突然の追放とか言うテンプレート 14
「じゃあ、話しを聞こうじゃないか」
「……うん、そうだね。さっきも少しだけ言ったけど、理由は主に二つ。一つはアキトがパーティー・リーダー……つまり、クッソ野郎のバザールが良い様にコキ使っていた事。これには私も限界でさ? うんざりを通り越してぱおんだったんだ」
だからそれ、悲しいと言う表現だからね?
完全に使い方間違えてるからね?
「ただ、ここに関してはさ? アンタも気にしてなかったみたいだし……それに……その……」
そこまで答えると、ルミナは目線を下に落としつつ、頬を赤らめて語気を弱めた。
「……わ、私も……その、アンタと一緒に居られたし」
そこからごにょごにょと話す。
かなり声のトーンを抑えた声音は、難聴系の主人公には聞こえないレベルの状態まで弱まっていた。
まぁ、俺の耳は正常だ。
何なら、常人より聴力が良いレベルではないだろうか?
よって、ルミナの台詞を聞き逃すと言う事もないし、頬をほんのりピンク色に染めて、可愛くごにょごにょやってる美少女の姿に眼福と言う名の幸せすら感じている。
くぅぅぅっ!
もう良いよ、アキト・イーストさん!
彼女とくっ付いちゃえよ!
何が悪いんだよ? スゲー可愛いじゃん!
そうだ、身分が違うんだったよ! はいはい、分かっておりますとも!
「まぁ、俺もルミナと同じパーティーだったのは嬉しかった」
「……えっ⁉」
自分に当たり障りのない、社交辞令チックな台詞を選んだつもりで答えた俺に、ルミナは予想以上の食いつきを見せて俺を凝視した。
……あのぅ……ルミナさん?
顔……近いんですけど?
ちょっと口元を引き攣らせてしまう俺がいる中……そんな事など知った事かと言わんばかりに、ルミナは驚きの表情で俺の眼前まで顔を近付けて来た。
「ほ、本当に嬉しい?」
「え? そりゃな? ルミナは可愛くて、俺的に気も合うし」
「そ、そうかなぁ……あはは~!」
ルミナさんは大きくデレた。
「勝気と言うか、気が強いのも嬉しいよな? ほら、なんか俺って誰かに引っ張って貰うタイプと言うか、助けて貰ってるから……そう言う意味では、ルミナとの相性も抜群かな?」
「あ、相性……かぁ……あは、あはは……そ、そうだね。確かに私と相性良いかも?」
ルミナさんはデレデレだ。
顔を真っ赤にしつつも『私は今、とっても幸せです!』って感じ看板を、首からぶら下げている様だった。
「これで胸がもうちょっとあったらかんぺ……」
ドゴォッッッッッ!
俺の言葉は最後まで言う事が出来なかった。
ルミナの返事が、口ではなく拳で返って来たからだ。
「……空耳が聞こえた気がしたんだけど? 気のせいかな?」
岩をも砕く、驚異的な一撃をモロ顔面にクリティカルヒットした俺が、強かに殴られた部分を両手で押さえ、じみぃ~に悶絶する中……ルミナはにっこぉぉぉっ! っと笑みを作りながら尋ねて来た。
目は笑ってなかった。
背後には闇より暗い暗黒闘気が放たれ……こうぅ……ぐぉぐぉ言ってた!
なんて事だっ! ルミナさんにとって胸は禁忌だったか!
「なんでもございません」
「ちな、巨乳派? 貧乳派?」
「虚乳派です」
ドゴォッッッ!
「私の胸にパッドなんて入ってないからぁぁっっ!」
いや、なんで文字が虚乳だと分かんだよ?
ルミナは右拳で再び俺を殴り、左手で自分の胸を隠しながら叫んだ。
顔は真っ赤。
微妙に身体が震えていた。
もしかして図星だったのか?
え? 待って?
今の状態ですら?
えぇ? 嘘でしょ?
現状のルミナさんってば、サイズ的にCの65ぐらい?
アンダーだと分かり難いか?
まぁ、バストのトップが80ぐらいに見える。
つまり、普通。
これで、偽乳特戦隊だったとすると?
……………………。
…………い、いや、深くは語るまい!
「わ、悪い、そこは………うん、俺が悪かった」
「いやぁぁぁっ! そんな真顔で謝らないで!『俺、空気読んだ』的な雰囲気で頭を下げないで!」
直後、ルミナは瞳から滝の様な涙をおもむろに流しながら叫んでいた。
魂の咆哮よろしく状態だった。
いや……まぁ……えぇと……うん、ごめん。