせようとしたら、ビミョーなツッコミが返って来た。
てか、それはツッコミなのか?
なんなら、ボケをボケで返されたまであるぞ?
「ともかく! 今回のSランクパーティー昇格は……アンタの実力を認めた末席の王族……正確には、第七王女が食らいついた罠なんだよ!」
……はぁ?
正直、話しが全く見えない。
そもそも、第七王女様なる者が、俺を認めたとして……だな?
「それが、どうして『食らいついた罠』とやらになるんだ?」
「……それ、本気で言ってる?」
「本気で言ってる」
「………………」
ルミナは押し黙ってしまった。
暫くして。
「………………はぁぁぁぁ………………」
すんごぉ~い大きな溜め息を吐き出しながら、脱力する形でカウンタ―に顔を埋めた。
「アンタは、自分の実力……ううん、価値と言う物を知らない」
程なくして、眉間に皺寄せ……右手の人差し指を額に当てながら『私が頭が痛いです』のポーズを取りつつも、ルミナは口を開いて来た。
尚もルミナの話しは続く。
「い~い? アンタがその気になれば、一切の武器を必要とせずに、一個小隊を秒で殲滅しちゃうでしょ?」
「まぁ……相手の実力にもよるが、普通の兵士が相手なら可能なんじゃないのか?」
自分で言ってておかしな事を言うなぁ……とは思うのだが、暗殺拳を極めちゃっているアキト・イーストさんの実力を加味すれば、決して難しい事ではない。
俺の実力じゃないけどなっ!
「これだけでも、アキトの実力は宮廷騎士団でも上位の腕前を持つ猛者と言えるんだけど……それだけじゃない……ううん、むしろ怖いのはその後に出て来るプラスアルファの方!」
「プラスアルファ?」
「そう! アキトの能力は、そのバカげた体術だけじゃないでしょ?」
「まぁ……この他だと……魔術が使えるか?」
「それだよ! まさにそれ!」
ルミナは鼻息荒く叫ぶ様に頷き、何度もコクコクと相槌を打って来た。
「アンタの魔法は、尽くとんでもない威力のバーゲンセールなんだよ! 分かる? 一発で街が丸々吹き飛んでしまう魔法や、大陸に風穴開けちゃう様な天変地異染みた魔法とか出来るでしょ、アンタ!」
………………。
な、なるほど。
ドが付くまでに真剣な顔をして言って来るルミナに、俺は思わず押し黙るしかなかった。
同時にルミナが言わんとする物が、なんであったのかも理解した。
つまり、世界は知っているのだ。
俺……アキト・イーストさんの実力を。