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第2話「私の選択」

前回のあらすじ

柳川学園高等部の新入生、朝乃蒼衣はクラスメイトに誘われ日が暮れるまで遊んでしまう。日が落ちた町で帰宅する途中、怪物に襲われてしまう。ペガサスの助けを得ながらも追い詰められた蒼衣を救ったのは、魔法少女と名乗る少女だった。

 日も落ちかけた薄暗い街角。

 いつもの風景に見えるが、辺りに漂う薄気味悪い気配が非常事態を告げている。


 ──ラビリンス

 魔物「メイズ」が作り出す異空間。

 外界から隔絶された空間を一人の少女が駆ける。ビルの足場を飛び越え、獲物を探す。

 ふと、足を止める。

 何かが聞こえた気がした。助けを求める声だ。

 一瞬考え、すぐに声のした方へと向かう。


 予感は当たっていた。

 二体のメイズが誰かを襲っている。ビルから飛び降りる。腰から刀を抜き、そして──









「魔法…少女…?」


 オウムのように聞き返す。


「そう。まあ、あまり気にしなくていいよ。私もあんまり気にしたことないし。普通の人と思ってもらっていいよ。」

「え、あ、はい。」


 魔法少女と名乗っているのに普通の人だと言っている。初登場のインパクトが強かったけど、なんかヘンな人だな。そう考えていると


「とりあえずこの怪物は倒したけど、危ないから早く帰るんだよ。それと──」


 そこまで言って動きを止める。

 瞬間、手にした刀を背後に向けて振るう。


 キィン!


 金属同士が擦れ合い、甲高い金属音が聞こえたと思ったら、私と魔法少女の間に突如として誰かが姿を現す。

 白いローブに身を包んでいて顔はよく見えないけど一瞬だけ金色の瞳が見えた。そして、その少女の手には短剣が握られている。


「早く逃げて!」


 庇うように背を向けながら、突然現れた不審者その2はそう叫ぶ。けれど、さっきの出来事でちょっと枯死が抜けていて、このやり取りについていけない私には対応できないでいた。


「早く!!」


 もう一度、今度は強く、鋭い声で怒鳴り上げられる。その怒号に反射的に体が飛び跳ね、気が付いた時には背を向けて駆け出していた。

 背後では言い争うような声と金属音が鳴り響いている。











 ──走り出してからどれくらいたったのだろう?

