突然の追放とか言うテンプレート 13
「こんな事をいきなり言われたら困るかも知れないけど……伯爵様は、主に二つの理由からアキトをパーティーから除外させたいと考えてたの」
「二つの理由?」
未だ背中に抱き着いた状態のまま、やんわりとした口調で語り出すルミナを前に、俺は少し眉を捻りながら返答した。
理由があるのは分かっていたよ。
良識あるラームズ伯爵が、理由もなしにアキト・イーストさんから仕事を取り上げる訳がないからね。
折角だ、ここはルミナの話しを聞こうか。
「話して貰えるか?」
「もちろん! その為に来たんだから」
「それと、そろそろ離れてくれない? 隣の席開いてるんだから、ゆっくり落ち着いて話しをしたいんだけど?」
「そこはダメ。アンタが逃げないとも限らないから」
逃げねーよ!
良く分からない事をする美少女だ。
一体、彼女は何を考えて、俺を抱きしめ続けると言うおかしな選択肢を取り続けると言うのか?
『スキル・テンプレートが発動しました』
【一番最初に出て来るヒロインは、大体チョロいんと決まっている為、序盤から好感度マックスと相場では決まっている】
……あ~。
いや~……うん、言葉に困るなぁ……このスキル。
頭では分かってるんだけどさぁ……メタいスキルだって事も理解はしてるんだけど……こうぅ、どぉぉぉしても納得出来ないと言うか、なんて言うか。
主人公がどんな鈍感野郎であっても、ここまでストレートなメタ発言喰らえば、嫌でも気付くレベルだろ……コレ。
足し算より分かり易いから、単なる寄生虫の身としては……どうするべきか。
正直、このまま彼女の好意を受け止めるのは簡単なのだが、果たしてそれがアキト・イーストさんにとってベストな行動なのかが分からない。
彼の記憶を見る限り、決してルミナを嫌っている訳ではないんだけど……なんだろうね? なんか他にもいるぞ? コイツ?
別にアキト・イーストさんが女好きで、色々な女に声を掛けていると言う訳ではなく……自然と好意を持たれる傾向にある模様だ。
しかも優柔不断な性格をしていて……恋愛的な物は、なるべく避ける傾向にある。
なんだろうね? このラブコメ野郎?
どっちにせよ、煮え切らない態度を取っている模様で……ルミナさんに関しても、やっぱり似た態度を取ってしまう。
……否、正確に言うとアキト・イーストさんにとってもルミナさんだけは、他の女性よりも好意的と言うか、特別な存在で……彼女と結ばれる未来があるのなら喜ばしいとさえ感じている。
そう……感じている。
しかし、それを彼は是としない。
……なんでか?
結論だけを述べると、身分の差である。
アキト・イーストさんが小作人の子であるのは知っての通り。
……と、言う事は?
ルミナさんの方が高貴なお方で確定になる訳で。
まぁ、ここに関して述べると……貴族の婚姻システムに置けるアレやコレがあるし、後でその話しをする時が来るだろうから、今回はここまでにして置こう。
極論だけ述べると、単なる寄生虫の俺が、彼女とヨロシクしちゃうのは文字通りよろしくない。
ここはなるべくアキト・イーストさんの迷惑にならない様に、ルミナとは適度な距離感を持って接する事にしよう。
「別に逃げやしないから、とりま隣の席に座ってくれ」
「……はぁ。ホント、アンタってそう言うトコあるよね?」
どう言うトコだよ?
俺の言葉に、ルミナは少し拗ねる様に答えた。
「ともかく……理由を話してくれ。そんで、隣に座る」
「……はいはい」
少し不服そうな顔をしながらも、ルミナは隣のカウンター席に座ってくれた。
ようやく話しをする事が出来るな。
本当は、このページで理由を話す筈だったと言うのに。
全く、地味にややこしい事になってるな……アキト・イーストさんの人間関係は。