 気が付けば見知った道路に出ていた。得体の知れない不安を覚えて、何も考えずにまっすぐ家に向かう。

 家の帰ったときにはもうすっかり暗くなっていて、お父さんやお母さんにしこたま叱られた。


「あとあんた、春先なのになんでそんなに汗まみれなのさ?風邪ひく前にお風呂、入っちゃいなさい。」


 そういわれて初めて気付く。いつの間にかべったりとした汗が全身にこびりついていた。

 そして今、温かい湯舟に浸かっている。


「はあー。ごくらくごくらく。」


 不愉快な汗を流して、冷え切った体を温める。

 こうしていると冷え切った肝も解凍されている気がする。そうしてある考えが浮かんでくる。


「もしかして、あれは夢…だったのかなあ。」


 もしかしたら、あの怪物は夢でただ道に迷っていたのかもしれない。ばかみたいな考えが浮かんで──


「夢でじゃない。現実だ。」

「がぼっ!?ごぼごぼ…」


 ──帰ってくるはずのない返事が来た。


「ぷはっ!な、なんでここに!?というか早く出てって!」

「僕のことを説明すると言っただろう。僕は約束は守る主義だ。」


 ぱたぱたと羽を動かしてそう主張する。

 こちらの文句を聞く耳を持っていないようだ。説明を聞くしか道はないらしい。


「はあ…それで、あなたは一体誰なの?」

「では改めて、僕はペガサス。メイズと戦う力を与える『(つか)()』ペガサスだ。遣い魔というのは人に力を与え~」


 それからペガサスちゃんによる長い講義が始まった。

 長いうえに難解で、ほとんど理解ができなかったけど、だいたいこんな感じだったはず…


 遣い魔とは

 それは遥か昔から人と共に歩んできた魔法生物。人に力を与え、人の脅威と戦ってきた。

 その姿は妖怪、神獣、悪魔、神など多様であるが、総じて身体は小さく力も弱い。

 あと、小さい姿でもある程度の魔法を使うことができるらしい。


「ふ~、終わったぁ?そういえばペガサスちゃん、それがペガサスちゃんが言いたかったこと?」


 けっこう長い間喋っていたペガサスちゃんに気になったことを問いかける。

 ちょっとのぼせてきた。


「…ペガサスちゃんはやめてくれ。これまでは説明不足の解消で本題はここからだ。本当はラビリンスから脱出しながら話すつもりだったんだが、アクシデントが続いてしまったからね。だけど、あの出来事があったからこれからのことについて~」

「あー!わかった!わかったから!それでペガちゃん、本題って?」


 また長くなりそうな気配を感じて、なんとか本題を引き出す。

 はっとしたのかこほんと一つ咳払いし、姿勢を正す。ペガサスの姿勢ってそう正すんだ…


「ペガちゃん…まあいい。それでは、アサノアオイ。僕と契約して『エタニティア』として共に戦ってほしい。」

「え、えたにてぃあ?なにそれ?」


 よくわからない単語が飛び出してきた。


「エタニティアというのは戦士の名前だ。僕たち遣い魔と契約し、融合することで人知を超えた力を手に入れることができ、メイズに対抗できるようになる。そのメカニズムは遣い魔の体をエーテル化させ、契約者の肉体と結合し、再構成することで──────」


 延々とながい話をしつづけている。たぶんこのひと(?)の性分なんだろう。


 だんだんと眠くなってきた…


 こえもとおくなってきて…


 周りもだんだんとくらくなってきて──


























「はっ!!」


 気が付くと自分のベッドの上で目が覚める。


「あれ…どうしてベッドに…?それに、頭が痛い…気持ち悪い…」


 頭痛に頭を抱え、吐き気を耐えながらベッドの上でうずくまりながら横目で時計をみる。

 AM4:00

 いつの間にか日を跨いでいたらしい。

 そこへスポーツドリンクとおかゆを携えたお母さんがノックもせずに入ってくる。


「あ、起きた?ごはん持ってきたけど、食べられる?食べられなくても飲み物だけは飲んでおきなさい。」


 お母さんは畳み掛けるように喋ってくる。いつも通りだけど、今はちょっとゆっくりさせてほしい。


「お母さん、なんで私ベッドで寝てたの…?お風呂に入ってたはずだけど…」


 とりあえず渡された飲み物を飲みながら問いかける。最後の記憶ではペガちゃんの話を聞いていたはずだけど。


「あんまりにも上がってこないもんだから、様子を見に行ったらぐったりしてたんだよ。長湯し過ぎたね。湯あたりだよ。」


 湯あたりかあ。そういえば結構長く入ってたからなあ。納得。


「どう?学校行けそう?」

「んー、なんとか…?これ飲んだらだいぶ楽になったよ…もう少し休んだら行けると思う…」


 さすがに入学してすぐに休むのはいろいろと伝説になってしまう。あることないことがウワサになってしまうかも…


「食べられそうならごはんも食べちゃいなさい。行くなら遅れないようにね。」

「うん、わかった…」


 おぼんに乗せたおかゆを置いて、お母さんは部屋から去っていった。

 ひとりになった部屋はずいぶんと静かに感じる。


「いい母親だな。」


 すぐそばで声が聞こえた。


「あれ…ペガちゃん…居たの…?何処にいたの…?」

「ずっとそばにいたぞ。僕たち遣い魔は特定の人間にしか見えないから、心配することはないぞ。」


 未だ頭痛のする頭だけど、ある程度の会話ができるくらいには回復してきた。


「それに、まだ君の答えを聞いていないからな。それで、答えはどうなんだ?」

「答え…?ってなんだっけ…?」


 記憶がない。もしかして、昨日の長話になにかあったのかもしれないけど、記憶にない。


「…僕と一緒に戦ってほしいということだ。」

「あー…そんな話あった気がする…」


 やれやれといった感じの間を置きながらペガサスが答える。


「それで、答えを聴こうか。」


 少し口をつぐんでから開く。答えは決まっている。


「んー。やだ。」

「…その理由を聞かせてもらえないか?」

「だって、えたにてぃあ?ってやつのこと知らないし。それに、戦うのはやっぱり怖いから。独りだと特に。」


 当然の疑問にベッドに寝転がりながらそう答える。

 あの化け物たちに立ち向かうのは怖い。独りでないのなら少しは勇気が出るかもしれないけど。


「だからペガちゃん、あなたと一緒に戦うのは…少なくとも今は無理。」


 そう言い放って布団をかぶる。

 姿は見えないけど、静かにしてるってことは私の意志は理解したってことだと思う。

 そのまま、布団の柔らかさと暖かさに包まれて微睡んでいるうちに、いつの間にか眠りに落ちていった。





「それじゃ、行ってきまーす。」

「無理はしないようにねー!」


 玄関を飛び出し、母親の声を受けながら家を出る。

 昨日と同じ道を昨日よりは余裕をもって歩いている。


「…ところで、なんでまだ居るの?」

「あれから君の答えに対する僕の答えを考えていてね。考えがまとまったから、それを伝えようと思うんだ。」

「そうなんだ。」


 わざわざ答えを伝えるためだけに、二時間近く待っていたとは。案外律儀なのかもしれない。


「それで僕の答えだが、君には昨日出会ったエタニティアの二人に接触してもらいたい。そして、エタニティアとして共に戦うかどうかを改めて聞きたい。どうかな?」

「どうって…私、今朝やだって言ったよね?」

「それは何も分からないままで戦うことはできないということだろう?なら、昨日のエタニティアと接触して情報を得るてから判断するのなら問題はないはずだ。」


 確かにペガちゃんの言う通りだ。

 エタニティアの実態を知らずに戦うことは、目隠しをしながら走り続けろと言われるようなもの。まともに走れるはずがない。


「もし実態を僕を拒否するのなら、その時は潔く諦めよう。これならどうだ。」

「んー。ならいいけど、どうやってそのエタニティアの人を探すの?昨日のことだってたまたまかもしれないし。」

「それについては問題ない。エタニティアはメイズと戦う存在だ。つまり、メイズを追えばエタニティアと接触できる可能性が高くなるということだ。」


 …やっぱりそうなるよね。怖いけど、それ以外に手が無い以上やるしかない。


「はあ、分かった。でも、昨日みたいに追い掛け回されるのは嫌だからね!」

「そんな危険は冒す必要はない。ラビリンスの外側で待機すればいいのだから。」


 危険な遠足が確定してしまった。今から憂鬱な気分になってくる。

 そんなこんなペガサスと相談していたら自分の教室に着いた。とりあえず今日の勉学に励もうと気合を入れて扉を開けると、うめき声をあげながら頭を押さえている女学生が目に入った。


「痛ったぁ…あんなに殴らなくてもいいじゃないの…まったく…」


 黒いくせっけで白いメッシュの入った神に金色の瞳のその少女。

 今でも珍しい金色の瞳。

 どこかで見た気がする…どこだっけ…

 思案に暮れ、記憶を呼び起こす。

 通学路…ベッドの上…お風呂…路地裏…!


「あー!!」


 そう気付いた時には叫んでいた。

[データ]

▶[プロフィール]NEW!

 [コードネーム]ムサシ

 [年齢]16歳

 [血液型]O型

 [所属]魔法少女研究会

 [身長]152cm

 [体重]45Kg

 [3サイズ]B75/W50/H73

 [概要]大正浪漫溢れる着物、袴、籠手にブーツといった格好をした自称魔法少女。神薙市で主に活動している。赤色の打ち刀「朱」と青色の脇差「蒼」の二刀流で強大な敵を切り裂く。

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